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バルのカウンターにて一人、明日のことを思う

スペインでの一人旅が始まってから、あっという間に一週間以上が過ぎてしまった。

これまでにマドリード・バルセロナ・グラナダ・マラガ・コルドバを訪れ、とても楽しく旅をすることができている。

今回最も楽しみにしていたのが、街を歩いて気になったバルやレストラン、カフェに入ってみることだ。

宿泊先に近くて良さそうなカフェを見つけてはのんびり朝食を食べたり、お昼に街歩きをしてバルを訪れたりしているのだが、これが本当に楽しい。

その中でも、今現在最も楽しく美味しい食事ができたのが、マラガという街にあるEl Pimpi(エル・ピンピ)というレストラン兼バルだ。

スペイン南部、アンダルシア地方で最も大きな街であるマラガ。
ピカソ生誕の地でもあり、わたしはピカソ美術館を訪れたいがために、今回の旅でマラガに滞在することを決めた。

実際に訪れてみると、空港は国際空港でとても広く、街中まで電車で4駅と交通の便も良い。
観光地のグラナダやコルドバにもバスで2時間程でアクセスでき、アンダルシア地方の旅の起点にするのもぴったりだった。

そして想像以上に都会で、街中にはおしゃれなブティックが勢揃い。
地中海にも面していて、港にはクルーズ船が停泊していた。

マラガの中心部すぐの山手にあるヒブラルファロ城からの眺め


そんなマラガで地元の人にも観光客にもとても人気のEl Pimpi(エル・ピンピ)というレストラン兼バルがあると情報を得た。

お昼の時間は混みそうだったので、まずは開店の12時をねらってランチに訪れた。
(スペインでは昼食の時間が13時から14時スタートととても遅いのです)

こじんまりしたレストランかと思いきや、一歩中に入ってびっくり。
店内は真ん中に大きな廊下があり、そこに飾られたインテリアや絵がとてもかわいく、席に着く前からもうノックアウト。

お店は廊下を進むと奥がレストラン、左手が飲み物とタパス(一品料理)が楽しめるバルになっていた。

わたしは早速バルの席に座り、ティント・デ・ベラノ(赤ワインの炭酸割り)とアンダルシア地方の名物、サルモレホを頼んでみた。

サルモレホは冷たい濃厚なトマトベースのスープ。
角切りの生ハムが入っていてとても美味しく、さっぱりしていて食べやすかった。ボリュームも満点で野菜がたっぷり手軽に取れて嬉しい。

それにしても、メニュー表紙の絵がとてもかわいい。

サルモレホとお酒を頂きながら周りをぐるっと見渡すと、いかにもスペイン、アンダルシア!といった感じのインテリアが並んでいて、ワクワクが止まらなかった。

壁には闘牛の絵がバーンと飾られ、店内にはフラメンコの音楽がかかり、それに合わせて時々カマレロ(店員さん)が機嫌よく口ずさんでいる。

カマレロは陽気で明るく、飲み物や食べ物を注文するとニコッと笑ってくれてとても親切で優しい。
しかし、食事を運び終わった後はあまり干渉せず、わたしを良い感じにほおっていてくれた。
そのおかげで周りの雰囲気をのんびり目や耳で味わいながら食事をすることができ、それが心地よかった。

ああ、これが本場スペインのバルか…!!!
この場にいるだけでウキウキ楽しくて仕方がなかった。

フラメンコを聞きながらこんなステキ空間で食事が楽しめるなんて。しかもめちゃくちゃ美味しい。
ザ・スペイン感満点なのにツーリスト向けっぽさは全くなく、街中の雰囲気に溶け込んでいて味がある。なんてステキなお店なのだろう。
あっという間に虜になってしまった。

その後、本日のオススメだったcarrillada(カリジャーダ)というアンダルシア地方の名物、豚ほほ肉の煮込みも食べてみたのだが、こちらもとても美味しかった。
ほほ肉は脂肪分が少なく、赤身の旨味が凝縮されていた。


このように食事も素晴らしくサービスもステキなお店だったので、翌日の夕方にもう一度訪れることにした。

二度目の訪問ではアホ・ブランコを食べた。アホ・ブランコもアンダルシア地方の名物で、その名の通りニンニクが入った冷たいスープだ。
(アホ=ニンニク、ブランコ=白いという意味です)

