見出し画像

傷つきました

タイムラインを眺めていると、そのなかのいくつかのアカウントが同じ話題について呟いていることに気がついた。

ポストに使われている言葉を検索にかけて、話題の中心部分を探る。話題のポストはたいてい上のほうに表示されるので、見つけ出すのにそれほど時間はかからない。

何千とリポストされたポストをタッチして、そこにくっついているリプライを読んでいく。そこには大概、短くて鋭い罵倒の言葉、文脈から外れた嘲笑と絵文字、同じアカウントから何度も送られたアラビア語のようなものがぶら下がっている。

引用ポストのほうを見てみると、周りから同意を得ることを目的としているであろう、いくらか冷静に見える長文が並んでいた。そのうちのいくつかが自分の意見と近いと感じて、スマートフォンを見ながらうんうんと頷いた。

その話題について私も言及しようと、誤解のないように何度も自分の文章を読み直してから送信ボタンを押そうとしたとき、タイムラインに浮かんでいた友人のポストが頭をよぎった。

「ショック。これを肯定する人がいたら絶交する。」

私は怖くなって、送信しようとしていた文章を消去した。

人を傷つけてはならない。

これに対して「はい」か「いいえ」で答えろと言われたら、私は迷わず「はい」と答える。たぶん、これを読んでいる人たちもそうだと思う。当然だ、人を傷つけちゃいない。

再び、その話題に関するポストを読んでいく。

「傷つきました」

「涙が止まらない」

「許せない」

「立ち直れそうにない」

読んでいて、だんだんと気が滅入ってきた。

私はこれまで生きてきて、誰かに「傷ついた」と表明したことがなかったと思う。それが決して良いことだとは思っていない。

ここから先は

1,437字

「もっと知りたい。こんなとき、貴方になんと伝えようか。もっと聞きたい。貴方はなんて言ってくれるの。」 月2回更新します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?