スポーツをしている子供を持つ親やその指導者へ

整骨院という仕事をしていて、胸が苦しくなるのがケガをしているのにもかかわらず練習を休まない子供達です。
練習を休むと「レギュラーから外される」「みんなとの差ができてしまう」「試合に勝ちたい」などをよく聞きます。
成長期にケガをしたままプレイを続けるとどのような“リスク”があるのか、またどのように成長していくのか話して行きたいと思います。

まずスポーツというのは、すべて感覚で体を動かして競技を行なっています。
例えば、ピッチャーはボールを投げる時、自分の手を見ながら投げる選手はいません。
「腕をだいたいこの辺で振って」「このぐらいの力で投げれば」と無意識に考えた結果、「この位置にボールが飛んでいく」と感覚で動かしています。
これは繰り返し投げることで(同じ動作を行うことで)習得する感覚です。
もし、ケガをしながら(痛みがありながら)練習すれば、どのような動かし方が完成されるか想像するだけでも怖いと思います。

<成長期でケガをしたままプレイした時のリスク>
ケガをしながらプレイを続けると
 筋肉、骨の成長の差が出る
 筋肉のバランスが悪くなる(左右、内側と外側)
 バランス感覚の差
 骨密度の差
などが出てきます。
球技をしてる子でも、これらのバランスが悪くなるのは問題だと思いますが、
採点競技であるフィギュアスケートやダンスをしている子がこのような状態になるのは重大な問題になりかねません。
こんなハンデを背負いながら長い競技生活をさせることになります。

成長期というのは日に日に手や足の長さが変わり、体がどんどん大きくなっていきます。
そのため日に日に感覚が変わっていきます。
なのでこの時期の子供はどんなに練習しても上手になりにくい時期なのです。
大きくなっていく自分の体をコントロールすることに一生懸命なのです。

成長期にケガ(痛み)がありながら運動を続けると、今後一生ハンデを背負っていかなければなりません。
ですが、「運動していたら痛みがあるのは当たり前」とか「疲れるまで練習しないとうまくならない」とか思っている子供は多いと思います。
だからこそ親御さんや指導者が気づいてあげなければなりません。
難しいですが、なにかしらのサインがあると思います。
練習量が多すぎると
 ご飯を食べる元気がなく、ぐったりしている。
 女の子なら生理が止まってしまう。
などがあります。
そもそも我慢して運動するという風潮を変えないといけないと思いますけどね。

<成長痛のメカニズム>
筋肉の成長が骨の成長に追いつかないことが多々あります。
すると筋肉の付着部が常時引っ張られることになります。
この状態で無理な運動を続けると付着部である骨が炎症を起こします。
さらに症状が進むと成長期の骨を引っ張るので付着している部分がどんどん膨隆してきます。
これがよく言う成長痛です。
オスグット病やシーバー病はこれにあたります。

ほとんどのケガは約1ヶ月で落ち着くことが多いです。
ですが、我慢して悪化したケガに関してはかなりの時間が必要になる場合があり、ひどい場合は手術になる可能性も出てきます。
実際に我慢してプレイをし続けたせいで手術になってしまった子はたくさんみてきました。
ちょっとした痛みがそこまでひどくなることがあるので、ケガを甘くみてはいけません。

早期に治療をすれば
“治療期間が短く終われて、あとは練習に没頭できます“
痛みを我慢してプレイを続ければ
“治療期間が長くなりどんどん運動神経が落ちてきて、身体のバランスが悪くなって、長い治療を終わった後も一生リスクを背負って競技していかなければならない”
大げさに言ってるように見えますが、これは事実です。

<最後に>
脅すような表現を何回も入れましたが、このような子供達を何人も診てきました。
「ケガで困っている子供達をなんとかしてあげたい」という想いで治療家という道に人生をかけた我々にとって、本当にやるせない気持ちになります。
こういった子供が1人でもいなくなれば嬉しい限りです。
成長期の子供にはこれからも楽しくスポーツに関われるような環境を一緒につくっていきましょう。

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