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コンサートのチラシの作り方 〜デザイナー目線からお願いしたいこと〜

チラシの作成依頼をいただくことはとても嬉しいことですが、「できれば、こうして欲しい…」と思うことが実は色々とあります。
私は専業デザイナーではないからこそ、クライアント側、デザイナー側の双方の立場を経験しているので、あなたが「良いクライアント」になり、効率よく、クオリティの高いチラシを作成するためのポイントをまとめてみました。
これで、デザイナーとも末長く良い関係が築けること間違いなしです!


【1】必要な文字情報を“ひとつに”まとめる(重要度:★★★★★)
クライアントにとっては一世一代の大イベントでも、デザイナーにとってはそうではありません。同時に複数のコンサートを手がけているという状況も多々あります。(公演日すら記憶していないことも、しばしば)

口頭で言われたこと・・・
ごめんなさい、忘れてしまいます(;_;)
バラバラと送ってきたもの・・・
ごめんなさい、見失います(;_;)

必要な情報は「ひとつにまとめて」「メールで」送ってもらえるだけで、作業の効率が大幅にUPします!そしてミスを防ぐことができます。
「メールで」というのは、LINEやメッセンジャー等は情報を保存できないし後から探しにくいので、好ましくないです。メールは検索機能もありますし、フォルダ分けやフラグ付けなどデザイナー独自のルールで整理がしやすいです。(そもそも、仕事のやりとりはメールが基本)

個人的に最高なのは、Wordなどのワープロソフトに原稿をまとめて、メール添付で送ってもらうことです。そのままデータをPCに保存することができますので、投げキッスしたくなるくらい喜びます。
もちろんメール本文に記載する形でも構いません。ワープロソフトは互換性の問題もあるので、相手のPC環境が不明な場合は、メール本文への記載の方がむしろ安心かもしれません。

稀に親切心で(?)PDFで送ってくださる方もいますが、コピペができないので、恐ろしく不便です。PDFにはしないで!!


【2】必要な文字情報を“完璧に”揃える(重要度:★★★★☆)

これは、私が専業デザイナーではないからこそ(音楽の知識が多少ある)、お相手も油断するのだと思いますが…
原稿は、そのままチラシに反映されるという大前提で用意していただければと思います。

例えば「ベートーヴェン」とチラシに書きたければ、原稿に「ベートーベン」とは書かないでください。
そんなことくらい分かるだろう!と思われるかもしれませんが、デザイナー側の気持ちとしては、自分は主催者でも何でもないので、どちらの表記にするか決定する権限がありません。

もう少し細かい話ですと、
・ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調 作品67
・ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」
・ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調「運命」
・ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」
・ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調 Op.67「運命」
など、一つの曲に対しても書き方が色々とありますので

「曲は、ベートーベンの運命」

とだけ言われると、困ってしまいます(+_+)

デザイナーが請け負っている作業は、デザインをすることです。
曲名、出演者名を中心に、原稿は責任を持って用意する、それはクライアントさんへ是非お願いしたいことです。

なお、私はやはり音楽業界の人間ですので、頂いた原稿に間違いがないかを基本的にはチェックしています。したがって、はじめから原稿をきちんと揃えてもらえれば、ダブルチェックになりますのでお互いに安心です♪

原稿作りの参考に!
コンサートのチラシの作り方 〜原稿作成は、この項目を埋めればOK!〜

以上の2項目は、演奏家さんから直接依頼を受けたときに80%以上の確率で起こることです。笑
もし「今までそんな面倒なことをしたことがない」のであれば、それは間にいる事務所の方などが、綺麗に体裁を整えてデザイナーへ依頼してくれていたのです。


【3】「とりあえず」は、なるべくしない(重要度:★★★☆☆)

Illustratorなどのデザインソフトの仕組みや操作を知らないと分かりづらいことだと思いますが、「とりあえず」が、全然とりあえずじゃない場合があります。(これは、私もデザインソフトを使うようになってから、これまでデザイナーへ随分と無茶振りをしたなぁと反省しました)
また、作業上の問題だけでなく、デザイン上の問題で大きく計画が狂う場合もあります。

・とりあえず、このプロフィール入れておいて
→私は、デザインの要は「バランス」だと思っています。入れる文字数を見て、写真の大きさや、その他全体のバランスを考えてデザインを組んでいきます。もちろん多少の修正は問題ありませんが、文字数が極端に変わったりすると全部のバランスを変えなければならず、「ふりだしに戻る」で涙が出ます。

・とりあえず、この写真
→これは場合により…で、写真加工が必要だと「とりあえず」では済まないというパターンです。写真の加工、例えば人物を切り抜いて別の背景を入れている場合はかなりの手間がかかります。

・とりあえず、デザインを2パターン見たい
→これは全然とりあえずじゃないケースです。2公演分デザインするのと変わりません。

色々なケースがあるので一概には言えませんが、「とりあえずこれでお願いしておいて、校正の時にどうにかしよう」という発想はデザイナー泣かせの元です。

しかし、クライアント側にだって事情があったり、デザインの不安もあることと思います。
解決策はとても単純です。早い段階で、何でもデザイナーに相談してみてください。
あらかじめ、ここは変わるかもしれないとか、こんなイメージにしたいとか、コミュニケーションがしっかり取れていると、お互いに「こんなはずじゃなかった!」というトラブルは避けられるはずです。


【4】校正は「修正した箇所」以外にも注意(重要度:★★☆☆☆)

デザインデータ見て、修正希望を出して、改訂版のデータがきました。
よし、言ったところがちゃんと修正されてるからこれでOK!校了!

と、思っていませんか?思いますよね。私も思ってました。
これはなかなか説明が難しいのですが、一つのデザインデータは意外と複雑な作りになっており、例えば文字を一文字直すのにも、メールのように該当箇所をクリックして消して打ち直して終わり、とはいかない場合があります。思いもよらないところが色々と連動していたりして、一文字変えたせいで一ブロック調整し直し!みたいなことも起こったりします。

そうすると、修正箇所じゃないところ=さっきまで問題なかったところが、おかしなことになっちゃうことが、あるんです。

デザイナー側はそういう仕組みを理解しているので、細心の注意を払って修正して改訂版データを出しますが、どうしても見落としてしまうこともあります。(特に急ぎの案件で焦ってるときなど)

デザイナーは文字をフォルムとして捉えており、情報として記憶しているわけではないので、作ってる真っ最中のチラシの出演者名すら覚えていないこともあります。
その点、クライアントはデザイナーよりも情報が頭に入っているので、おかしな場所の「違和感」に気が付きやすいです。また、デザイナーよりもそのデザインを“見慣れていない”ので、やはり「違和感」に気が付きやすい。
私の経験上、自分がクライアント側にいるときの方が圧倒的に間違い探しが得意です。

なので、できるだけ、校正では毎回全体をチェックすることをお願いできると助かりますm(_ _;)m
ミスを責めたり、責任を押し付けあったりせず、力を合わせて間違いのないものを作ろう!という協力的な姿勢でいてもらえると、デザイナーはとても嬉しいし、モチベーションも上がります。


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クライアント側、デザイナー側の両方の立場を日常的に経験している私が思うことを書いてみました。
専業デザイナーであれば、もう少し事情が違う部分もあるかもしれません。

※ちなみに、私がコンサートマネジメント業務を請け負っている一環でチラシを作成している場合には、基本的には上記の業務も自分が責任を持ってやるようにしています。


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長澤 彩(クラシック音楽コーディネーター)
Website >> http://aya-nagasawa.com
Twitter >> https://twitter.com/aya_nagasawa

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