雑司が谷にて

労働終わる 友人が待つ 雑司ヶ谷まで向かう 高円寺から 新宿 新宿から副都心で雑司ヶ谷 「今向かってる」と連絡入れる 鬼子母神近くの 小料理屋着くと IとTがいる 「来るとは思わなかった」とIが言う 「そうか」と言い Tに「何か頼めや」と言われ ビール頼む 我々以外に客はいない IがめずらしくYシャツを着ているので「どっか行ったの? 服めずらしいな」 「服なんもなくてこれ着とる」 「そうか」 ビール飲むうまい 二人は日本酒を飲んでいる 「病院の匂いするな」 「会社で器具の消毒するからその匂いやろ」 「けっこう遅かったな」 「遠くの現場あったしな」 「行くとこ決まったんか」 「まだ 施設は 見学行ったよ 交通費もないから ずっと歩いたよ」 「かなりの距離やろ」 「そう どこも決まらんかもしれんし」 「どっか決まるやろ」 「わからんけど そっちはどう」 「こないだ 人身事故の修復した ようわからん気持ちになったよ」 「おれにはようできんよ」 「四人がかりでやったけど やった後 遺族と連絡取れなくて あとどうなったかわからんけど」 「何か食べれば」 納豆巻き おしんこ頼む 「Tは順調なん」 「生徒かわいいし やってるよ」 「そうか」 Iが「この先仕事するのが 想像できんよ」と言う 「でも納棺の仕事すこしだけどやれてたよな」 「あれは、しないとどうにもならんかったし 運転をしてる時間とかあったからさ」 「そろそろ出るか」と会計し Tが多く出す 「もう少し飲もうや」とTが言う 「所持金あんまないよ」 「出すよ 二人とも無いの知ってるよ」と言い 小料理屋出て 大通りに出る手前で 見つけたワインバーに入る 「何飲む」 「一番かからんの」 「気にすんな Iの送別会でもあるんだからな」 Tが頼んだ赤ワイン飲む 「借金返すのに 選んだ選択だったけど よかったんかわからん」 「何でも ええよ Iはちゃんとしとるよ」 「そういうのは Sだけだよ」 「Sは頭おかしいからな」 「おかしくないよ Iのこと信じられるよ」 「そりゃそうだよおれだって」 「なあ 電車もうないかもよ」 「ええよ 家くれば」 「朝帰って また仕事か」 「飲めや」 一時過ぎ Tのアパートに向かう 三人で路地歩く 「久しぶりにTのとこ寄るな」 一階の玄関開けて 靴脱いで階段上がる 階段にも荷物置かれ 部屋入る 床も畳も見えない 「すごいな ひどいよこれ Iちゃんいなくなってからひどいな座るとこないよ」 「おれはベッド使う」 「おれは台所か」 「ソファかこれ」 ソファの上に積み重なった荷物どかし 「ここでええよ どうやったらここまでになるんかな」 寝ようとしたが 眠れず畳の上の酒やら灰皿につまづきながら台所に行くと「どした?」とIが言うので「寝れんから 歩いて帰るよ」と「じゃあ おれも行くわ」と言うので そっと階段下りる 「ようあそこで寝れるよな」とTのアパートの外出て左に行き学校の脇道を通る 「どぉ 行くか」 「適当に行こう」 路地抜け 大通りに出て 「こっち行ったら護国寺の方だよ」 「どっちでもいいから歩ければいいよ」江戸川橋のあたりで「どっか入らんか 寒いよ」とIが言う 「ファミレス行くか」と 江戸川橋でファミレスに入る 「飲む?」 「おれはもう酒はいらんかな」 「そうか こっちは一杯たのむわ」 だらだらと話したが ほとんど覚えていない 五時過ぎ 「そろそろ行くか」 店出て 早稲田まで すこし雨降る 大学の校舎の前通り 変な形のマンションの前通る 話すこと だんだん無い 早稲田駅で「じゃあ」と言って 別れる で こないだ 雑司が谷歩いてたら Tのアパートの側にあった学校は 取り壊されてた それぞれ 何処に 今 おるんかね


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