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J1第8節 鹿島vs仙台 マッチレビュー

少しの間試合こそ追ってはいたものの、
レビューはお休みさせて頂いてました。
決してチェルシーや鹿島が敗けて哀しみに暮れていたからではありません。
...いや、まぁ辛い時間ではありましたけど、ね...。

両者の良さが出た序盤、しかし徐々に鹿島ペースへ

試合開始から序盤にかけ、試合は両者の良さが色濃く出ていた。
降格圏からの脱出を図りたい仙台も前線から奪いに行く姿勢を見せ、
実際鹿島は出鼻を挫かれるようなボールロストがあった。
仙台はボールを持てば3CBがワイドに開きつつ、
鹿島2トップに対しての数的有利を活かしてハーフラインまで難なく前進。
前半7分のCB平岡から前線ハモン・ロペスへのフィードなど、
フリーで持ち上がったCBからのフィードは鹿島DFにとって厄介なものだった。
特にハモン・ロペスがアバウトなボールでも収められるだけの強靭なフィジカル、確かな技術を持っているのだから効果的でもあった。
前半14分ごろ、仙台は左サイドで流動的なパスワークからチャンスを創出。
トライアングルを瞬間的に作り、生み出したスペースを利用した
理想的とも言える崩しだったことは確かだろう。
経験の浅い小田が対応が強いられた事もあったが、仙台の強みを感じプレーだ。

とはいえ鹿島もやられてばかりではなく、
徐々に仙台のプレーの傾向や狙いを感じ取っていくことで
試合の流れを少しづつだが握る事に成功した。
鹿島が仙台の攻撃手法に対して効果的だったのが、パスコースの限定

仙台の両ワイドCBの持ち上がりを半ば受け入れつつ、
2トップの連動でボールサイドに押し込む。
中央のパスコースを消しつつ、プレーの選択肢を制限した。
単純なロングボールであってもハモン・ロペスは脅威なのだが、
相棒のジャーメインにさほど怖さはなかったのが救い。
そもそも仙台の攻撃は
①WBとCH間で行われる流動的なパス&ムーブでの崩し→クロス
②ハモン・ロペスによるチャンスの創造

のほぼ2パターンがあったように思えたのだが、
再現性が高いのはどうしても②ハモン・ロペスのパターン。
つまりパスの出先としてハモン・ロペスを抑えればかなり守備は計算でき、
かつハイボールに対して強さを発揮する町田をぶるける事でかなりリスクを緩和できるようになった。

ただ、陰ながら鹿島の守備を支えたのは中盤の選手でもある。
永木とレオ・シルバは中盤センターでの数的不利を上手くぼかしつつ、隙あらば躊躇いの無いボディコンタクトで危険な芽を摘んでいた。
仙台は前半を通してCHを上手く用いた攻撃に欠けた印象があったが、
それは鹿島両CHの圧力あってのことだと思う。

コンパクトな距離保つ仙台の3CB、3CH

仙台の戦い方、特に守備時の約束事のように思えたのが
3CB、そして3CHの距離感の保ち方だ。
常に彼ら3人はそれぞれユニットとして動き、
コンパクトな距離を保ちつつ中央エリアでの数的優位を保持しようとした。
が、反面サイドでは数的同数ないし数的不利に陥ってしまうのだが、
失点のリスクを最小限に減らす為には現実的な選択だろう。
中央を閉め、サイドでの1対1を受け入れるやり方自体に問題ではない。

個人的に感じたのはその距離感を保つことにプライオリティーを置きすぎ、
サイドを突破された場合のカバーリングが間に合っていない点。
重心が中央に寄りすぎている為、鹿島は幾度となくサイドの深い位置まで突破、
チャンスにこぎつけている。

一見綺麗でコンパクトに保たれた2つのユニットなのだが、
それぞれのユニットに怖さを感じなかった。
確かに人数はそろっている為強度はあるのだが、
ボールホルダーへのアプローチには消極的で、
かつチャレンジ&カバーの原則があまり成立できていないシーンも。

