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female #001

female #001
いずみさん/20代/学生


「寂しさ、かなあ」と、いずみさんは言う。
「女性の行動原理の根っこにあるのって、“寂しさ”であることが多いと思うんです」


 暑くなり始めた5月の中頃にお会いしたいずみさんは、現在大学4年生。卒業研究と就職活動の真っ最中だ。造園の研究をしているそうで、撮影の場所の希望をお聞きしたところ「自然のあるところならどこでも」とのことだったので、ちょうど見頃だったポピー畑で撮影させていただいた。

「なかなか進路が決められなくて。やりたいことが決めきれないのに、就職してしまったらやることが必然的に絞られてしまうから…難しいですよね。そんな感じなので、色んな所を受けています」
 その年頃らしい悩みをこぼす彼女だったが、不思議と弱い感じはしなかった。終始、柔らかい笑顔で接してくれたからだろうか。小柄な身体のなかに、しっかりとした土台があって安心できる、そんな空気を持った人だ。

 人を安心させる笑顔、ふわりとした空気。そんな優しい印象を持っていたのだが、撮影した写真を見てギャップに驚いた。
 実際お会いして感じた柔らかい表情の中に、とても大人っぽい表情のものが混じっている。ピンとのびた背筋に、力のある視線。彼女の中にある芯の強さが表れている気がした。私は少し面食らって、どう写真を仕上げたら良いのかしばらく迷ってしまった。少なくとも、フワッとした砂糖菓子のような写真にしてはいけないと思った。

 そんな強さを感じさせるいずみさんが、「女性」というキーワードから「寂しさ」という言葉を連想したことはとても興味深い。
「自分のことを振り返っても、友達の言動を見ていても、やっぱり“寂しさ”が根底にあるような気がします。“寂しい”と口にするのも、男性より女性の方が圧倒的に多いですしね。男性はそういうことを言いづらい、ということもあるかもしれませんが、実際にそう感じている割合も、女性の方が多いのじゃないでしょうか」

 “寂しい”という、ある種弱さを感じさせる言葉。でも、その弱さを自覚できることもまた、いずみさんの強さなのかもしれない。


2017年5月/いずみさん/photo&text: アベアヤカ

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