『うらない』
▼教室。昼休み。リカコとランは2人でご飯を食べている。リカコは雑誌を読んでいる。
♪昼休みのチャイム
リカコ 「ランちゃん」
ラン 「なに?」
リカコ 「ランちゃんって何座?」
ラン 「んー餃子」
リカコ 「ふざけないでよ」
ラン 「いまご飯食べてんの」
リカコ 「だから何座なの?」
ラン 「リカコは……かに座か」
リカコ 「え?なんで知ってるの?教えたっけ?」
ラン 「誕生日から調べればわかるでしょ」
リカコ 「ああそうか。ええっと、ランちゃんの誕生日は……」
ラン 「私の星座なんてどうでもいいでしょ。何、占い?」
リカコ 「うん。雑誌の占いコーナー。ファッション誌にはつきものだよねえ。ファッションよりむしろこっちの方がメインって感じ」
ラン 「本末転倒」
リカコ 「気になって後ろから読んだりしない?」
ラン 「そんなのリカコだけだよ」
リカコ 「そうかなあ。さてさて、今月の私の運勢はっと……『かに座のあなた、恋愛運が絶好調!好きな人に想いを伝えるチャンス!』だって!」
ラン 「よかったじゃん」
リカコ 「えー、でも私好きな人とかいないよー」
ラン 「そうなの?」
リカコ 「彼氏にしたい人ってことでしょ?うちらのクラス全然ダメだからなあ」
ラン 「わかる」
リカコ 「え、ランちゃんも」
ラン 「ハズレって感じだよね」
リカコ 「だよねだよね!大抵普通は1人か2人くらいはカッコいい人いるのにね。なんだろう、こう、卵のないオムライス的な……」
ラン 「それもうただのケチャップライスだよ」
リカコ 「はー。青春謳歌してー。出会いてー」
ラン 「……彼氏、欲しいんだ」
リカコ 「え?ランちゃんは欲しくないの」
ラン 「うん」
リカコ 「いやいや嘘でしょー」
ラン 「だって、めんどくさくない?彼氏できたら、彼氏に時間割かないといけないでしょ。メールしたり電話したりさ」
リカコ 「たしかにそうだねえ」
ラン 「プライベートタイムなくなるじゃん。私には無理」
リカコ 「そういう考え方もあるのか。なるほどなあ」
ラン 「リカコ、流されてはダメよ。社会は敵。流行は悪」
リカコ 「……んー、彼氏ができたら友達と遊ぶ時間も減るしねー。……しばらくはいいかな」
ラン 「まだ、あたしらには早いよ」
リカコ 「だねー!こうやって、ランちゃんとダラダラする方が楽だもん」
ラン 「そ、そう?」
リカコ 「うん。私やっぱランちゃん好きだわー。落ち着くもん。ランちゃんが男だったらいいのに。絶対イケメンだよ」
ラン 「イケメンだったら、リカコとは一緒にいないかなー」
リカコ 「えーこんなにいい女なのに?」
ラン 「だったら、私の誕生日くらい覚えておきなさいよ」
リカコ 「覚えてるよ!覚えてる、すぐにでなかっただけで」
ラン 「女も男もマメな奴が生き残る。さっ、リカコも弁当食べちゃいなよ。お昼休み終わるよ」
リカコ 「あっ、喋るのに夢中で全然食べてなかった……!」
ラン 「あたしトイレ行ってくるわ」
リカコ 「うん。いてらー!」
・間
ラン 誕生日から調べれば、その人の星座はわかる。あの雑誌の占いは、私も毎週チェックしてて、その度にかに座との相性をみる。今月は、かに座とうお座の相性はバッチリ。ラッキーアイテムは餃子。当たってる
ラン 「……男の子だったら、か」
ラン トイレの鏡を見て想う。最近、ちょっと胸が大きくなってきた。顔もどことなく大人に近づいているような気がする。でも今は、あの子のことだけ考えていたい。そんなお年頃なのだ。
END
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去年コミティアで出したコピー本『やすっぽい言葉で片付けないで』にも載せた、お蔵入りになった百合ドラマ(?)の原稿です。2〜3年前くらいに10分以内でってオーダーで作ったはず。拙いかもしれないけど、意外と気に入っているので上げちゃいました。
ツイッターでも呟いたんですけど、今年は朗読やりたいなあ。
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