★余談1「はじまりの日」を読んで気がついたこと

アーサー・ビナードという日本語で詩作をしたり、翻訳をしている方が、ボブ・ディランの名作「フォーエバー・ヤング」を訳して絵本にした。

題名は「はじまりの日」である。

「Forever young,Forever young,May you stay forever young」

という歌詞を

「毎日が きみの はじまりの日  きょうも あしたも  あたらしい きみの はじまりの日」

と訳したアーサー・ビナードのセンスが素晴らしいと思う。


この絵本を読みながら、涙が出てくる。

この涙は、AKB48の「365日の紙飛行機」という歌の中の

「ずっと見てる夢は 私がもう一人いて やりたいこと 好きなように  自由にできる夢」

という歌詞を聞くたびに、勝手に出てくる涙と同じ種類だ、と気がついた。

これまで、「365日の紙飛行機」のこの歌詞を聞いて切なくなるのは、現在の自分の生き方を肯定している一方で、「生きなかった半面/もうひとりの私」・・・ユングが言うところのシャドーを思い、そちらの生き方を選択しなかった自分と、そちらの生き方をしていればできたかもしれないことを思ってのことだと感じていた。

毎回涙が出るなんて、もしかしたら、「生きなかった半面」が「本当の私の夢」なのではないかと、こわくなったりもした。

しかし、この「はじまりの日」を読んで、少し感じ方が変わった。

この歌は、この絵本は、

「きみのゆめが いつか ほんとうになりますように」  
「このひろい 世界が きみの目に 光りますように」 
 「きみの 心のうたが みんなに ひびきますように」

そのために、いつだって今日が「はじまりの日」だと、温かく励ましてくれている。

誰にでも「生きなかった半面」は、ある。けれど、「本当の夢」は、今日からでも、「生きている反面」である私にも、叶えるチャンスがある。「生きなかった半面」に夢があるのではない。今日を生きている私が、夢を叶えればいい。いくつであっても、遅くはない。今日も、明日も、「はじまりの日」なのだから。

涙が出るのは、後悔しているからじゃないんだ。

こわいのだ。

「本当の夢」が叶わなくて、世界を良くすることに貢献できないまま、役に立てずに終わってしまうんじゃないか、と考えることが。

いまでも、こわい。

でも、励ましてくれている。

何度夢破れたとしても、今日がまた「はじまりの日」になるのだと。

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