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嫉妬の鬼だった私が、その気持ちを乗り越えて、穏やかに描き続けられるようになるまで

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あの頃私は、嫉妬の鬼だった

私には一時期、Twitterが見られない時期がありました。
なぜならそこには、売れてる漫画がじゃばじゃば流れてくるからです。

2018年、私は初めての連載漫画の打ち切りを経験しました。
それはもう、脳が焼けて、体の一部がもぎ取られるような苦しみでした。

SNSには、世の中のイケてる人たちの活躍が日夜怒濤の勢いで流れてきます。
打ちきりを経験し、心がもんのすごく参っている状態でそれを眺めるうちに、私の中にはモヤモヤと黒い気持ちが湧くようになりました。

売れてる人…バズってる人…成功して打ち切られずに、楽しく好きなものを描き続けている人が…憎い!!!

相手の人たちのことは全然知らないのに、タイムラインに流れてくるなんかちょっと人気ありそうだぞ、という情報を一瞥しただけで、無差別に妬みを抱く…私は嫉妬の鬼と化していたのです…!!
(自分で書いていて、自らの器の小ささにとても恥ずかしくなってきました…おちょこサイズやん…)

私の場合誰かに嫉妬してしまうと、「キーーーッ!何なのアイツ!トゥーシューズに画びょう入れてやるわ!」と怒りの矛先を相手に向けて攻撃するのではなく(これダメ絶対)、「ウッ、すごっ…羨ましい…それに比べて私は…」と、自分を攻撃してしまうタイプでした。

「あの人に比べて、私はなんてダメなんだ…」
「私には才能がないんだ…」
「どうせ私の描くものなんて…」
こういった気持ちが募っていった結果、一時は全く漫画を描くことができなくなってしまったこともありました。

「どうせ私なんて…」という思考は、一見自らを省みる謙虚な姿勢にも見えますが、その後に改善していこうとする意思がない場合は、ただ自分を追い込み、落ち込ませて、自分で自分を傷つけているだけの自傷行為なのではないかと感じています。

前向きになる気力がわかない時も勿論あると思うのですが、要は「どうせ私なんて…」と思って自分をいじめてもいいことないよ、ということです。
ただでさえドロドロした嫉妬心で苦しんでいる時に、自分で自分に「お前ダメだろ!!」と追い討ちをかける必要はないんじゃないかな~と思うのです。

嫉妬は、誰にでもある自然な感情なのだそうです。
ですが、行き過ぎると自分を傷つけるものになります。言うまでもないことですが、嫉妬心から他人を傷つけるなんてのは、もってのほかなNG行為です。

そんな過剰な嫉妬から抜け出すきっかけとなったのが、漫画にあった「私が描きたいのは、これと同じものなのか?」という問いでした。

今回は、より具体的に、嫉妬を乗り越えて、相手のことを考えている時間を自分のために使えるようになるための、私なりの解消法を紹介してみたいと思います。

見失った視点を、自分に戻してあげる方法

ここからは、嫉妬に狂って「ウッ、それに比べて私なんて…」の穴に落ちてしまった際の抜け出し方を、順を追って書いていきます。

こういったポイントを意識して実践するようなり、お蔭様で現在私は、暗闇に落ちることなく精力的に創作活動ができています。
なかなかモヤモヤが晴れない…という方は、ぜひ真似してみてね~。

1.まずは、自分が「嫉妬しておるな」と認識する

恐ろしいのは、「自分が嫉妬している」ということに気づかずに、相手への理不尽な怒りや自己を卑下する苦しさ、自己憐憫の悲しみなどの感情に呑まれて、思考停止状態になってしまうということです。
悶々として、もうなにも手につかない…!というあれですね。

なので、まず第一には「あっ、今モヤっとした!」と自己認識するのが大事かなと思っています。

嫉妬心が発生する時は、SNSの投稿を見たとか、成功した話を聞くとか、何かしらの出来事があると思うのですが、そこでグワッと自分の感情が熱くなる感覚を見逃さないことが大事なのです。
この、「自分の気持ちを観察する」ということは、日常的に意識して訓練することで、誰でも出来るようになると感じています。

2.自分の目標と、置かれている条件を思い出す

漫画の中で「私は本当にこれと同じものが描きたいのか?」という問いが出てきましたが、これは「私が欲しているものは、今嫉妬している対象とは異なる」と認識するための投げ掛けです。

例えば漫画家であれば、「売れてる」とか「バズってる」というぼんやりした状態だけを見て嫉妬してしまう…なんてこともあるかと思います。
そこで、これをより具体的にして、「ほんとに嫉妬するくらいほしいのか?」を検証してみるのです。

私の場合は「1960年代のイギリス・ロンドンを舞台にした探偵とその助手が主人公のバディ物漫画を描いてて、単行本が10万部売れていて、私より製作時間が少ないけど睡眠時間は多くて心身共に健康で家族とも友人ともめっちゃ良好な関係を築いている」という相手がいれば、ハチャメチャに嫉妬してしまうかもしれません。
でもこんな人、恐らく地球上にはいないですよね。(い、いるかな…笑?)

