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スペイン、サン・セバスティアンで本場バスクチーズケーキを食べ比べてみた話

わたしは2019年5月半ばから約1ヶ月、スペイン各地を巡る一人旅をしました。

旅のテーマは「食」。様々な土地のバル・レストラン・市場を巡り、スペインの食を自分の足で、自分の体で感じたいと思っていました。
その中で最も楽しみにしていたのが美食の地、バスク地方を旅することでした。

バスク地方の中でもサン・セバスティアンはバルが数多くあり、ミシュランの星付きレストランも多く存在する華やかな街。さらに、近年日本でもブームになっているバスクチーズケーキ発祥の地でもあります。

そんな本場のバスクチーズケーキの味は一体どんなものなのかを確かめたく、サン・セバスティアン滞在時には可能な限りチーズケーキを食べてみました。
今回は、そんなわたしが食べたバスクチーズケーキをご紹介したいと思います。

バスクチーズケーキ発祥、La Viñaのチーズケーキ

バスクチーズケーキは、外は黒く焦げ目が付くほどしっかりと焼き上がり、中はトロリとしたクリーム感が残っていることが特徴。

そのチーズケーキ発祥の地が、サン・セバスティアンのバル街にあるLa Viña(ラ・ヴィーニャ)というバルです。

わたしは火曜日の夜19時、夜の開店と同時に訪問したのですが、カウンターはもう既にチーズケーキを求める人でいっぱい。
何とか自分の場所を確保し、既に超忙しそうなカマレロ(店員さん)にチーズケーキとロシアンサラダをオーダー。
(ロシアンサラダとは、日本のポテトサラダのようなスペインバルの定番メニューです)

チーズケーキの写真を撮るも、慌ただしい店内の雰囲気に圧倒され、なんだかせっかちな印象の写真に 汗。

早速チーズケーキを一口。

外側はベイクドチーズケーキのような焼き上がりとなめらかな口当たり。焦げ目はチーズの香ばしさが漂い、ああ至福。

外側の味と食感を噛み締めたところで、内側のトロッとしたところを一口。
これがまるでカスタードクリームのようなクリーム感。口の中で優しくとろけ、チーズのコクと甘みが広がり最高に美味しい。

ガイドブックには「お酒にも合う」と記載があったので甘さ控えめなのかと思いきや、しっかり甘めの味わい。でも確かにお酒に合いそうです。

チーズが焦げた部分の濃厚さ、そして内側のとろとろクリーミー感、この要素を同時に味わえるなんて、これは何と贅沢なデザートなんだ…!と感動。
今まで食べたチーズケーキとは何かが違う。
毎日ここに通いたいくらい、美味しい。

ちなみに、サン・セバスティアン最後の夜にもう一度La Viñaのチーズケーキを拝みたいとお店へ向かうも、臨時休業なのかシャッターが閉まっていて食べることができませんでした 涙。
やっぱり、食べたいものは食べたい時に食べるべきだと痛感したのでした。

Bar Sportのバスクチーズケーキ

同じくバル街にある人気バル・Bar Sport(バル・スポルト)のデザートメニュー欄にチーズケーキを発見し、食べてみることにしました。

こちらのチーズケーキは焦げ目が控えめで見た目はベイクドチーズケーキのよう。

食べてみると、見た目とは裏腹に口当たりあっさり、まるでスフレチーズケーキのような口溶け。
La Viñaのチーズケーキに比べると中心部までしっかり焼きが入っていました。チーズ感もあっさり目、甘さも控えめでちょうど良くとっても美味しい。ピンチョスとお酒でお腹いっぱいでも別腹でパクパク食べれてしまいます。

こちらのお店は他のピンチョスも美味しいことはもちろん、何より店員さんが気さくでとにかく優しくて対応が素晴らしかったです。ちょっと元気が欲しいときに訪れたくなるバルでした。

Otaeguiのバスクチーズケーキ

サン・セバスティアンではその他のバルにもメニューにチーズケーキがあったのですが、街中のお菓子屋さんやパン屋さんでもチーズケーキをよく見かけました。

その中でも一目惚れしてしまったのが、Otaegui(オタエギ)という1886年創業の老舗のお菓子屋さん。

こちらのチーズケーキは外側はしっかりと焦げ目が付いていることが特徴でした。


見た目とは対照的に、内側はふわっと&しっとり感が絶妙。
チーズ感もしっかり、そしてどっしり甘く、コーヒーにも紅茶にも合いそう!やみつきになる止まらない美味しさ。

バスクのチーズケーキはやっぱり外側の焦げ目と内側のクリーミー感が特徴だと感じました。
さらにその中間はスフレチーズケーキのようにふんわりした食感で、一つで二度三度と楽しむことができます。