ニンニクとアーモンドが入った冷たいスープにレーズンがトッピング。
ミルクとアーモンドでクリーミー、かつシンプルなお味にレーズンの甘さがアクセントになって、とても美味しかった。

飲み物はサングリアをオーダー。
良いワインなのか、フルーティーで飲みやすく渋みも良い塩梅でめちゃくちゃ美味しくびっくりした。

こうして美味しいお酒とアホ・ブランコを楽しんでいたのだが、実は少し食べすぎたのか胃の調子が優れず体調が万全ではなかった。

そして、そんな体調が優れない時は思考もネガティブになってしまって、ちょっぴり孤独を感じてしまった。

その孤独がやってくると、これから先旅が終わってから人生どうしようかなとか、旅はとても楽しいけれど、このままで良いのかな…なんて余計なことを考えてしまう。

わたしがこうして一人で旅をしているこの間にも、バリバリ働く友人もいれば、結婚して子ども産み育児に頑張る友人がいる。
長年の夢だった大学院への進学を実現し、着実に夢を現実にしている友人もいる。

なのにわたしは、これからの未来がどうなるかが見えず漠然としつつも、
旅を続けている。これで良いのかなあ。

そんなとりとめのないことが、頭に浮かんでは消えていく。

でもふと現実に戻ると、わたしの隣にはほろ酔いの地元客のおばあさんがカマレロとフラメンコに合わせて歌詞を口ずさみ、笑顔でステップを踏んでいる。

ああ。なんて平和な一時なんだろう。

これから先どうなるか分からないしネガティブな感情は浮かんでくるけれど、少なくとも今わたし、ここに来れてとっても幸せだ。

サングリアでほろ酔い気分になって、踊っているおばあさんを眺めていたら、自分の悩みなんてどうでもよくなるなあ。

そんなことを思っていたところ、フラメンコが終わり今度はサルサへと曲が変わった。男性アーティストのイケメンボイスがとても上手い。

その歌のサビに入るや否や、イケメンボイスでいきなり
「♪Yo no se mañana〜♪」
と聞こえてきて、えっ!とびっくりした。

「Yo no se mañana」とは、直訳すると
「わたしには明日のことは分からない」という意味だ。

自分の未来、明日が見えなくて、これから先、どう生きていくか悩んでいたわたしの心に、イケメンボイスの「Yo no se mañana」がいきなり突き刺さった。

偶然にしては出来すぎていて、笑っちゃう。

歌詞はその場で全ては聞き取れなかったが、曲の雰囲気からして
「明日のことなんて気にせずはっちゃけようぜ〜!」というよりかは、
「明日のことは分からないからこそ、今を大事にしようよ」というようなことを歌っているのかな、と感じた。

イケメンボイスはその後何度も「Yo no se mañana」と繰り返す。

それを聴いているうちに、何だか分からないけれど自然と涙が一筋こぼれた。

そうだよね。明日のことなんて分からないし、生きてりゃ悩みなんて尽きないよね。
とにかく今は、自分のできることをして、めいいっぱい今を楽しまなきゃね。

陽気なフラメンコに明るい歌、美味しいお酒と食事。
「Yo no se mañana」のサウンドに地元の人の楽しそうな笑顔。

やっぱスペイン、めちゃくちゃ良いところだわ。
気を取り直して、旅を楽しまなければと元気がわいた。

それにしてもこれは何て曲なんだろうとShazamで調べたところ、タイトルはそのまんま「Yo no se mañana(ジョ ノ セ マニャーナ)」だった。

ホテルに戻ってさらに調べたところ、どうやら男女の関係を歌っているらしい。
ざっと要約すると
「明日、僕たちが一緒にいるか分からない。
   明日のことはどこにも書かれていない。
   君と僕、今この瞬間を生きなければいけない。」
というような内容だった。

今この瞬間に、めいいっぱい愛し合おうという意味なのかな。

良い歌詞だし歌も上手いし、何だか元気が出てくる曲だ。
それにしても、ルイス・エンリケさん、良い声だ…。

スペイン語が分からなくても楽しめる曲なので、よろしければ是非、聴いてみて下さい。


こうした旅先でのあらゆる出会いが、きっとかけがえのない思い出になるんだろうなと感じた出来事なのでした。

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