職人的な声のお仕事:CMのナレーションレックとボーカルディレクター

今日はウェブCMのレコーディングの仕事をしてきました。

普段じゃ絶対出さない声を作曲家さんの要望に応えて演じきる、というなんとも楽しい仕事。
ナレーションもあり、自分のカメレオン精神をくすぐられました。


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私はよくモノマネをします。
それはもちろん、アーティストの声マネだったりもするけれど
レッスンにて、目の前にいる生徒さんのお悩み改善の為のモノマネもしたりします。

たとえば、
ここのひっくり返るような声出したいんだけど、どうやればいいのかわからないとか
この長い音で膨らむような音色が聞こえるけど、何したらこうなるの?とか

生徒さんがピンポイントでアーティストの音色について質問をしてくる時に

生徒さんの状態をマネして、アーティストのマネをするんですね。

アーティストにあって、その生徒さんにない音色、発声の技術を、具体的に、身体的に、トレーナーがレクチャーできる事が重要で。
生徒さんに確かな技術を身につけていただくためにも、トレーナーがマネをし、何がどうなっているかを把握しておかなきゃいけません。
勿論、その時いかに明瞭に伝えられるか、が重要。


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歌のお仕事の現場では、作曲家さんやプロデューサーさんが、そこまでボーカリストへ、ボイトレ的なアプローチで具体的な指示を下さる訳ではありません。
ほとんどの場合、抽象的な表現で提案されます。

「もう少しラップな感じで、息は混ぜて、アタックはあるけど少し暗めの可愛らしい声でやってほしい」

なんて、具体性あるんだけどものすごくイメージ先行型で抽象的な表現を頂いても、笑
クライアントさんには脳裏に浮かんでいる音色が絶対にあるし、私はそれを声という商品として形にせねばなりません。

もちろん、声という楽器は唯一無二の、身体から奏でられる楽器なので、カバーできることに限度もあります。
そもそもの音色、共鳴の仕方は人それぞれです。やはり得意のSweet spotを買ってもらい、お仕事を頂くことのほうが圧倒的に多いし、まぁ幸せでしょう。
(ちなみに私は儚く死んじゃうとか天使が降臨する的なお仕事多めです。笑)

けれど声は、鍛えれば色々なことができますし。自分の声の可能性の振れ幅は、技術を向上させれば驚くほど広がりを見せます。

またそのレコーディングの現場にて、スポットで
ボーカリストさんの音色を導くボーカルコーチや、ボーカルディレクターというお仕事もあります。クライアントさんの理想とする、抽象的な表現で求められる音色を、具体的な方法を用いてボーカルの方に短時間でレクチャーするお仕事ですね。

私は数回しかボーカルディレクターとしてのレック立会い経験ありませんが、
クライアントさんからの言葉を手掛かりにして、目の前のボーカルさんから理想の音色を導き出す過程はとてもクリエイトで楽しかったです。


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今回、15秒のCMで録音したのは以下。

リードボーカル2トラック
(ダブルって言ってボーカルを重ねること)
ハモリ2声部それぞれ1トラック
3秒弱のナレーションの部分1トラック
もろもろ効果音(何の録音でしょう笑)

前日に音を頂いてすぐ録音、なんてことはザラで。基本は耳コピでやるお仕事が多いです。
私の最近の現場は譜面がそんなにないなぁ。
今回は全部で30分くらいで終了。その場でコーラスを即興的につけたりもしました。
さらっと終わったけれど、時間かかる方はもっとかかるみたい?です。
特にピッチと音色は自分が思っている以上に不確かなもの。口の開き方、鳴らすポジションの微々たる変化でまるで変わってしまいます。
耳やハモリの感覚、即興性。。ソルフェージュ的なことなんかも求められてるのかもしれません。

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声ってナマモノなので、思っている以上に安定しません。

自分の日々の身体的、精神的コンディションはもちろん、
そのスタジオの音環境、モニタリング(自分の音の確認)
エンジニアさん、作曲家さん、プロデューサーさんとの信頼感、、、
こんな些細なことでも、不安定になったりします。また、これら全て整っていたとしても、上手くいかないことだって当然あります。

イメージがディレクターさんやクライアントさんと共有できていたとしても、ピンポイントで求められる音を出せることは本当に技術が求められると感じます。
やはり、経験や技術のおかげで時間の効率化ははかれるんですね。

短い時間に、ニュアンスという抽象的なものへ想像を働かせつつ、実際の音色として身体をセットアップするそれは、
職人的な身体の使い方だなぁと、やりながら感じました。

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そんなわけで今回はナレーション、ボーカルレックのお仕事と
ボーカルコーチ、ボーカルディレクターのお仕事のお話でした。

歌い手と言えどいろんな声のお仕事があるものです。
我はなんぞや、と個性と向かい合うのも好きな一方で
求められる音色をピンポイントで奏でることも好きです。


こんな仕事増やしたいなー。
アイドルのボーカルディレクターとかやりたいなー。

お仕事募集中でーす。笑

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