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となりの雑談 EP.1 | 個人的ハイライト

今年2月に始まった、コラムニスト ジェーン・スーさんと、雑談の人 サクちゃん(桜林直子さん)のポッドキャスト番組『となりの雑談』があまりにも良いので、「EP.1はどうだったっけ…?」としっかり振り返りたくなり、文字起こしをしてしまいました。

その中で、個人的にここは印象に残ったなぁ…という「個人的ハイライト」をまとめてみます。

「サクちゃん」って・・・?

番組は、まず「サクちゃんって何の人なんだっけ」という会話から始まりました。

スーさん: サクちゃんはさ、今はモノを書いて本を出したりとか、あと、「雑談の人」っていうことで、雑談をしてるんだよね、いろんな人とね。
サクちゃん: そう。
スーさん: 1人ずつマンツーマンで90分ずつがっつり話すっていうのを 5回とかっていうので、ワンセットでやってるんです。
サクちゃん: そうそう、そうです。
スーさん: で、その雑談を何人…?
サクちゃん: もうすぐ1000人という感じ。1000人ってか、1000回か。
スーさん: 同じ人もいるから、のべ1000回ってことね。

「となりの雑談 EP.1」より

今では「雑談の人」をしているサクちゃんは、20歳になる娘さんがいらっしゃるシングルマザー。娘さんが1歳になるときに離婚をして、またその頃に会社を辞め、自分のお店(クッキー屋さん)を始めることにしたそう。
そのことを「盛大なジャンプだよね!」と、スーさん。
ここから、サクちゃんのちょっと独特な考え方が明らかになっていきます。

サクちゃん: でもね、チャレンジは一つもないのよ。やっぱ「会社員だと(お給料が)足りない」っていう、「困ってるから困らなくした」っていうだけで。
スーさん:それサクちゃんよく言うよね。自分に選択肢がたくさんあるって思ってたわけじゃなくて、最善は選んできたつもりだけど、「自分にはこれしかない」と思ってた、って言ってたよね。
サクちゃん:そうだね。選択肢…「あれもやりたい」「これもやりたい」みたいな、チャレンジとか望みみたいなものは、 あまり私の辞書にはなかったんだよね、たぶん。独立する時もそう。「思い切ったね」って言われるけど、 「もうそれしかない」って思っていた。

「となりの雑談 EP.1」より

なぜ「あれもやりたい」「これもやりたい」という望みを持たないことが当たり前になったのか…という話はまた後の回で出てくるのですが、サクちゃんがクッキー屋さんをやりながら書籍を出版する(「唐突だね」byスーさん)までの話も興味深いものでした。

サクちゃん: 自己紹介ができないから、書き出したの。今までやってきたこととか、 何を大事にしてるとか、どうしたいみたいなことを他人にわかってもらうのに、まず自分がわからないといけないからと思って、自分もよくわかってないから、書き出そうと。
スーさん:できることをね。
サクちゃん: あと、やってきたこと。これをやりましたあれをやりましたっていうこと、単純に。
スーさん:「できること」じゃなくて、「やってきたこと」っていうのがいいね。できることだとさ、数減っちゃうじゃん。「できる」って思えないからさ。だから、やってきたことだと気が楽だね。
サクちゃん: そう、事実だからね、書ける。それが最初だったんだよね、文章を書くって。本当にやったことないから。
(中略)
スーさん:で書いて、noteで。そしたら読者がぼちぼちつき始めて、「そのnoteを本にしよう」ってなったの?
サクちゃん: 本当にテーマも何もなく書き散らかしていて、たまたまその時思ったことをそのまま書く、みたいな。で、書き方もわかんないから、 編集とかさ、構成とかもわからないから、とにかく出たまま書いて、Enter、みたいな感じ。で、その時に、「世界は夢組と叶え組でできている」っていうnoteのうちの一つがすごく反響があって、で、「それをベースに本にしませんか」っていうの(お声がけ)があったので、一冊無理くりまとめた、っていう感じ。

「となりの雑談 EP.1」より

『世界は「夢組」と「叶え組」でできている』は、2017年にサクちゃんが投稿したnoteの記事で、当時話題になり、その後(ほぼ)同タイトルの本が2020年に出版されました。

「夢組」と「叶え組」

幼い頃から、「夢は何ですか」と聞かれても答えられなかったというサクちゃん。夢を持ってない、やりたいことが「ない側」の人に名前をつけたい、という思いがあったそうで。

スーさん:「夢組と叶え組」ってさ、夢があって、それを叶えたいと思ってる人と、夢はないんだけど、夢がある人のそばにいて、 そのお手伝いをする人っていうこと?
サクちゃん:
そうね、それで間違ってない。(自分は)「将来何になりたいですか」とか「 今後の目標はなんですか」とかっていうのにいつも答えられなくて。 そうすると「(夢が)ある人」と「ない人」って。「あるべきものがない」ってなると、やっぱ自信をなくすし、「でも絶対役に立ってんだけどなー」みたいな思いがあったので、そこに名前を付けたいっていうのは一つあって。「ない側」に。「ある・ない」じゃなくて、役割の違いだよね、みたいなことを。

