小春日和

はあああ 退屈だあ

大きく欠伸をすると月下狐仙は杖を落とした

彦佑は笑いながら杖を拾う

だったら 天界へお帰りになればよいのに

天帝も随分変わったそうですよ また赤い糸で縁を繋いでは

ふううむ この花界は平穏で美しい、だが私の心を湧き立てるものが無い

だからといって すんなり天界へ戻るのも気が進まぬ

ではご自由に 私はちょっと出掛けて来ます故

何処に行くのだ

錦覓のところへ

なに?旭鳳のところへか?

彦佑殿

丁度 茶を運んできた連翹が口をはさんだ

錦覓は人間界に住んでいるけど、人間になってしまったの?

そうなら会うこともままならないのではないの

うむっ  旭鳳は転生した錦覓と人間として短い一生を送ろうと思ったらし

いが、仮にも天帝の子と水神だ ただの人間になろうはずがないではないか

錦覓も水神の記憶を残したまま転生したようだし霊力もそのままだ

ふうん そうなの

鎏英の娘も時折 旭鳳の息子に会いに行くらしい

今の天帝に子はいない これからも作らないだろう

ことによっては旭鳳の息子に帝位が継がれることもあり得る

お話はそのぐらいで 私は錦覓のもとへ行きますよ

待て 待つのだ彦佑 私も行こう 

だったら お早く  さあ  行きますよ

そう 焦らすでない  年寄りは労わるものぞ

彦佑と月下狐仙は光となって飛んで行った

あーあ 行っちゃった、私も会いたかったのに。。。

連翹は頬を膨らませて空を仰いだ

まあいいわ 私も位が上がったことだし 今度行ってみようかな

花界に呼んでもいいわ みんな会いたいだろうから

茶器を片付けると宮へ向かった



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