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SHIROSEが『彼女にしか見せないタトゥー』で魅せる、イマとイママデ

9月20日にリリースされた『彼女にしか見せないタトゥー』。WHITE JAMのメンバーであると同時に、クリエイターとしても名を馳せるSHIROSEの1st アルバムだ。

彼のキャリアを考えるに「え、今作が1st アルバムなの!?」という感じなのだが、聴けば聴くほど「今である必要があった」と実感させる作品になっている。

兎にも角にも白勢貴仁が濃縮されているのだ。

作詞・作曲・プロデュースにおける面もそうだし、もちろん人としても。音楽好きもSHIROSEファンも、間違いなく最低でも1回はニヤける1枚となった。

今回はブログの記事をもとに彼の恋愛歴を根掘り葉掘りして、それぞれが誰に向けて作られた曲が整理すると共に、なぜアルバムを発売するのが「今である必要があった」のかを紐解いていきたい。

戦略的な公開順

そもそも収録曲を公開する順番からして、とても戦略的だ。クリエイターSHIROSEとしての強みが出た「Tattoo」、強気で攻めなサウンドの「磁石」、そしてタイトル曲になっている「彼女にしか見せないタトゥー」。キャッチーな作品でフックを作り、実力を示す楽曲を出し、ファンの期待を煽るナンバーを投下する。

おそらく、真打は「アルコールと、セックスと、けいれん。」だろう。ファンが喜びそうなセリフが入っていると共に、ライブ会場で盛り上がりそうなコール&レスポンス。リリースしてからの反応が盛り上がりそうなキラーチューンを残しているあたりが、とても憎い演出である。

出会いと別れが生んだ6曲

『彼女にしか見せないタトゥー』は、本人も言っているように最近した恋愛や失恋 火遊びの恋からできたアルバムだ。つまり、ひとつひとつの楽曲が、SHIROSEの恋愛歴と密接に関わっている。過去に「火遊びから、引火していくんだよ、恋は。」なんて名言を残しているくらいなので、”火遊び≠本気じゃない”という方程式が成り立たないのがややこしいところなのだが、歌詞や彼の発言から照合してみようと思う。

まずは、ここ最近の恋愛歴の整理だ。

2019年3月  「9つも離れた君との恋」リリース
2019年5月7日 彼女は今までで9人(それっぽいの存在は5人)
2019年5月9日 彼女にしたい子が少し前までいた
2020年2月    少し前まで恋をしていた / 彼女はいない
2020年9月    彼女は今までで10人(年下5 年上4)
※ブログ参照

2020年2月の時点で、今までの彼女の人数を「9人か10人。小学校時代あわせていいなら」と濁しているのが気になるところだが、さらってみるとこんな感じになる。

おそらく「9つも離れた君との恋」で歌われている君と、2019年5月時点の「彼女にしたい子」は同じ人物だろう。さすがに1年前を”少し前”と表現はしないと思うので、2020年2月の時点で「恋をしていた」と語られているのは別の相手だと思われる。

つまり今回の作品の基軸になっているのは、9つ離れた君恋をしていた相手のふたり。また、「Tattoo」について「もしファンと恋に落ちたらをテーマにした」と話しているので、そこにファンを加えた3人が『彼女にしか見せないタトゥー』で描かれている相手だ。

アルバムを構成する3人の存在

さて、それでは歌詞をもとに、どの曲が誰を対象としているのか紐解いていきたいと思う。

1曲目である「磁石」。Twitter上では「自己紹介ソングを作りました」などと話しているが、おそらくこれは恋をしていた相手に向けてつくられたものだろう。
<ねぇ、なりたかったよ。君の人に。><俺ってただの、浮気相手だった。>というフレーズから、恋人ではないという関係がうかがえる。また、<最初は君が 好きになったのに 気づけば僕が 片思いしてる。>から、相手のことをSHIROSEが好きでしょうがないということがわかる。

この曲と関係してくるのが、3曲目の「Sex Friend」だ。<俺はBoyfriend?>という歌詞は、彼らの関係が恋人ではないことを表す。セックスフレンドとだけきくと、SHIROSEがセフレを語った歌のような印象を受けるが、実際は真逆だ。「自分はセックスフレンドだったんじゃないか。浮気相手だったんじゃないか」と顧みる曲こそ、「Sex Friend」なのである。

さて、残るは「Tattoo」「9つも離れた君との恋」「彼女にしか見せないタトゥー」「アルコールとセックスと、けいれん。」だ。「Tattoo」はファンを対象にした曲、「9つも離れた君との恋」は9つ離れた君を対象にしているからいいとして、残り2つがいかんせん判断がつきにくい。

