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おにぎり3つ

ゴールデンウィークに、次男が同級会で帰省した。

新幹線の駅まで友達が迎えに行ってくれて、荷物を置くと、風のように出かけ、深夜に帰ってきて、朝、自分の好きなように冷蔵庫を漁って、木の芽を生卵で山盛り食べて、また布団に潜ってしっかり寝ていた。


お昼だよーと起こさなかった。好きなだけ寝て、好きなようにして帰ればよい。


15時ごろ起きてきて、夕方は早めにバーベキューをして、肉を食べてから帰る予定にしていた。


ぽつぽつとは話したが、あまりいろいろ聞かないようにした。仕事が大変なのはなんとなくわかるし、私は結局つまらないことしか言えない。


気の利いた母親なぞ、世間にはいない。


気が利かないから母親なのだ。


三男も帰ってきた。北海道から2泊3日の弾丸帰省で、後輩の野球の応援に出かけてきた。


後輩達は、無事に2回戦も勝利をおさめた。勝ち試合を観にきたのは価値がある。球場では同級の仲間にも会って、久しぶりの再会で楽しかったようだ。


夕方、駆け足でバーベキューをした。炊き立ての白米を塩むすびにしたものを、幾つも作った。


肉に米、もつに米、時々義母が煮た、筍の土佐煮を合間に挟みながら、うちで採れたアスパラに舌鼓をうちながら、もくもくと上がる煙に、
近所で野球する子供達の「なんかうまい匂いがする!!」の声をBGMに、子供達が肉を食べる様子を見つめた。


子供がメシを食うところは、なんでこんなに安心するのだろうか。


生きているなあと思う。大きくなったなあと思う。


次男はそそくさと食べ終えて、シャワーをして身支度をする。


たった2日の帰省で、うちでは寝ている時間の方が長くても、なんだかすごく私は満たされた。


大好きな友達に会い、なんなら惰性でカラオケに行き、幼馴染と30分の深夜の国道を歩いて帰ってきて、そんなことをできたことが、ひたすらに今の次男にとってよかったと思う。


三男もそうだ。バイトしてバイトして、お金を貯めて、帰ってきちゃった!と軽装で飛行機に乗ってやってきた。


ダメな理由を考えるより、行ける理由を選択して、こうして顔を見せてくれた。ありがたいなと思う。


今朝、早起きして昨日残った塩むすびを握り直す。


ふきのとうの味噌と、たらこと、味噌漬けのおにぎりを3つ。


三男は、おにぎり3つを持って、朝一番の新幹線で羽田へ向かった。


毎朝毎朝、おにぎりを作っていた頃は面倒だったのに、今朝、おにぎりを握る時にじんわりと、幸せだった。


おにぎりは、作る人にも幸せをもたらす食べ物だった。そんなん、やっぱり義務のうちには気づけない。


長男も元気かな。山菜が美味しいうちには帰ってこられないかな。こごみもうども木の芽も、ふきのとうも、ヤマタケノコも、わらびも冷蔵庫にあるのにな。


子供達が帰ってきて、帰って行った。


それぞれの場所がある。それは親としてとても誇らしく頼もしいことだ。


桃ちゃん、あのね。寂しいけどね、寂しいよりきっと、桃ちゃんのママも、誇らしく頼もしいと思っているんじゃないかな。新幹線の階段を上がる次男をバッグミラーで、見送りながらそんなことを思ったよ。


お気持ちありがたく頂戴するタイプです。簡単に嬉しくなって調子に乗って頑張るタイプです。お金は大切にするタイプです。