MCバトル/HIPHOPと短歌

ISSUGI(イスギ)というラッパーが好きで、よく聴いている。

この曲はたまにYoutubeで聴くぐらいだけど、めちゃくちゃかっこいい。BUDAMUNK(ブダモンク)の絶妙なノリのトラックもいいし、後半入ってくる5lack(スラック)のフロウもかっこいい。

何言っててもフロウとトラックが格好いいので音楽として聴けるというのはすごい。


で、このISSUGIはフリースタイルのMCバトルにも出てるんです。

昨年のKING OF KINGSの東日本予選。ISSUGIは予選を優勝して本選に出場。その予選の中での名試合(ベストバウト)とされる「ISSUGI vs T-Pablow」。T-Pablowといえば高校生ラップ選手権を優勝し、フリースタイルダンジョンの初代モンスターとしても活躍した若手ラッパー。今日はなんとなくこれを文字起こししてみました。延長もあるのでそれも。聞き取れないところは*で示しました。

[ISSUGI]

Yeah, ビートはじまる***しちゃって 頭ん中でもう想像してんの 出る前から口パクパクしてたぜお前 ワクワクしたって所詮Wackが語んな 才能ねえ 音楽性感じない 一言で言うとセンスがない ダサい その面構え音楽を感じない 俺はテレビ・ブームなにもなくてもいつでもやってる 同じラップで10年ライブやってる

[T-Pablow]

お前からすれば俺はダサい けど韻と意志ならば絶対固い バトル出りゃ笑われ 音源出しゃ笑われ それでも夢が変わらねえ 構わねえ 音楽性ならもっともっと尖がるぜ 絶対引かない ISSUGI お前ちょっとクソなこと言い過ぎだろ

[ISSUGI]

音楽っていうのは努力とかで解決できねえものがある 俺はほんとに冷静なこと言う 冷酷なまでに悪魔 わかるか ギロチンみてえな言葉 お前にはリリシズムが足りない つまり幼稚園の教科書 それぐらい 放課後のままごと HIPHOPをダメにしてんのはてめえだろ わからせるんだよ 俺はいつまでもやってる 何回も言わせんな 放送なんかいらねえんだ

[T-Pablow]

Yeah, お前の方がおままごと 今から帰れクソがママのもと 幼稚園児 お前下手なところ見せるスキルが幼稚な寺田心 幼稚園児 俺ならこいつのこととかは興味ねえし Ah お前このフロウができないからってそうやって笑ってるのがキモい から***** 見込みがない

[ISSUGI]

なんで笑ってるか教えてやるよ 3回あんのにてめえが上手くなんねえからだろ Yeah, uh, 流行りのキャップ被ってまたおんなじラップ 俺ならいつもと違うことやってこうやって乗せれる MONJU, Sick Teamをレペゼン お前を敵で頭から稲妻落とすぜ 説明要らねえのがラップだろ てめえはタップしとけよその細い足でな 似合ってるぜ

[T-Pablow]

Yeah, 細い足なの言うけどかますの今年だし Ai 俺も地元をレペゼン お前地元どこ? 聞かねえ全然 俺はこんなカスごとき 負けたらまた鞄持ちに逆戻り 思考だって中二病 ずっとずっと十四、五 お世話になったの学校よりも留置所 Ai

延長

[T-Pablow]

ダサい言われてもしょうがないよ 今ならバトルブーム 俺のフロウで納得するのはどっちかな みんな ちゃんと用意しろ確かな耳 恥ならない わかれよ さっき言った ***** 売れる見込みがないっつってんだよ お前 俺が流行りとか言うけどお前の服装も90年代の流行りもんなんだよ

[ISSUGI]

Ai, 俺は売れる見込みがないこともやりつづけるだけの覚悟がある それがHIPHOPなんだよ お前間違えたこと二度と言うなよ 生き恥さらしてる ここまで出てきて一体何が言いてえんだよ 売れる見込みがない? それ続けんだよ わかってんのかよ

[T-Pablow]

Yeah, 俺が何言いてえか? まず俺がなってやる本当にHIPHOPの実験台 わかる? 俺がずっとメジャーとかインディーとかの壁を取っ払ってやる 嘘じゃねえよ 地元なら川崎からやってきた クソな環境で揉まれてきた 15で選べって言われた極道かラッパー 極上な葉っぱ吸ってもぶれねえ目標があんだよ

[ISSUGI]

お前が変えれるわけねえだろ 俺と俺の仲間が変えんだよ 5lack知ってるか? Buda知ってるか? Down North, Dogearわかってんのか? フロウがねえやつは何回やっても無理 あと2回恥さらすだけ だから言ったろ ここにカーテン 引いてやるよ お前終わりくさい アーメン

[T-Pablow]

Yeah, お前の方が絶対恥さらし わかる?パブロが勝ちますし 勝ちますから
わかる? どう考えてもパブロ主役 お前は脇役キャラ 越えてやる昨日すら お前なんていつでもやれちゃう地方妻 ぐらいなもんなんだよ簡単だ わかるか 今日はてめえの晩餐会だ おい

[ISSUGI]

てめえは主役になりてえんだな 俺は脇役で十分 HIPHOPは名のない奴に言葉持たせる音楽 それが根拠がねえ奴にはわかんねえんだな 自分だけが良い思いできればいい奴がだめにする 俺はさらに上にあげる 東京のHIPHOPナメんなよ


太字にしたところが決定打となってISSUGIが勝利したのかなとおもう。

なんというか、これはまさにスタイルウォーズで、わかりやすい押韻と流行りなフロウで攻めるT-Pablowと、軸をぶらさずに自分の価値観を提示しながらフロウしていくISSUGIとがぶつかって、名試合となっているわけです。

で、韻を踏むことに関して見ていくとやはりT-Pablowの方が踏んでいるわけです。「極道かラッパー」「極上な葉っぱ」「目標があんだ」とか、(用意されたライムっぽさはあるけど)かっこいいですね。

けれど、そのライミングがパブロの言葉の説得力を削いでいるような気がするのも否定できない。「幼稚園児」から「興味ねえし」が導かれたり、「レペゼン」から「聞かねえ全然」が導かれたりするところ、ISSUGIは10年以上活動しているし、彼の活動が東京のHIPHOPシーンを切り拓いてきたという側面もあり、そこに対してあてがう言葉としては虚しく響くだけだ。


短歌をやっていると、自分の周りの人が評価されて上にステップアップしているように見える(実際はそうでもないのだが)がある。そのたびにぼくは、ISSUGIの「売れる見込みがないこともやりつづけるだけの覚悟がある それがHIPHOPなんだよ」という言葉を思い出す。

T-Pablowはライミングもフロウもわかりやすい。人気があるのも頷ける。短歌も、一首の中の意味が鮮やかでわかりやすいもの、連作の設定やストーリーがわかりやすいもの、をつくれるひとはある程度人気があるのではないかなあと想像する。

ポエティックに作ろうとして作られた風の短歌(例をあげるのは難しい)に最近あまりノれない部分があり、それは韻を踏もうとして踏まされているラップを聴いているときのもやもやと似たようなものかもしれない。詩は、立ち上げるものというより、立ち上がる・立ち上がってくるものというような感じがする。

僕は売れる見込みがなくても定型の中でフロウしつづけるのだ。

わかるか?

わからせてくだけだ。


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