とあるきっかけがあり、下記のものが必要になった。
六角M6サイズの15mmボルト
M6サイズのメタルワッシャー
M６サイズのゴムワッシャー
六角レンチ

これを購入すべくビッグホームセンターへ意気揚々と乗り込んだのだが、
そこは果てしない世界が広がっていた。

今夜はカレーだから、豚肉とジャガイモと人参と玉ねぎとルー買ってきて！
と言うレベルをはるかに超えた世界だった。

膨大な量のボルトの中で六角M6サイズのボルトがまず探せない。
待て待て、その前にボルトとネジってどう違うのだろう。
大のおじさんが店員さんに子供のような質問をするのはプライドが許さない。
Google先生の力を借りて調べる。
ネジネジと螺旋状になっている部分をネジと言う。
つまり工具で締め付ける頭の部分はネジとは言わない。
ネジ部分+頭＝ボルトだ。

いやいや、ここは知的好奇心を満たす場ではない。
私はこの買い物リストをいち早く購入しなければならないのだ。
私が欲しいものは、ボルトである。やっとクリアになった。

次に引っかかったのは、頭の形状である。
目に飛び込んできたのは、頭の形状自体が六角のボルトである。
違う。これではない。
形状は丸で、中が六角にくり抜かれているボルトが欲しいのだ。
この文章を見て分かっていただけたと思うが、
知識のない私にはこれ以上の表現方法が見つからなかった。

店員さんに、ど素人みたいな質問をしてすみませんとお断りを入れた後、
そのまんまの質問をしてみた。
その店員さんをボル神様と呼ぶことにしたのはその2秒後だ。
ボル神様は素人は引っ込んでろ！と言う態度をミジンコも見せず、
丁寧に売り場まで案内してくれた。

頭の形状・M6サイズまでたどり着いた後は、ネジ部分の長さを選ぶ。
これも果てしなく種類がある。
なんとか15mmをゲットし、私のボルチョイレベルは上がった。
そういえばポリジョイサーカスはまだやっているのか？
Joyなサーカスよりも、私は美人女医のサーカスの方が良いのである。

ワッシャーとはそもそも必要なのかと考えそうになりながらも、
M6サイズのメタルワッシャーとゴムワッシャーは比較的容易に発見できた。
ゴムとメタルの機能の違いなど、変な知的好奇心を発揮せずに
無心で選んだのだ。

最後に六角レンチを選べば終わりだ。
ずっとM6の鼻歌を歌っていた私だ。
六角レンチ売り場に言ってM6を選べば終わりなのである。
が、六角レンチにMと言う規格はなかったのだ。
ここまでずっとMを信じてやってきた私の信念は崩れ去った。
六角レンチの規格はmmだ。
崩れ去った信念をなんとか手繰り寄せ、6という数字に注目した。
つまり6mmを選べばいいのだと。
私はなんという起点のきく男なのだろう。

真っ暗闇の世界に一線の光が差したかのような恍惚である。
しかしその光は殺人ビームだったのである。
M6ボルトの六角部分と六角レンチをドッキングした瞬間、
私はその赤くまっすぐな殺人ビームに八つ裂きにされた。

合体できないのである。
M6と6mmは対応しないのである。
あの人とはあっちの相性が悪くてぇーとかのレベルではなくて、
ハマりさえしないのである。
なんという不条理な世の中なのだろうか。

こうなると、ボルトが悪いのかレンチが悪いのかわけがわからなくなってくる。
悪意のあるボル神様が、
M6サイズのボックスにM7サイズを入れたのではないか！！
悪徳六角レンチメーカーめ、
6mmと言うパッケージに7mmのレンチを入れやがって！！！！

ボル神様は優しく私に微笑みかけるのだ。
お客さん、M6と言うのはネジ部分の直径のことですわよほほ。
ですから頭の部分は6mmよりもでっかいのですよよよ。
でもこのボルトは頭部分に六角が彫ってあるので、
この六角のサイズは5mmでそよ。

はい？5mm?
ネジ業界の方が読者にいらっしゃたら申し訳ない。
申し訳ないが、クソほど分かりにくい世界だ。

ボル神様の優しい指南により必要なものは揃った。
しかしこのわかりにくい世界については、まだもやっとしたものが残る。
しかし私はニューワールドに足を踏み込んだ。
それは疑いようのない事実なのだ。

今後は注意深く身の回りのネジを見るようになるであろう。
そしてネジの外形規格であるM規格に思いを馳せ、
何ミリの六角レンチがフィットするかを想像する遊びを開発する。
これはボル男とレン子が出会うまでのストーリーであり、
私自身がマッチングプラットフォームになると言うことを意味する。

そうだ、私はプラットフォームだ。
そういえば駅にあるプラットホームとプラットフォームには
どのような違いがあるのだろうか。
何！？同義だと！？

そうやって日々生きているのが私なのだ。