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おじいちゃんの爪

去年の7月、祖父が94歳で亡くなった。

94歳まで自転車を乗り回していたアクティブな人だったが、認知症が徐々に進行した上で肺がんが見つかった。ステージ4だった。

緩和治療となりお見舞いに行った時のこと。

私が小さい頃、おじいちゃんは小指の爪だけを長く伸ばし、「耳かきに使えるから便利なんだ〜!」と誇らしげに笑っていた。

ベッドの上のおじいちゃんはひどく痩せて、認知症で徘徊するためベルトでベッドに固定されていた。

おじいちゃんの爪は小指以外も長く伸びていた。

「爪を切ってやって」と祖母に言われ、私は短く切りそろえた。

それが生きているおじいちゃんに触れた最後の時間となった。

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