原題：
監督：是枝裕和
製作国：日本
製作年・上映時間：2016年　117min
キャスト：阿部寛、樹木希林、真木よう子、池松壮亮

　映画を観る前には先入観無しに作品に触れたい為、意識して情報には触れないにようにしている。観終わって監督のインタヴュー記事を読んだが今一つ響くものが無い、例えば『これまでで一番自然に作ったからだと思います。自然に作るとこうなる。もう、「こんなの映画じゃねえよ」って言う人に対して、「そうですけど、何か？」って気持ちで作ってるところがある。』と。そこまで云われるとこちらこそそうですか、と返すしかない。でも、趣味の世界ではなく商業ベースに乗った映画であるとそこまで言い切ると消化不良が起こる。
　自然な形で作ることには全く問題ない、この映画の重心がズレていることが終始居心地が悪かった。優秀な代打が出るが塁に出ないようなシーンが続くのだ。「子供の頃から28歳までずっと住んでいた団地で撮った」これが核心だろうに探偵事務所、元妻の新しい恋人との画等が入り全体がぼやける。ダメな男の話ではなく監督が住んだあの昭和の世界に腰を据えて家族をみた方がもっと深みがあったのではないか。ダメ男を描きたかったのであれば、団地にあそこまで肩入れする必要はなかった。
　感心するのは樹木希林さんの演技の細やかさ。まるで私生活に入り込んだような何でもない仕草が計算の上で運ぶ。日常のまま動いては画にならないところをほんの少しのデフォルメで寧ろ日常に見せる。
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