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観たほうがいいと予感がした舞台『隠し砦の三悪人』(ネタバレあり)

2023/08/13(日)
明治座で舞台『隠し砦の三悪人』を観てきました。
なんと東京千秋楽!

\  あらすじなどはコチラ  /


連日のお墓参り巡りで疲れていたらしく、JR車内で爆睡して段差を忘れて蹴つまづいて午前中から晩酌中のサラリーマンにビビられたりして、幸先悪い感じで向かった明治座(笑)
人形町に明るい友人が一緒だったので、迷わず行かれて良かった(笑)

演劇大好きで学生の頃から観てますが、明治座は初めての訪問です。
レストランやカフェがいくつもあって、ベンチもたくさんあるし、お土産を買うとこもあるし。
普段行く劇場とはやっぱりちょっと違う雰囲気ですね。
劇場だけで、観劇前後や幕間を持て余すことなく楽しめるようになっていました。
キャパがデカいってすごいな!

さて、今回の演目である『隠し砦の三悪人』。
言わずとしれた黒澤明監督の映画で有名ですが……はい、見てません。
15年前に公開した松潤主演の映画も、見てません。(あれはほぼほぼ違うストーリーらしいけど。そしてまだ嵐ファンじゃなかった)

とくに黒澤映画好きということではないのですが、ふと母が見ていた生協のカタログに、この舞台のチケット発売がありまして。
「へー、上川さんで演るんだ。ちょっと前(15年前だった!)に映画やってたよね。見てないけど」くらいの感覚だったのですが、突然「あれ、なんかこの舞台観た方がいい気がする」と電波をキャッチしたかのように気になり始めました。

そのうち、たまたま見ていたテレビ番組に、主演の上川さんや風間くんたちが舞台の番宣で出ていて「やっぱり観たいぞ」と、上手いことメディアの戦略に乗せられつつ、チケットを取ってみることに。
人気俳優いっぱいかつ黒澤作品なので、取れないだろうと思っていたら、サイド席ですが取れてしまいました(笑)

そんなわけで、予備知識ゼロ~で観劇です。

物語は、
時は戦国。一旗揚げようと貧村から抜け出してきた男2人(六角精児、風間俊介)と、戦に破れて御家断絶の危機にある姫(小林由依@櫻坂46)、その再興を目指す剣豪な家臣たち(上川隆也)、敵国の冷酷な当主・竹膳(佐藤アツヒロ)とそれを快く思わない家臣の田所兵衛(宇梶剛士)、それぞれの「思惑」が渦巻いて進む、冒険活劇です。


ここからネタバレあります


「また逢おう!」とか「裏切り御免!」とか、キャラメル舞台の元ネタこれか!!と思うセリフが出てきて、それだけでもおトク感がありました。
キャラメルファン限定の楽しみ方ですが(笑)

そんな中、私の心にズキュンと来たのが、風間くん演じる又七のセリフ。
小作の三男坊にも心がある
というもの。
歴史の成績が壊滅的だった私でも、戦国時代の小作人の三男坊といえば、長男・次男に何かあった時用の予備や、ただの労働力だと解ります。
どんな人にも人権が与えられている現代では考えられませんが、それが当たり前だった時代。
家を継ぐどころか、結婚することもままならない、一生「誰かの予備と働きアリ」でいることを求められる立場です。

その又七が、自分の境遇を叫び、姫たちの家臣にしてくれと懇願するシーンがあります。
そのときに又七が泣きながら訴えるのが、先程のセリフです。
この言葉で姫や家臣たちは、民を大事にする国の必要性をひしひしと感じるわけですが、私の胸にも迫るものがありました。

アルバイトにも心があるんだよ
と。

また仕事の話に繋がるのか、と自分でも思いますが(笑)
4月からの新しい上司が、どうやらバイトのことは見えてない人なので、モヤモヤしているところでした。
(いや、もちろん現実には見えてるんだけど。一応、私、実態があるんで)
私と年齢が近いわりには正規とバイトの線引がはっきりしていて、バイトは戦力にならないものとして扱っているのを感じています。

正規のオマケ。
正規がやるには簡単すぎるものをバイトがやる。
長くいてもバイトは新人よりも下。
そういう扱いです。

実は私も、最初の頃はそれで当たり前と思っていました。
しかし、仕事を覚えて、バイト以上のことができるようになれば、周りも「戦力」として扱ってくれるようになります。
しだいに、「バイトは戦力にならない」「人員の数に入らない」と言われるのは悔しいな、と思うようになりました。
許される範囲でしか頑張れませんが、それを10年以上かけて体現してきた結果、バイトでも個人として扱ってくれる同僚や上司が増えて来たのです。

そうすると、仕事をすることに手応えを感じますよね。
みんなの先を読んで仕事をしよう、なんて思って、みんながどんな仕事をしているのかアンテナを張ったりします。
その結果喜んでもらえたり、信頼してもらえたりすると、それが報酬の代わりになります。(階級も給料も上がらないから)
自分で、自分の立場と信頼を勝ち取った、という自負がありました。

まぁ、それをあっさりひっくり返してくれたやつが現れたり、バイトをひとかたまりにしか見ない今の上司のような人が現れます。
今まで10年以上かけて頑張ってきたのは、なんだったんだろう……と、放心状態になり、結果、精神障害を発症しました。

バイトだって心があって、考えて仕事をしたり、気を使ったりしている。
なんでそんなことが解らないのだろう。

この2年間ずっとそう思って来たので、又七のセリフが突き刺さったんだと思います。

どんな時代にも、どんな世界にも、同じように自分の存在を認めてほしくて涙を飲んでいる人たちは、きっとたくさんいたんだろうなと思うと、そういう人たちに向けた言葉を発していきたいと感じた舞台でした。
(このために「なんか解らんけどこの舞台観たほうがいい!」って思ったのかも?)

その又七。
最後には、結局姫たちの家臣になることよりも、自分たちの貧村に帰ることを選びます。
姫たちは御家を再興でき、何度も裏切りつつもその手伝いをした又七たちは、報奨金をもらうことができました。
荷を運ぶということくらいしかしていない又七たちに、なんで報奨金を与えたんだろうか、と観た直後は不思議に感じていました。
しかし、それは姫や家臣たちの優しさ戦ばかりしてきた自分たちへの戒めだったのではと、今は思っています。
きっと姫や家臣たちは、又七たちが裏切りかけたことに気づいていたと思います。
だけど、又七が涙ながらに叫んだ「小作の三男坊にも心がある」という言葉に、これが本当に救わなければならない人たちの訴えだと、心を動かされたんだと思います。
抜け出した村に錦を飾らない限りはもう戻れない彼らを手ぶらで帰すわけにはいかないし、少しでも村が栄えるようにと。
これは現代で上に立つ人たちにも必要な考え方なのでは、と感じています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本日も相棒・MacBookAirミッドナイトからお送りしました。
また次の記事でお逢いしましょう。

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