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誰でもいられる「余地がある街」池袋。~都心で地域を考える~

私はちょうど3年前池袋に越してきて、まる2年間住んでいた。池袋駅の西口から徒歩10分で周辺の駅の相場よりもかなり安く、周辺には公園や神社や図書館が1分以内にある、奇跡のようなマンションに住んでいた。当初は1年の予定で、離婚の危機にあったパートナーのくまと離れ、都心で別居することになってたどり着いた。

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池袋には最初は住む気は全くなかった。10年来の戦友田村くんが池袋に住んでいてよく会いに行ったし、もと埼京線ユーザーだから馴染みは一応はあったけれど、私は新宿駅を使うほうが多かったし、そもそも都心の繁華街に住むのは疲れそうだと思っていた。

ちなみに中野や高円寺の中央線沿線と高田馬場のあたり、そこに近い西武池袋線沿線あたりに住みたかった。都心に近くて雑多だけれど落ち着く文化がある街が、私は好きだったりする。

しかし、たまたま周辺相場より条件のいいマンションが池袋にあり、見に行ったら意外と住みやすそうな街だと気付いた。池袋で地域活性をしている田村くんに案内してもらったのも大きい。

池袋は都心のわりに、10分ほど歩くとそれぞれ違う落ち着いた雰囲気の場所になる。南池袋は東通りの横を抜けると雑司が谷や鬼子母神がある。

西口から要町のほうに行けば、商店街などもある落ち着いた住宅街になる。隠れ家的なお店も並んでいる。意外と安いスーパーもあり、八百屋さんや豆腐屋さんもある。スーパーが気に入れば、私はとりあえず「この街に住める」と感じる。

ストーカーされやすくて自分の現在地を人に教えるのが苦手なので、当時はあまり言わなかったけど池袋図書館御嶽神社のすぐ近く。今私が働いているみらい館大明までも2,3分で着くところに住んでいた。

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私は普段行かない場所に行くと時間があれば近くの公共機関を巡る。性暴力を始めとした性の話や女性の生き方、パートナーシップ、生きづらさや多様性に関わる啓発等、私の活動は行政と密接に関わってくるし、利用する可能性も高いからだ。

また困難のある人に相談されたとき、男女平等推進センター等の行政の窓口につなぐのに、どんな人につなぐのかをできる限り知っておきたい。どんな取り組みをしているのかに関心がある。

豊島区が面白いのは、行政の建物がとてもきれいで便利で取り組みが先進的であること、そして商店街など地域が動いていることだった。

区役所は公共機関とは思えないほど圧倒的にきれいで先進的。観光客向けの資料をみても、サブカルに寄せた紹介があったり、講座も単純に行きたいと思えるものが多く、様々な取り組みや工夫がされているのがわかる。区の文化や歴史展示も行われていて屋上には庭園がある。

図書館の蔵書はその地域の取り組みがわかることが多いのだけど、豊島区の図書館はジェンダーやセクシャリティなどに関わる本棚が本棚まるまるあって驚いた。wifiや電源がある場所もあり、よく作業に行き詰まると図書館に行った。

お祭りは商店街や町内会が主導で動いているようで賑わっている。男女平等推進センターエポック10は駅からも近く使いやすそうで、性暴力相談先のアプリがあり、マルイのトイレにチラシを貼ったりして感動した。

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保健所の1Fにはふぉー・てぃーというHIV啓発スペースがあり、性教育の拠点やLGBTをはじめ、若者の居場所としての機能も担っている。

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そして私が働いているみらい館大明ブックカフェは面白い場所だ。みらい館大明は廃校の小学校を利用した生涯学習施設なのだけれど、主にOBなど旧大明小学校に関わる人達が立ち上げた地域のNPOいけぶくろ大明が自主運営をしていて、地域活動の拠点になっている。

ブックカフェはその中の図書室を利用したアットホームなブックカフェで、ここは豊島区と大明が運営する若者支援事業として運営していて、完全な区の公共施設とはまた違った独特の場になっている。

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何よりもなにもしなくてもいられる。望めば人とつながることもできて、自分のやりたいことをやってみることもできる。ここは「余白のある場」だと感じている。

私は区の新年会で大明を紹介してもらい、セクシャルマイノリティのイベントに参加したのをきっかけに、若者支援につながるイベントを開催させてもらうようになった。

人と本を見立てて、あらすじとタイトルをつけて読み聞かせをするように対話するイベント、ヒューマンライブラリーを定期的に開催させてもらえることになり、その流れで1年前からブックカフェのスタッフとして働くことになった。

