4. ちくわの予言

こうして、同士の絆で結ばれた僕たちは、キャンプが終わってからも頻繁に情報交換するようになった。
ちくわの予測は、伊織と僕では毎回違っていた。
たとえば抜き打ちテストのあるなしについて、僕には教科に関係なく毎回知らされるのに対し、伊織は英語と古典の時しか出ないらしい。
「たぶん、僕は英語と古典が苦手だからかな」
 食堂の片隅で、A定食の味噌汁を飲みながら伊織は言った。
「つまり、僕は全般的に苦手だから毎回予測されると」
「断言しにくいけど…うーん、そういうことなのかな。自分にとって重要なことが優先される」
「じゃあ、地球の大災害については、僕にとって重要じゃないってこと?」
僕の問いかけに、眉間にしわを寄せながら、伊織はコロッケを咀嚼している。
伊織が見た大災害の映像について、僕はまだ見たことがない。
ここにきて僕は、伊織の仮説について疑いを持ち始めていた。
「伊織くーん。ねえ、ちょっと教えて欲しい問題があるんだけどー」
三人組の女子が、僕の存在などお構いなしに、甘ったるい声で伊織にすり寄ってきた。
高身長、イケメン、成績優秀な伊織のことを女子がほっとくわけもなく、間違いなく彼は学年で一番モテている。

特定の彼女をつくればいいのに、と勧める僕に、伊織はニヤつきながら「それって自慢?」とからかうばかりで、現段階では恋愛に興味がないらしい。
伊織が女子たちの相手をしている間、僕は優里奈とのメッセージのやりとりを見返す。
今度の日曜には映画に行く予定だ。
付き合って三カ月。そろそろ手つなぎたい。

#小説
#連載小説
#短編小説
#コメディ
#SF
#青春

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?