「アルコールとセックスと、けいれん。」は、<あのね、今夜はキスまで。>と駆け引きに余裕があることや、<君は、「好き」っていう病気みたい>と好かれている状況を俯瞰していることから、相手のほうがSHIROSEを好きでいることは間違いないだろう。
しかし、この曲でもハッキリとした関係性は出てこない。断言する要素が少ないのが心苦しいのだが、作品のコンセプトが”最近した恋愛”であることを考えると、恋をしていた相手がSHIROSEに夢中だったころを描いた曲なのではないだろうか。

また、語り口調が独特な「彼女にしか見せないタトゥー」でキーとなるのは、<はじめっから好き。全部ね。>だ。このリリックは、「Tatoo」の結びとなる<全部、好きだよ。>と繋がっているように見える。さらには、<もっと、ちゃんと言って。>や<好きって言って?>など、好きをせがむ描写に重なるところもある。
このことから、「彼女にしか見せないタトゥー」もファンを彼女だったら…と見立てた1曲なのではないだろうか。

9つ離れた君の歌
「9つも離れた君との恋」
恋をしていた相手の歌
「アルコールとセックスと、けいれん。」「Sex Friend」「磁石」
ファンを対象とした歌
「Tattoo」「彼女にしか見せないタトゥー」

キャッチーに潜ませた挑戦

ここまでSHIROSEの恋愛歴を通して作品を仕分けてきたが、今作で語るべきは恋愛というキャッチーなテーマを通して、彼自身がやりたいことをやっているところだ。

ヒットチャートに入るような曲を作れる彼が、アルバムには海外を意識した攻めのビートやサウンドで臨んでいる。

「Sex Friend」にはアヴリル・ラヴィーンの『Head Above Water』が香るし、「アルコールとセックスと、けいれん。」のサウンドにはビリー・アイリッシュの「bad guy」の気配。

WHITE JAMとして、みんなで楽しめる曲を作っているからこそ、SHIROSE名義では流行っているやウケるとは違った、サウンドやビートに挑戦しているのだ。


ターニングポイントになる4曲

続いて、セルフカバーに選ばれた曲についても触れていこうと思う。

もはや売れっ子作家といっても過言ではない、SHIROSE。2019年のプロデュースワークだけでも、凄まじい量がある。

数ある提供作品のなかで選ばれたのは、「CHUDOKU(Kis-My-Ft2)」「ワガママ(Nissy)」「Wedding dress(東方神起)」「Perfect (AAA)」の4曲だ。

新曲として収録される作品は、最近の恋愛(&彼の今のモード)にスポットライトを当てたものだが、カバーの選曲は彼のターニングポイントとなったものといっていいだろう。

「CHUDOKU」は作家としてSHIROSEが、ベッドソングに自信を持つきっかけとなった1曲。日本では生々しい表現や具体的な性描写などが、あまりよしとされない傾向がある。(ポップスだとなおさら)しかし、そういったナンバーをKis-My-Ft2が歌いこなすことにより、艶っぽい曲がもっと評価されるべきであることを世に知らしめたのだ。

また、「Perfect 」にいたっては、作家・SHIROSEの可能性を広げた1曲であることはいうまでもない。無名時代の彼に声をかけ、チャンスの光を刺した最初のメジャーアーティストこそAAAであり、彼らのチームだ。

■SHIROSEの制作した楽曲
AAA / Last Love(詞曲)
AAA / Perfect(詞曲)
AAA / Still Love You(曲)
Nissy / ワガママ(詞曲編)
Nissy / DANCE DANCE DANCE(詞曲編)
Nissy / Kiss & Dive(詞曲)
Nissy / テレパシー(詞曲)
Nissy / どうしようか(詞曲編)

そして、そこから繋がったNissyとの縁。この出会いがなければ、今回収録した「ワガママ」も生まれなかっただろう。

そして、東方神起の「Wedding dress」。過去のツイートで「ウソツキ」と同じくらい想い入れのある曲と語ってることから、こめられた想いの強さを察するのは難しくない。

結果的に1st アルバムにふさわしい、SHIROSEの軌跡を色濃く記したナンバーが肩を並べることとなった。

イマだからこそな1枚

満を持してリリースされる、SHIROSEの1st アルバム『彼女にしか見せないタトゥー』。イマの彼のモードを知ることができると共に作家・SHIROSEの軌跡を感じられる1枚に仕上がった。

ようやく、ではない。攻めた音楽性にチャレンジしつつ彼の軌跡をたどるには、今でなければいけなかったのだ。

恋愛というキャッチーなものにラッピングされたイケてるナンバーと、確固たる作家性を提示した楽曲をぜひ耳にしてもらいたい。


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