初めての一人旅は、生きている心地を実感した日々だった 〜旅の終わりに〜
先月5月半ばにスタートした一人旅は、あれよあれよという間に終わりを迎えようとしている。
今回の旅では、約30日間をかけて
マドリード
アンダルシア州(マラガ・グラナダ・コルドバ)、
カタルーニャ州(バルセロナ近郊、ジローナ)
バスク州(ビルバオ、バキオ、サン・セバスティアン、ゲタリア)
フランスバスク(バイヨンヌ、ビアリッツ、サン・ジャン・ド・リュズ)
を訪れた。
(各地の写真や詳細は、帰国後noteへたくさん載せたいと思っています。リアルタイムでなかなかアップすることができず、猛省しております…。)
これまで海外旅行はおろか、国内でも一人旅の経験はなく、長期間スーツケースとバックパックで生活することすら初めてだった。
旅が始まる前はnoteに不安な気持ちを思わず漏らしてしまったくらい、初めて訪れる土地で一人で生きていけるのか、自分で自分がどうなるか分からなくて、それがもう心配で心配で仕方がなかった。
何か新しいことに挑戦する時、大きな階段をえいっと登るような経験をする時。その先に何があるのかが見えなくて分からなくて、わたしはいつも過剰に心配してしまう。
しかし、旅がスタートしたらそんな不安は消え去った。
なぜなら、スペインは予測不可能な毎日が当たり前だったからだ。
例えば、公共交通機関。
市バスに乗ろうと思ったらバス停のバの字もない。でもGoogleMapsはきちんとその位置がバス停だと示していて、ほんとにバスは来るのか、不安で心臓バクバクで待ってたらバスはちゃんと時間通りに来た。
そのバスに乗って宿泊先の隣町へ行ったら、ちょうどお祭り行事の日で、わたしが帰ろうとしていた時間帯は道が封鎖され、バスが運行していなかった。
もと来た場所へ帰るためには、別の町までバスで向かい、そこからバスを乗り換えて帰る方法しかなかった。
幸いなことにその情報をツーリストインフォメーションの方が事前に教えてくれたのだけど、「ここにバスが来るから」と教えてくれた場所も、バス停のバの字もない 笑。
印がないのはもう慣れていたので、帰りはとりあえず早めにバスが停まるその場所へ向かった。
しかし、待てど待てどもバスは来ない。
諦めかけていたその時、ちょうど別の番号で同じ目的地に向かうバスが20mほど離れたところに来たので飛び乗った。
そして無事にバスを乗り換えられるという町に着くも、次の別のバスは一体どこへいつ来るかがさっぱり分からなかった。
どうしようかな…と思っていたら、先程飛び乗ったバスに同じく乗っていた10代後半くらいの背の高い女の子が横にいたので、どこへ行くか聞いてみた。
すると、彼女は地元の女の子で、わたしと同じ方向へ帰るとのこと。
「ここから電車で向かう方法もあるから、それでよかったら一緒に行きましょう」と言ってくれた。
その女の子はとっても優しく、駅ではわたしに券売機でのきっぷの買い方を教えてくれた。
電車に乗ると、席を見つけ、わたしに「ここが空いてるよ」とジェスチャーで座るように促したかと思うと、その隣の席は空いているのに彼女は座らない。
どうしてだろうと様子を見ていたら、隣にベビーカーで赤ちゃんを連れたお母さんがいて、そのお母さんに席を譲ろうとしていたのだ。
そのお母さんが「大丈夫よ、座って座って」とその女の子に伝えると、彼女は一言お礼を言って座った。
「あなたは本当にとっても優しいですね。すてきだわ」という気持ちを拙い英語で伝えたら、彼女は何も言わず、優しい笑顔でニッコリ笑った。
その後、彼女がわたしより前の駅で降り、自分も無事目的の駅で降りることができた。
こんなにしっかりしていて優しくて、なんてすてきな人なんだろう。
バスが運行していないというトラブルに見舞われるも、こんなありがたい経験ができるなんて。優しくしてもらったことを、わたしは一生忘れない。
サン・セバスティアンから市バスで向かった目的地のゲタリア。
バレンシアガのブランド創業者、クリストバル・バレンシアガの美術館があり、魚介も美味しく、とても素晴らしい街だった。
その他にも、フランスバスクのバイヨンヌからサン・セバスティアンへ向かう長距離バスに乗った際、バス会社の表示が分かりづらく、誤って別の会社のバスへ乗ってしまうという失敗をしてしまった。
しかも、スーツケースを先にバスの荷物入れに預けた後だった。
加えてバスターミナルは屋根もなくただの駐車場、最悪なことに天候は悪く土砂降りの雨が雹に変わり始めていた。
え!バスが違う!早く降りなきゃ!しかも荷物入れてる!!やばい!!