「となりの雑談 EP.1」より

サクちゃん:あとね、いわゆる「夢組」でずっと来た人の苦悩みたいなのも聞いて。夢を自分で言っちゃうと、やらなきゃいけないじゃない。 で、やってみたら「違った」ってことがあるでしょ。(中略)だから、やめどきとか難しいし、「あんなに言ってたのに違ったんだ」っていうことも恥ずかしいし「違った、って認めるのがつらい」って 言ってて、そんなの経験したことないから、「あ、そっちはそっちで大変そうね」っていうこともわかって。意地悪な見方すると、夢って思い込みを宣言させられるっていうことでもあるから。ま、思い込む力が強いと良いこともあるけど、そうやって「信じて進める」みたいなことはいいけど、思い込みって確かに呪いにもなるなと思うよね。

「となりの雑談 EP.1」より

子どもの頃からわたしたちは何かにつけて「将来何になりたいの?」と聞かれがちで、そのたびに適当に答えたり、相手の大人が期待するような答えを察してみたり。大人になってからだって、夢や目標なんてない状態の方が普通だったりするわけです。
でも、そうやって当然のように将来の夢を尋ねられたり、本当に「これが夢です」「こうなりたいです」と、その目標に向かってひたむきに頑張っている(ように見える)人に出会うと、「あれ、自分には何か欠けてるのかな」と思ってしまうことも。

本当に、そうなんだろうか?

サクちゃんは、少なからぬ人たちが抱いていたモヤモヤを「考えつづける」ことで言語化し、夢を持たない人=「叶え組」と名前をつけました。
名前がつくまで、無いもののように、あるいは「二級市民みたいに」(byスーさん)扱われていた存在に名前をつけ、「ちゃんとそこにいるし、やりたいことや夢がなくても、夢がある人たちと同じようにこの社会を生きている」ということを「夢組と叶え組」のnoteで書いたのです。そしてそのnoteは、とてもたくさんの人に読まれ、共感を得たのでした。

信じる力と疑う力

サクちゃんは、夢を持たない自分の性質をこのように自己分析します。

サクちゃん:夢って、その自分がこうなりたいとか、こうありたいっていうことを一旦信じられるっていうことでしょ。「そういうこととして頑張る」っていう。本当かはわかんないけど。 
サクちゃん:その「信じる力と疑う力」っていうことが最近自分の中のテーマなんだけど。(自分は)「信じる力」が全くなかった。 いいものが待ってるとか、未来がいいものだとか、「これになりたい」とかっていう信じる力が全くなかったから、夢を持ってる人たちに、持ち前の「疑う力」で、「違うかもしれないよね」って。「違ったらどうするの」「よくできるね、違うかもしれないのに」って思ってて。
スーさん:「疑い深い」っていうことと一緒?「疑う力」って。 
サクちゃん:悪く使うと、「全てを疑ってかかる」とか「疑ぐり深い」とか、「信用しない」とかになるけど、 「疑う力」のいいところもたくさんあると思ってて。私は疑う力一本で来たから。
スーさん:「疑う力一本できました」って、ちょっとおもしろいね。笑
サクちゃん:信じるが足りなすぎるんだけど、疑う力があるから、例えば、「シングルマザーって、すごく苦労するし、お金もないし、時間もないし、大変だ」っていう。まあ、いわゆる型というか、ぱっと出てくるもの、もうすぐ疑うよね。「ほんとかな?嫌なんだけど。なんかやりようあんじゃない?嫌だったらどうにかできんじゃないか。」(って。)でも、そういう風に、嫌なものを疑えば、いいふうに意地で考えるっていうか。「どうにかできないかな?」って。

「となりの雑談 EP.1」より

「未来がいいものだと信じられなかった」と言うサクちゃんが、「嫌なものすら疑って、いい風に考えていく」という話をした時、この人は一体、ネガティブなのか?ポジティブなのか?と、聴いているわたしの脳内はプチパニック。だけど、すんごくおもしろい人だな、と。そして性質がぜんぜん違うサクちゃんに、いつの間にか共感してしまっていました。

わたしも、例えば「できるわけがない」と言われると「そうかな?」「あなたはそうでもわたしはどうかな?」と(笑)疑うタイプです。

特に育児をしていると何かと型に嵌められやすくて、サイズの合わない服を着せられてるみたいに気持ち悪く感じることが多くて。
「母親は笑顔でいないと」だとか「父親を立てないと」だとか…「母親は家庭優先で」とか「父親は仕事優先で」とか……そういう「古(いにしえ)のどこかの誰かが言っていました…とさ。」みたいな、無責任な、ほんわかとしたものを全部ぶち壊して、ただの「自分そのもの」として生きていきたいと思ってずっと足掻いてきたので、そしてその分無駄な(無駄じゃなかったのだと思いたい)傷をつくってきたので、サクちゃんの言葉に「うんうん、そうだよね」って頷いてしまったんだと思います。

そして最後のサクちゃんの話に、思わず一緒に拳を突き上げそうになりました。

サクちゃん:自分の中のまあいわゆるじゃあ、インナーチャイルド的なものに、「本当はどうしたいの」って聞く時の対象って大体こう「小さくて弱い泣き虫な女の子」みたいなものをイメージするけど、私の場合、出てくるのが結構サンボマスターばりに「うるせえ!」「好きにさせろ!」っていう。
スーさん:インナーサンボマスターで。笑
サクちゃん:そう、優しくて弱い小さな子じゃなかった。笑

「となりの雑談 EP.1」より

わたしの中にもサンボマスターがいる!と思った方は少なくないんじゃないでしょうか。
「うるせぇ!好きにさせろ!」と(心の中で)叫びながら、今日もなんとか暮らしていこう、と思えた初回の「となりの雑談」でした。

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