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ハイジ

本日は、ハイジ。
日本ではアニメーションにもなり「アルプスの少女ハイジ」として幅広く知られていますが、以外と原作には出逢っていない方が多いのではと思います。私も成人過ぎてからの出逢い。幼稚園教職時代、園の図書室で手に取ったのが最初でした。単行本でとても分厚く重たかったので、これは・・・・読み終えるには日数がかかるかなと思って借りた夏の夜。読み始めるとハイジの生きる世界にぐっとはまってしまいました。先日のEテレの100分de名著がシュピリでした。とても良い特集で多くの方にハイジの世界が届いたのではないかと嬉しくなりました。

児童文学には数多くの素晴らしい作品があります。児童と名のつくものですが、大人にも読んでほしいものが沢山です。その中の一つがハイジです。


幼きハイジはまだ5歳。両親は亡くなりアルプスの山に住むおじいさんと過ごすことになります。頑固なおじさんから多くを学び教わりそして感じてハイジは育ちます。そこには大自然があり、その姿、色、音からもハイジは多くを与えられます。
アニメーションにも表現されていましたが、その一つにもみの木があります。風の吹く日に「ハイジが何にもまして心ひかれたのは、小屋の裏手の三本の古いもみの木のざわめき」。ざわめきと表現されていますが、この美しい自然の姿をながめきくことがどんなに素晴らしい時であるか。「ハイジ」を読んでいて、とても好きなところです。

ハイジの素直な心は、彼女自身が育つと共にその周りにいる大人たちも育ててくれます。育つという表現が正しいのか・・・・、誰もがもっているはずの忘れていた心を思い出させてくれているのかもしれません。そばにいる人のためにいつも一生懸命。ハイジの元気な明るさは力を届けます。
そんなハイジだからこそ、試練の時に神様は「おばあさま」という贈りものをくださったのでしょう。どんな過ちも間違えも汚さも弱さも悲しみも苦しみも、大きく包み受け取ってくださる存在。そして導いてくださる。
私たちの側にもきっといるはずの「おばあさま」。

おばあさまは、神様の存在を苦しみの中にあるハイジに伝えます。神様を知るということは見えないもにを信じる心へと繋がります。かたちあるものではなく心で感じるものの大切さ。そして、ひとつひとつには時があり、ふさわしい時に出逢い与えられる。ハイジは見えない神に祈ることを通じて心を育て前を向けるようになります。

他にも、ペーターやペーターのおばあさん、ロッテンマイアさんやセバスチャン、どんな出逢いの中にも人の面白さ弱さあたたかさがそこにはあります。頑固なおじいさんが柔らかい心を取り戻せたように、ハイジの周りにいる人々が変わってゆく姿。ハイジ自身の成長と共に大人たちも育つ、人と人との共に過ごす事の意味がそこには大切に描かれています。
一つ一つの出逢いを自分の生きる力にできるか、それは自分次第なのかもしれません。


挿絵は、パウル・ハイ。
線画で見事にもみの木やアルプスの山々を表現しています。登場人物一人一人も、その個性作者の文章表現にそっとよりそって描かれています。ペータのおばあさんに会いに行ったハイジを迎えに行った帰り、あの頑固なアルムのおじいさんがハイジを布団にくるみ腕に抱えあげて山へ戻って行く優しい姿が描かれたページがとても素敵です。


贈り物。ほしいものを贈れた時の相手の笑顔は嬉しいものです。
でも時には「読むいいもの」はいかがでしょう。
子どもにはもちろん大人にも是非読んでいただきたい一冊です。     ハイジおすすめです。


                 ハイジ           
                 ヨハンナ・シュピリ    作
                 矢川澄子         訳
                 パウル・ハイ       画
           福音館書店   初版1974年12月10日発行

岩波少年文庫からも、上田 真而子訳で出ています。


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