まだ出発前だったので急いでバスを降りようとしたら、ちょうどわたしの後ろに同じくバス会社を間違えた様子の一組のカップルがいた。
英語のアクセントから、アメリカ人の方だと思う。
そのカップルに「このバスは○○社のバスじゃないそうです!」と伝え、バスを駆け降り荷物入れに向かったところ、その扉は閉まっていた。
扉は自力で開けるタイプのもの。重いリュックを抱え、しかも土砂降りの雹の中だ。自分一人では開けられそうにもない。
ああ、どうしよう…でも開けるしかない!と決心したその時、ちょうど先程のカップルが目に入った。
彼らも荷物をバスに入れてしまっていたようで、ガタイの良い彼氏さんが素早く扉を開けてくれ、わたしのスーツケースを出すのも手伝ってくれた。
「君のはどれ!?」
「その青いのです!!」
3人で何とか荷物を取り出すことができ、それと同時に雹もだんだんと止んできた。
きっとわたし一人では荷物を出すことは不可能だった。彼氏さんには、何度お礼を言っても足りない。本当に救われた思いだった。
加えて、彼氏さん彼女さんはとても優しい方で
「こちらこそ、バスが違うって教えてくれてありがとう。本当に助かったよ。」とニッコリ笑顔でお礼を言って下さった。
その後、10分程遅れて目的のバスは到着し、無事にサン・セバスティアンへ着くことができた。
先程の彼氏さん彼女さんとも「良い旅を!」とお互いの旅の幸運を祈り別れを告げた。
バスは間違えるわ雹に打たれずぶ濡れになるわでなかなか大変だったけれど、また一つ、一生忘れない出会いがあった。
このように、自分ではどうにもならない時に、幸いなことに優しく助けて下さる方がいた。
その出会いに心の底から感謝の気持ちがこみあげた。
その他にも、小さなピンチや予測とは違う展開は毎日何度も起こった。
道が工事中でGoogleMapsの指示通りに歩けないのは日常茶飯事。
地下鉄に乗っていたら、いきなり木琴みたいな楽器で演奏し始める人が表れ、演奏が終わったら乗客にチップを求める。
しかも、払う人は意外といるのだ。その時10人中3人はコインをあげていた。
そんな様子が新鮮でおもしろくて仕方なかった。
しかも、演奏はけっこう上手だった。
物乞いをする人も多く、コインや果物を恵んでいる人もよく見かけた。
水を買おうとすると、ペットボトル500ml一本あたりの水の値段は駅の自販機で1〜2€、スーパーだと安くて0.3€、スタバは750mlで2.5€と、同じ水なのに値段が全然違う。
タクシーに乗ったら若干運転手さんごとに値段が違う気がし、正しい払い方がよく分からない。でも莫大な差ではないので、まあ、いいかと思いながら支払う。
飲食店では高いお店はバルでも少しずつ食べると結構な値段がするのに、安いお店はえ?この量と品質でこの金額??と安さに驚くこともあった。
スペインでは、今までの自分の常識がほぼ通じなかった。
でも、それに一つ一つ不安になっていたら心臓が足りないし、何かことが起きたらその場その場で臨機応変に対応していくくらいがちょうど良いのだと実感した。
色々なことがあったけれど、わたしはそんなところも引っくるめてスペインが大好きだ。
出会った人々は皆さん優しかったし、初めて出会った人でも、お店に入る時にもいつでも誰でも「¡Hola(オラ)!」と挨拶する。ありがとうもきちんと声に出して伝える文化が素晴らしいと思う。
そうした挨拶があることはとても気持ちが良く、わたしはとても過ごしやすかった。
行く先々すべて、海の色や歴史ある建物は美しく、食事は美味しい。お酒も美味しい。
何か困ったことがあったり道を間違えたり、ふと一人であることに孤独を感じても、青い海の近くや美しい街並を散歩していたらそんな気持ちは吹き飛んでしまった。
バスクの海は青く、地形がおもしろくてずっと見ていられる
もちろん、普段からトラブルに巻き込まれないよう、暗い夜道は一人で歩かない、スリに遭わないよう荷物は自分の前に持つ、電車の中で寝ない、怖そうなところには絶対行かないなどルールはある。
しかし、ちょっとくらいのトラブルが起きたって、逆に自分がそのトラブルに対してどう取り組むか、どうすればより楽しくこのトラブルを新たなチャンスにできるかと、ワクワクした気持ちで考えるようになった。
すると、これくらい何かが起きている方が、自分自身が今生きているという心地がして、それ自体が楽しくて仕方がなかった。
「ああ、わたし生きてるなあ」
上手く言葉にできないのだけれど、そんな感情が体の中からこみ上げてくるような感覚。そんな気持ちを十分に味わうことのできた旅だった。
これからの人生も、そんな「自分は生きている」という感覚を大切にしていきたいと思う。
ピンチがあってもチャンスに変えて、今生きていることを楽しむ。
小さなことでも少しずつ乗り越えていけば、また新しい自分や新しい場所にたどり着けるのだろうか。これからの人生、そうあってほしい。
そしていっぱい働いてお金を貯めて、また必ずやこのスペインの地に足を運びたい。
わたしはスペインが大好きだ。
スペインに来て、本当によかった。
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございました。
最後に改めて、旅の道中にわたしを助けてくれた方、優しく接して下さった方に、心から感謝の気持ちを込めて、このnoteを終わりにしたいと思います。
ありがとうございました。
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