正直な所、この試合における仙台の選手らは
距離感こそ的確だったように思えるが、
その実相互理解から生まれる連携に関しては欠けていた気がする。
今、味方の誰がどのように振る舞うべきで、実際どうするか、そして自分は何をすべきか。
この意思が感じ取れなかった。
距離感に縛られてプレーに制限がかかっているのか、
それとも単純に距離感を狭めることを目的としてしまているのかは不明。
せっかくの人数優位を築いても、その優位を活かしていたかは疑問だ。
(前半5分の土居のカウンターのシーンなど良い例か。
数的には有利なはずなのだが、ズルズルと自陣に下がってしまった。)

とにもかくにも、右サイドの安部が流れから逆サイドの左に位置取り、
安西と縦の関係を組むと上記の崩しが顕著に表れ始める。
鹿島の前半の攻撃、実に6割以上が左サイドで行われたのだが、
その大半が安部、安西を中心とした攻撃となっていた。

随所で光る白崎の存在

この日鹿島でのデビューを飾った白崎凌兵。
試合では豊富な運動量で攻守に走り続け勝利に貢献したのだが、
とにかく今後が楽しみな存在だった。
フル出場で走行距離12kmあまり。
文字通り攻守に走ったのだが、輝きを見せたのは崩しのアイデア。

前半こそあまりボールを触れない時間が多かったが、
それでもアタッキングサードでボールを受ければ確かな技術と視野で
得点を匂わせるクロスを送り続けた。
前半34分、土居とのパス交換から抜け出し、クロスを送るまでの流れは
実に美しく、力強さを感じるものだった。
複数のポジションをこなしつつ、攻撃で違いを作れる選手として
これから多くの出場機会に恵まれることを期待したい。

ペナルティエリア角の付近で白崎がボールを持つとワクワクした。
足元だろうとなんだろうと、彼が送り出したボールは
高い確率でチャンスに繋がったからだ。
決して便利なマルチロールの存在として終わるだけの選手ではない。
そう感じさせるだけのプレー内容だった。

ハモン・ロペスなしに語れぬ仙台の攻撃

0から1を作り出せる選手なのがハモン・ロペスなのだろう。
卓越した存在すぎるがゆえに、彼抜きで仙台の攻撃を語るのは難しい。
裏を返せば、それだけ彼のパフォーマンス次第で試合が変わってしまう。

この日鹿島は安定して守れていた時間も確かにあったのだが、
それはハモン・ロペスに自由にプレーをさせなかった時間帯と同じ。
とにかく彼に仕事をさせないことが重要であることは、
試合開始から最後の笛が鳴る瞬間まで変わらなかった事実だったはず。

ロペスの相棒として先発したジャーメイン・良は
その優れたスピードを活かしてフィニッシュの形を作り、
実際にロペスとの連携から決定機を生み出している。
ロペスとジャーメインの2人のみで攻撃の形を作った
前半15分のシーンなどはまさに狙い通りだったではないか。
とはいえジャーメインはフィニッシュの動き出しの他で課題を感じ、
その後ピッチに入った石原直樹と比べるとプレゼンスの差は大きい。

ハモン・ロペスという大黒柱を活かし、かつ彼が活かしやすい
FWの相棒役を誰に定めるかは仙台・渡辺監督の手腕が問われるところ。
そこさえ定まれば、得点は自ずと積み重なっていくようにさえ思える。

重要なのは「勝利した事」

犬飼がCKでの得点は見事なものであったし、
(この日のCKは仙台のゾーン守備を上手く利用したプレーばかりだった)
チャンスを作られながらも無失点で抑えた事は大きい。
前節東京戦は反省の多い内容だっただけに、だ。

白崎のように新戦力が台頭してくることはチームにとって大きなプラスで、
激しい競争こそがチームの原動力となるはずだ。
今季鹿島は若手を多く起用せざるを得ない状況でもあるのだが、
経験の浅い選手は出場機会以上に、勝利の経験を積み重ねて欲しい。
その経験こそが鹿島の選手を形づくっていくと思っている。
そう、試合後の白崎の表情を見て感じ取った。

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