嫉妬しているときって、無意識に相手を自分と同じ土俵に乗っけてしまっている気がします。
しかし実際のところ、相手と自分は、目指しているものも、置かれている条件も異なるのです。

上の例でいうと、私が描きたいもの、すなわち私が一番感動し、かつ萌えに萌える作品というのは、私のツボを知り尽くした私自身にしか生み出すことができません。つまり、他者では代替不可能なのです。
その上「私より製作時間が~」以下の部分は、ネット上では到底知りうることができません。
分からないものを想像して比べて、怒ったり落ち込んだりするなんて、なんだかまるで意味のないことに思えてきませんか?

また漫画家の場合、大抵「売れてる人」や「上手い人」はその辺の人より沢山描いて試行錯誤しているし、SNSで目立っている人は、ほとんどがその裏では誹謗中傷も経験していると感じています。

そのあたりを都合よくスルーして、「おいしそうな結果」だけを欲しがり我を忘れてしまうのは、愚かなことかもな~と考えるようになりました。
(時々「条件」の部分…頭や顔がいいとか、お金持ちに生まれついたとかを妬む人もいるけど、それはもう、人類はみんな自分が持ってる装備で戦っていくしかないんだから、考えても詮ないことだよね…と諦めるのが吉だと思っています。)

私が欲しいのは、本当にこの人と「全く同じ」ものなのか?
一瞬だけ立ち止まってそう考えてみるだけで、ほとんどの場合は冷静さを取り戻せると感じています。

3.「今」やることを考える

こんな感じで「嫉妬なんて時間の無駄だぞ☆私は私なんだから、今を生きよう!」みたいなといわれても…無理!!!
このモヤモヤは抑えられない…この気持ちは私の意思を超え、ハラワタから自然に湧き上がってくるものなのだ…!!!というそこのあなた、分かります。
言うは易しで、頭ではわかっていても、気持ちを切り替えるのはそんなに簡単なことじゃないですよね。めちゃくちゃわかります。

そんな時に手っ取り早いのは「とりあえず手や体を動かして、別のことをする」というこだと思っています。

私の場合は、いらんことを考えそうになったら本を読みます。
ネットはたくさんの情報が入ってきてしまうので、そこだけに没頭しやすい本の方が好きです。
あれこれ悩まずスルッと移行するために、常に読みかけの本や読みたい本を持っているということが大切だなと思っています。
晴れた日なら、好きな音楽を聴きながら、散歩にいくのもいいですね。

仕事中であれば、とにかく「目の前の作業」に没頭します。
人間って恐らくそんなに器用に出来てなくて、一度にたくさんのことはこなせないんですよね。
「今やるべきことを、一字でも、線一本分でも前に進めよう」と思って目の前の作業に取り組むと、意外とそのまま作業の方に頭と体を切り替えることができたりします。

あらゆる手を使ってドロドロした嫉妬から「自分の気をそらす」というのも、大事な「スキル」ではないかと思っています。

4.そのうち大丈夫になるから、焦らずいこうぜ

ここまで偉そうに「私はこうして嫉妬心を克服しましたYO~!」などと語り散らかしてきましたが、私自身、すぐに切り替えができるようになったわけではありません。

誰彼構わず嫉妬している自分に気付いてから、一年くらいかけてゆっくり、嫉妬する自分を俯瞰したり、そこから気持ちを切り替える練習をしてきました。
それでも低気圧の時なんかは、今でも人の評判にものすごく落ち込んでやたらとSNSを開いてしまったり、不安になって夜眠れなくなったりもします。

人間はよいことでも悪いことでも「変化する」ということに物凄くストレスを感じるんだそうです。
だから「嫉妬しない私になる」ということも、いい変化のはずだけど、ものすごく負荷のかかることなんだと思います。

それでも、うまくいったりいかなかったりを経験していくうちに、徐々に自分の気持ちをコントロールすることができるようになっていくのだと思っています。

私も今でも「ぐえぇ~うらやましっ…」と思ってしまうことはもちろんありますが、以前のように、それを発端に自己嫌悪に陥って筆が完全に止まってしまうということはなくなりました。
やっぱり攻撃性は、自分にも他人にも持たない方が楽だなぁ~と感じます。

【もう一本、嫉妬に関する記事を書いたよ!】

https://ayakatakeuchi.com/n/n6333ade88697

お友達の心療内科医・ゆうすけ先生に教えてもらった「嫉妬」の仕組みと、私が実践している「それに比べて、私なんて…!」という気持ちが楽になる考え方を紹介しています。
気になった方は、こちらも読んでみてね。

【コミックエッセイ本も出てるよ!】

冒頭の漫画が収録されたコミックエッセイの単行本が出ています。
モヤモヤがスーッと軽くなるエピソードが満載です。

気になったら、こちらもどうぞよろしくお願いいたします。

【マガジンやってます】

本音を綴ったコミックエッセイも満載のマガジンも作成しています。
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