見出し画像

「Brand New Year」創作に至る経緯

出典:ericcarmen.com The Inside Story "The Essential Eric Carmen"2013.Sep.6●

エリック・カルメンの45年のキャリアを総括する初のオールタイム・ベスト・アルバム『The Essential Eric Carmen』(2014年4月・日本盤は7月リリース)。このアルバムの制作に際して、エリックはSonyの担当者Tim Smithから1、2曲の新曲の提供を求められた。
曲の創作にかかる前に、エリックが曲にかける思いを綴った文章がある。
2013年9月6日に、Bernie Hogya氏が運営するエリック・カルメンのファンサイトに、エリック自身が投稿したものだ。
この段階では、曲の構想も具体的に決まっていなかったことがわかる。

新曲『Brand New Year』が発表されたのは、2013年12月末。かなり切羽詰まった状況で生まれたことがわかる
彼に近しい関係にあった人によると、エリックは『Brand New Year』の他にもう1曲書き、デモを残していたという。ボツになったということは、あまり冴えない曲だったのだろうが、聞いてみたい気もする。
以下、エリック・カルメンのコメント抄訳。
(このコメント抄訳の発表についてはBernie Hogya氏の許可を得ています。
 無断転載は禁止されています。原文はericcarmen.comでご覧ください)

  *****************************

30曲入りCDに収録する予定の1曲か2曲は、まだ書いても、レコーディングしてもいない。これらの曲はまったく新しいものになるだろう。ただ、17年ぶりに新曲を書く上で、どんなアプローチをすればいいか決めかねている。もし、今回のリリースに1、2曲入れるとすれば、それはつまらないもの(suck)ではないと約束する。僕は車の中で、参考のためファーストとセカンンドアルバムを集中して聴きながら、「産みの苦しみ」(Hell)について考えていた。

ラフマニノフが最初に書いたピアノコンチェルトをオーケストラが初めてステージで試演したときは悲惨な結果に終わった。聴衆に受け容れられず、完全に失敗した彼は、ひどく打ちひしがれ、以後、10年間、鬱状態に陥り、その間、まったく曲を書くことができなかった。ラフマニノフの代表作であるピアノコンチェルト第二番(そのメロディーは『All By Myself』の一節になっている。ピアノの間奏部は完全に僕の作曲によるものだ)を精神科医の助けを借りて書くまで、10年かかったんだ!彼はピアノコンチェルト第二番を彼の精神科医に献呈した(我々ライターは奇妙な苦悩のかたまりだ)。

SONYのニューアルバムに1、2曲あるとすれば、①何か完全に新しくて、②僕の熱烈なファンたちに僕が過去の人だと失望させない、素晴らしいものだ、ということを約束する。もし、過去の作品より少しでも良いものが書けなければ、僕は提供しないだろう。僕はできると思うよ。Hahahah!!!! 

僕はいま、適切な主題、適切なアプローチを見つけ、いままで書いたことのない美しいメロディー、ブリッジが湧き上がらせなければならない。もし、それができなければ、新曲というだけではない何かを投げかけることができなければ。いや、僕はできると確信している。64歳で何かを書くということは、僕にとってチャレンジだ。24歳、34歳、44歳で書いたときより意義がある。これは誰にとってもたやすい任務でないことは、ポール・マッカートニーの最新の「最高の作品」が証明している。ビリー・ジョエルはしばらくレコーディングを止めていた。ブルース・スプリングスティーンは、ますます僕の影響、ビーチボーイズ、ザ・フー、ビートルズ、ローリングストーンズやザ・バーズに引き寄せられているように見えるが、何か新しく、価値ある作品を作り続けている。

僕自身も、過去には気づいていなかったが、ブルースの影響やボブ・ディランがいよいよさらに増していることがわかる。僕はキャロル・キングやジェリー・ゴフィン、フィル・スペクター、バリー・マンやシンシア・ワイル、ホーランド=ドジャー=ホーランド、バート・バカラック、ハル・ディビッド、West Side Storyのレナード・バーンスタイン、スティーヴン・ソンドハイム、ロジャース & ハマーシュタイン、ヘンリー・マンシーニ、そしてもちろんガーシュウイン兄弟、ホーギー・カーマイケル他、40~50年代の素晴らしいライターたちが書いた曲が、僕の音楽人生を形成した。そして、僕が敬愛するクラシックの作曲家たち、ラフマニノフ、ドビュッシー、サティー、ベートーヴェン、モーツアルト、バッハ、ブラームス、シベリウス・・・彼らは人間を超えた巨匠だ。彼らは神の声を聴いた。僕らの年代でもときたまその声を聴いた人がいる。それが明白なのは、レノン&マッカートニー、ブライアン・ウィルソン、ドン・ヘンリー&グレン・フライ、J.D.サウザー、ジャクソン・ブラウン、ビリー・ジョエル、ブルース・スプリングスティーン、ピート・タウンゼント、ジャガー&リチャーズ、マーヴィン・ゲイなどで、これらのアーティストたちは「普遍性(universal)」でつながっている。

新しい何かを作り出す才能とは、曲を聴いたとき、それを聴いた人の心に直に訴えるものだということを知っている。これは僕が常に取り組んでいることだ。ちょうど僕が『Boats Against The Current』の詞を書いたとき、フィッツジェラルドにインスパイアされたように。フィッツジェラルドは、短編と『The Great Gatsby』で、僕が想像しうるかぎり最も美しい散文を書き、僕が人生で読んだ中で最も自在に英語を駆使した作家だ。

僕が目指すのは、常に僕の文学に寄せる愛と、音楽に寄せる愛とを結びつけることにある。音楽的にも、詞においても、聴いた人が共感できる、僕だけのものを創ろうとしている。いつもうまくいくわけではないが、ニューアルバムでいえば、『Hey Deanie』や『Someday』などは僕が目指したものを成し遂げた作品といえるだろう。何が目標かという問いについて僕はこう答える。それは、人の心を動かし、涙を流させたり、高揚させたり、総毛立たせたりするものということになる。SONYの新しいダブルアルバムを聴くたび、鳥肌が立つ経験をするかもしれない。これは30曲のうちほとんどに僕が経験したことだ。多くの曲は僕に鳥肌を立たせた。これが最も誇れることであり、予想に近いことなんだ。

Timに祝福あれ。彼の情熱と献身なしには何も起こらなかった。彼は、僕の40年にわたる音楽産業における人生に、ローラーコースターのような新しい生活を吹き込んでくれた。彼に君の感謝とファンレターを送ってくれ。彼は、バーニーとKen Sharp、そして、はじめから僕を信じてくれたすべての人とともに、僕の守護天使だ。君の決して消えることのない限りないサポートに感謝する。何といえばいいかわからないほど大事な人だ。xoxoxoxo
e