大明やブックカフェを通じて、地域の方と交流する機会もできてきた。自殺対策計画の策定委員にも推薦してもらったり、板橋区の成増の中高生スペースのi-youthの職員の方とつないでもらい、そこでも定期的に講師として「好きを語るお茶会」を若者向けに開催するようになったり、さまざまなつながりのきっかけになった。エポック10の運営委員にもなり、行政や地域活動に関わる人とつながる機会も増えた。

私は思えば地域には全然関心がなかった。地方創生や地方で働くことを考える人が増えたと感じるけれど、私はまだ東京で消耗したかった。


私は高校から都心に通う埼玉県民だった。その後も一度郊外に住んだけれど今まで住んだ自分の近所の地域コミュニティは、居心地がいいとはとても思えなかった。 

公共機関はそもそも遠かったし、使いたいと思えなかった。森やたんぼに囲まれて育ったから、自然が好きで田舎が落ち着くけれど、都心に居心地の良さを感じる郊外の人間だ。

都会は冷たいというけれど、「ほっといてくれる感じ」は安心する。買い物するにも遊ぶにもご飯を食べるにも選択肢がある。仕事も探しやすい。職場は近い。人にも会いやすい。

埼玉に住んでいた頃は「家に来てくれ」なんて言えなかったけれど、池袋なら遠慮せず呼べる。私みたいなフリーランスは交通費が出ないので、都心に住むのはものすごく便利だった。

「コモディティ化している」「ダサい」とも言われがちだけれど、池袋にはダイバーシティがある。オタクもヤンキーもギャルも腐女子もバンギャもサブカルもきれいめ女子大生も同居できる街。たくさんの国籍の人が住んでおり、セックスワーカーも多い街。治安が悪い場所もあり、問題もあり、洗練されたイメージとは程遠い。雑多だからこそ余地がある。生活のリアルを感じられ、すっぴんで適当な服で歩いても居心地のいい珍しい都心だ。


意外と文化的でもある。アートやサブカルチャーに対する理解が区自体としてもある。最近はお洒落な建物もあるし、雑多な中に美味しいごはん屋さんも多い。
そういう多文化共生の街であることに注目する、池ブルックリンなんていう地域活動のプロジェクトもある。近隣も魅力的で雑司が谷目白あたりはのどかだけれど、庭園など自然を感じる場があり、ギャラリーや雑貨屋さんが並ぶ町並みだし、巣鴨や駒込あたりも歴史を感じる場所があり、大塚あたりも開発が進んで面白くなってきている。

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最近、私は地方にも関心がある。私は首都圏の人間だから、日本の他の地域のことに疎い。性暴力に関してだって、都心で法律等の政策は決まりがちだけれど、地方の課題や感覚を拾うことはすごく大切なことだと感じるようになった。単純に町並みや文化を感じることは好きだ。
旅行するより滞在して住むことが好きだったりする。旅行に行っても本当は観光地よりスーパーに行きたい。人の生活に興味がある。いろいろなところに行きたい、住みたい。でもきっと私自身としては地方に長くずっと住むというよりも、滞在しながらもメインの拠点は都心のほうが合うんじゃないかなと感じている。

池袋は都心なのだけど、歴史や文化も地域のあたたかさも感じることができる地域だと知った。池袋には若者が集まる。でも地方から上京してきて、わからないことだらけで、孤独や不安を感じる人もたくさんいるはずだ。「東京はつまらない」という人が増えたけれど、私は「東京も面白い」「東京も捨てたもんじゃない」と日々思っている。若者がもっと来やすい形で文化や地域とのつながりを感じられる場所をつくりたいと最近は特に思って豊島区にコミットを増やしていっている。

私は池袋に「都心の“田舎”」のような場所を作っていきたいと思うようになった。
まずせっかくだから今働いているみらい館大明ブックカフェをもっと知ってもらって活用してもらいたい。今年から広報担当になったこともあり、教育機関との関係づくりをして連携を増やしていく予定。
たとえば専門学校の人の実習や展示に活用してもらえたら、利用者にも学生にもメリットになる。ゼミや授業で使ってもらえたら、ここがあることを知ってもらえる。

あと、自分では、例えば空き家を活用して、シェアハウスやゲストハウスの1Fにコワーキング兼居場所スペースのような場所を作って、地域の交流の場を作ったりしたい。イベントを開けるようにしたり、銭湯や地元のお店と提携して多世代で交流できる場になっていけたらいいなとか、そんなことも考えている。

今は1年前から池袋に隣接した板橋のシェアハウスに暮らしている。本当は南池袋の一軒家でシェアハウスをやってみたかったのだけど、入りたい物件が埋まってしまって自分の家の更新の期限が切れてしまったから、まずは業者管理のところに入った。今のところも気に入っているし、私がこれからどう変化するかもわからないけれど、ライフワークの1つとして、自分が心地よく、かつ人と居られる「余地のある場所」を作っていきたいなとずっと考えていて、書いてみた。

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