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行き詰まると行くところ

みなさんは人生に、日常に行き詰まったとき

決まって行く場所はありますか?

私は昔住んでいたある街の、小さなカフェに足を運びます。

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幡ヶ谷駅を地上に出て、中華屋さんに入った。

春の清々しい陽の合間に訪れる、分厚い雲に霧のような雨の日。

一度も行ったことがなかったが、この日はチェーン店でもタイ料理でもない気分で
目に入った中華屋さんに入った。

ハワイ旅行帰りの母は、店内で飛び交う中国語に、

-まだハワイにいるみたいだわ

と呟いた

狭い店に目一杯の会社員。

私も6年前は1時間のランチタイムでいかに美味しいものを食べるか、それが毎日の楽しみだった。

暇つぶしのSNSも3周くらいし、テレビから流れるワイドショーで3ネタくらい見守ったのち、ラーメンが運ばれてきた

隣に座る70代くらいの4人組がゴルフの話をしている

-あそこの社長は最近忙しいらしいわよ、全然顔出さなくなったもん

打ちっぱなし練習のあとに人の噂話をしながらみんなでご飯を食べるのはさぞかし幸せな時間だろう

お会計を済ませ、外に出た

雨は上がり、分厚い雲だけが私たちを覆い被さってくる

さて、いきますか

かつてなかった和食屋さんや、貝殻を店頭に飾った居酒屋が並ぶ

歩き始めて5分

小さなカフェはいつも通りそこにあった

この木と隠れ家のような雰囲気。
少しの湿気が余計に幻想的な空間へと仕上げてくれる。

いつもの女性が柔らかい表情と優しい声で出迎えてくれた

-いらっしゃいませ

母との会話も忘れ、しばらくぼーっと店内にいるクリエイター的な背格好の人々を眺めながら
贅沢な時間を過ごす

かつてはこの東京の熱高い活気に押しつぶされ、地元に戻りたいと何度も思った

でもそこで過ごした4年が、今の私を作ったのだ

大丈夫、自信を持っていい

東京の波にのまれ、先輩との飲み会もなんなくこなし、クレーマーのお客ともなんとかやってこれた

あのときに戻れるこの場所で

なんでもない自分の20代、
いや今よりもっと意欲的で怖いもの知らずで不器用だった自分を思い出し、
なんとなく勢いを失った今の自分を鼓舞するのであった

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