なんでもないよが嬉しい
22時。
ブルブル震えるスマホ。
スマホに浮かぶ次男の名前。
もしもーし、どうした?と私。
なんでもないの。なんにもないけどかけたの。と次男。
なんだそれー、1番嬉しいやつじゃんか!
スマホをスピーカーにして、夫と私の真ん中に置く。
どうだ?大変か?と私と夫。
次男は1ヶ月前に配置転換があり、今の部署に異動した。
1年の研修を経て、一気に役割が増えて視野の拡充を求められ、加えて結果を受け止める責任を背負った。
私も夫も、一般企業の就労経験がないためこれが普通なのかわからない。
夫は、もう少しスモールステップで指導を受けながら物事の道理を学び、庇護される環境の方が良いのではないかとも思うといい、
私は、そんな若いうちからある程度の責任あることを任されることに羨ましさがあるし、結局は経験しか人を育てないという現場主義には共感があった。
大事にされているかどうかとは、わかりにくい。
ちなみに、私は自分の会社に大事にされているとは思わないが、守られているとは思う。
次男は着任してすぐに思わぬ結果を出して褒められたという。
もちろん、自分自身の工夫や努力もあるのだろうが、身の丈を超えた結果であり、ビギナーズラックに感じるものだったようだ。
実感の伴わない結果は、翌月の自分を苦しめている。
翌月の自分とは、今の次男だ。
毎月毎月、数字として現れて突きつけられる結果に、一喜一憂していては身が持たないのではないか。そんな風に思えた。
本人もよくわかっているようだった。
しかし、彼は私の子である。
評価されたいよねー、褒められたいよねー。
やるからには、お前に任せてよかったと言わせたい。
ちなみに、夫も深く頷く。
彼は、承認欲求ありありの私たち2人の子である。DNAが、落ち着かないのだ。
すぐにうまくはいかないし、良い時があれば、悪い時もある。
ベテランだから常に安定しているわけでなく、新人の次男が捲り上げることもある。
ただそれは、ベテランにほらみたことか。と鼻で笑われる日もあるということだ。
成功が怖い。次男は天気の良い日にそれを素直に喜べる子供ではなく、いつか降るかもしれない雨を心配するような子供であった。
先の展開に想いを馳せ、場の空気を読み、振る舞いに粗相のないように自分を構築する。
LEGOが得意だった。びっくりするようなカブトムシを作る子だった。
だから、心配なこともある。
仕事とは。役割とは。メンタルのありようとは。
夫は管理職の現役として
私は働くおばちゃんの代表として
それぞれ次男に声を掛けた。
アドバイスというには、雑で一方的だったかもしれない。
私も夫も希望は一つしかない。
次男が元気で社会に生きることだ。
すごく難しいことだと思う。だから、今、辛くて大変なんだということをなんでもないんだけどさ。と電話をしてきたことは素晴らしい。
自分のために処方箋が書けることは、何よりも大切なことだ。
次男が今抱える悩みは、時間しか解決しない。
積み重ねて見える景色があり、経験してわかることがある。
それには、毎日仕事をするしかない。
毎日他の社員さんと関わるしかないのだ。
自分のことも手一杯で、覚えることばかりで
それなのに、そのことは評価の対象外で、自分がまだ力の及ばない利益の数字で、意見をされる。
むしゃくしゃしたり、つれないなあ。ってなるよ。
それでも、組織で働くということをそうして知っていくんだよね。
同期の子が退職したそうだ。残念だし寂しいと話す。
誰かにはできない仕事をしている自分を褒めてあげなよ。と声をかける。
そして、同期の子が別のどこかでまた働くことに出会ってほしいと願う。
社会人2年生。焦るな、大丈夫。
社会人26年生でも、まだまだうまくいかないんだから。
一緒に頑張ろうぜ。
なんでもない電話、また待ってるよ。
お気持ちありがたく頂戴するタイプです。簡単に嬉しくなって調子に乗って頑張るタイプです。お金は大切にするタイプです。