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Deep Communication ③この30年間でコミュニケーション環境はどう変化したか

チャットやメールなどのコミュニケーションツールの拡大によって、ビジネスでもプライベートでも、気軽にたくさんのメッセージを交わせるようになったものの、私たちは「メッセージをやりとりする相手が自分が必要としてたものを適切に満たすことができていない」という課題に対して、前回、「テキスト(文字)情報と音声情報に含まれている物の違い」についてご紹介しました。

今日は、私たちのコミュニケーション環境の変化について書きたいと思います。


1. コミュニケーションの量と方法の変化


まずは、この30年間で私たちが日常の中で交わす他者とのコミュニケーションの量と方法がどのように変化していったかを見ていきましょう。

1990年以降、電話機が一般家庭に広がったことにより、人々のコミュニケーションには大きな変化起こりました。それまで人は空間を共にしていない相手とは、手紙などの手段を使って時間差がある状態で一方向かつ断続的にコミュニケーションを交わすことしかできませんでした。それが、電話機の普及によって、空間を共にしていない相手とも時間差なく双方向で連続的にコミュニケーションを交わすことができるようになったのです。

その後さらに、携帯電話の普及により一人一台の電話機を持ち、職場や自宅と言った特定の場所以外でも電話をすることができるようになりました。場所にとらわれずに他者とのコミュニケーションを取ることができることから、私たちが空間を共にしない相手と交わすコミュニケーションの量は格段に多くなりました。

<コミュニケーションの方法と質の変化>
対面:場所を共にしている相手と連続的・双方向
手紙:空間を共にしていない相手と断続的・一方向
携帯電話:空間を共にしていない相手と連続的・双方向

また、他者と個人的なコミュニケーションを取る時間帯の変化も、私たちのライフスタイル全体に大きな影響を与えました。

携帯電話が個人に普及するまでは、夜間は一家団欒や飲み会など、他者と直接空間を共にして過ごす時間もしくは、一人で過ごす時間でした。それが、携帯電話の普及により、夜間でも、空間を共にしない相手とも、個人的なコミュニケーションを交わすことができるようになったのです。

同時にそれまでは、職場や打ち合わせ先ではビジネスのコミュニケーション、ビジネスシーン以外の公の場ではパブリックなコミュニケーション、自宅など家族や親しい人と過ごす場ではパーソナルなコミュニケーションが使い分けられていたのが、携帯電話を使って場所を選ばず様々な関係の相手とコミュニケーションを交わすことができるようになったことから、公の場でも空間を共にしていない相手とのビジネスやパーソナルなコミュニケーションが交わされるようになるとともに、プライベートな場でもビジネスのコミュニケーションが交わされるようになり、社会的なコミュニケーション環境自体(どこでどのような関係の相手とのコミュニケーションが交わされるか・周囲の人がどのようなコミュニケーションを交わしているか)が大きく変化をしました。

さらには、携帯電話のメールの機能によってテキスト情報や、絵文字などを送り合うことができるようになりました。このことにより、対面では「同期(同時)かつ連続的」にしか行うことのできなかった他者とのコミュニケーションが、「非同期かつ非連続」に行われるようになりました。携帯電話の普及以前も手紙によって「非同期かつ非連続」のコミュニケーションは行われていましたが、相手にメッセージが届けられるのに費やされる時間と手間は格段に少なくなり、他者とやりとりをするテキスト(文字)情報の量自体は爆発的に多くなりました。

2. インターネットがもたらしたもの

インターネットが普及する以前は、「コミュニケーションを取る媒体」と「情報を得る媒体」は明確に分かれており、かつ、情報を得る媒体は「誰に向けられた情報か」が明確になっていました。

<インターネットが普及する以前の状況>
他者とコミュニケーションを取るための媒体
・電話:聴覚情報を使って1対1で双方向にコミュニケーションを交わすもの

情報を伝えるための媒体
・テレビ:視覚情報・聴覚情報を使って一方的に不特定多数の人に向けて
・新聞:文字情報を使って一方的に不特定多数の人に向けて
・雑誌:文字情報を使って特定のテーマに興味がある人向けて
・社内報:文字情報を使って特定の企業の社員に向けて
・地域の掲示板や回覧板:文字情報を使ってその地域に住む人に向けて
etc...

それが、誰でも自由にインターネット上に情報を公開することができるようになったことにより、「ニュース」のように客観性の高い事実ベースの出来事や個人の意見、趣味や地域など特定の共通項を持つ人たちに向けられた情報など、発信者も対象者も様々な情報がインターネット上に入り乱れるようになりました。

<現在私たちが目にする情報>
・発信者:パブリック(公的機関や企業)、専門家、個人
・対象者:特定、不特定
・内容:ニュース(事実)、知識、意見、娯楽目的、日記etc...

メディアの多様化とともにインターネット場では「コミュニケーションのようなもの(相手に何らかの反応を示すもの)」の種類も増加しました。

<コミュニケーションのようなもの>
・コメント
・共有(シェアやリツイート)
・アクション(「いいね」など)
・フォロー

さらに、機械技術や情報技術そのものの発達により、単一の機器の中で「他者から情報を得ること」と「他者とコミュニケーションを交わす」ことができるようになり、さらには単一のアプリケーションの中でもそれらが入り乱れて行われるようになりました。

かつては、一つの機器がある特定のタイプのコミュニケーションもしくは情報伝達を担っていましたが、現在では

<現在のコミュニケーション環境>
・スマートフォンやパソコンの中で、情報取得も情報伝達もできる
・一つのアプリケーションの中でも情報取得も情報伝達もできる
・他者とコミュニケーション関わりを持つのに様々な手段や方法がある
・様々な場所で、他者とコミュニケーションを取ることができる

という複雑な状況になっているのです。

さらに、複雑になっているのはコミュニケーション環境だけではありません。次回は、「コミュニケーションの相手の変化」について考えていきたいと思います。

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