そして話が脱線してしまうのですが、こちらのお店はサン・セバスティアンの名物菓子、パンチネタ発祥のお店でもあります。写真左側のお菓子がパンチネタ。
刻んだアーモンドが散りばめられたパイ生地の中に、カスタードクリームがたっぷり入ったお菓子です。

これを一口頬張れば、アーモンドの香ばしさが鼻に抜け、バター風味たっぷりのパイ生地がサクっと音を立て、甘い濃厚なカスタードクリームが口いっぱいに広がります。

まるでサクサクのミルフィーユの中にカスタードクリームがたっぷり詰まったシュークリームのよう。シュークリーム好きなら、きっと虜になること間違いなしです。
少なくともわたしは一口食べた瞬間、パイ生地サクッ・アーモンドカリッ・クリームトロリにハマってしまい、あっという間に平らげていました。

Otaeguiは他にもクロワッサンなどのパン、一口サイズのクッキー、チョコレートやケーキなど、とにかく種類が豊富。

市街に何店舗か支店があり、カフェが併設された店舗もあります。
店内では地元の方が朝食やティータイムに利用され、チーズケーキを食べている人もよく見かけました。

さらにステキだなあと思ったポイントは、包装がオシャレで可愛いところ。
文字のデザイン、青と白の包装紙とリボンがラブリーでたまりません。

家の近くにあればきっと週に何度も通っていると思います。
本当に、ラブリーなお菓子屋さんでした。

バスターミナルのカフェテリアのバスクチーズケーキ

サン・セバスティアンを旅立つ日、朝からマドリード行きの特急に乗るスケジュールでした。
その前に、どうにかして最後にチーズケーキにありつけないかと考えていたところ、駅の隣が長距離バスのターミナルで、そこのカフェテリアのカウンターにもチーズケーキが置かれていたのを思い出し、買ってみることに。

テイクアウトでお願いしたら、こんな感じでざっくり入っていました 笑。
何ともスペインぽくておもしろい。

意外だったのが、このチーズケーキはわたしがサン・セバスティアンで食べた中で一番チーズを感じたこと。

クリームチーズも入っていると思うのですが、どことなく羊のチーズ独特の香りが鼻に抜けてくる。バルで食べた、バスク産・羊のチーズのリゾットやスープの後味に似ていました。

わたしの勝手な先入観で、バスターミナルや駅のカフェテリアはさっと立ち寄るような場所ですし、正直あまりクオリティに期待を抱いていませんでした。それを良い意味で裏切る、ちょっと個性的で刺激的なチーズケーキでした。

こちらのバスターミナルのカフェテリアではチーズケーキを買った別の日にカフェオレを飲んだことがあったのですが、コーヒーも美味しく、店内は広くゆっくり過ごすことができました。移動中の休憩にオススメのスポットです。

本場のバスクチーズケーキを食し、バスクについて考える

今回は4つしか食べることができなかったのであくまで個人的見解ですが、本場のバスクチーズケーキはどこで食べても美味しかったです。

これほど美味しいバスクチーズケーキは一体どうやって作るのか気になりネットでレシピを調べたところ、クリームチーズ・生クリーム・砂糖・卵・そしてほんの少量の小麦粉。それらを混ぜ、オーブンでじっくり焼き上げ、外はしっかり、中は柔らかい独特の食感になるとのこと。

恐らくこの作り方は大体どこも同じだと思うのですが、焼き加減や材料の分量が少しずつ異なり、結果それぞれのお店の味になっているのではと思います。

その中でも、本家La Viñaのチーズケーキは外側と内側のコントラストが一番はっきりしていました。

外側のベイクド感と内側のクリーム感を同時に楽しむことができ、コクがあって最もリッチな味わい。わたしがこれまで食べたどのチーズケーキやどのお店とも異なり、これこそが本当のバスクチーズケーキなのだと実感しました。

そのため、本場サン・セバスティアンでチーズケーキを食べたい!という方は、まずはLa Viñaへ行かれることをオススメします。
La Viñaの味を軸にして、色々と食べ比べてみると楽しいです。

もう一つおもしろいなと感じたことは、街の飲食店、更にはバスターミナル、どこでもチーズケーキを見かけたところ。

あくまで想像ですが、本家La Viñaが作り方を包み隠さず公表し、他のお店が同じように作って売り出し、いつの間にかそれらがお店ごとに異なるの味になり、さらに街全体、そしてバスク全体の定番メニューとなっていったのかなと思います。

実際に、サン・セバスティアン近くのゲタリアという街は魚介の炭火焼きが名物で、その調理法を確立したElkano(エルカノ)というレストランが他のレストランにも調理法を伝授したそうで、街にはElkanoはじめ、同じような炭火焼きレストランが数多くありました。

そうした事実こそが、バスクの人々がどれだけ食を愛しているか、人々のつながりや街を大切にしているかを表しているのでしょう。

バスクっておもしろい。
地元の食を知ることは、そこに住まう人々の暮らしや文化を知ることなのだと実感したのでした。



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