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不倫

 身体の浮気はいい。けど。けれど、心の浮気は許せない。だから安心して。あなたの旦那さんはわたしを抱くけれど心は抱いていないから。あなたの方が断然惨めだとずっとおもっていた。いや違った。わたしの方が心すら抱いてもくれないただの空気人形だった。それでもいいの。あいたい。ずっと
あいたい。心ここにあらずでもいい。けれど抱いて。たくさん、もっとたくさん狂うほど抱いて。
そうしてわたしは彼を失わないですんだ。すんだけれど長い年月の中でどこかで区切りをつけたほうが良いのだろうか。不倫ではないただの遊び。世の中の男はどうしていろいろな女を抱くのだろう。そして女もわかっているのに抱かれてしまうのだろう。わからない。ずっとわからなくて苦しい。
それでもベッドの上でくたくたに弱ったとしてもまた忘れたころにベッドの上でふたりして弱りながら抱き合ってキスをする。背中に腕を回す。あなたが好き。声に出してはいけない言葉たちは吹き出しになり宙をまって浮いている。空にはたくさんの言葉にできない吹き出しが浮いているのだろう。ものすごい数ではないのだろうか。
鏡の中のわたしはいつも青白い顔をし腐った魚の目をしながらぼんやりとインスタントコーヒーをすする。ぼんやりしながらまたあのひとをおもい途方に暮れ憂鬱になり一時間くらいたっている。
くそっ。なんなんだ。この胸ね中にガムのように粘りついた感情は。名前を。この感情の名前をだれか教えてほしい。わたしは迷走しながらでもあのひとのことを考えない日はない。

欲しいわけではない。ただ感情に名前を。

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