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<ネタ帳:び>美人の思い出(タイトル あの頃 /本文 あの頃)

 大学に入学した時のことである。最初にクラスメイトの顔お合わせがあった。一人づつ前に出て自己紹介をした。正直言って、大部分の人は何を話したのかなんて全然思い出せない。

 しかし、そんな中でも、なぜか断片的に話を覚えている人がいる。その話が特別面白かったわけではない。それなのに、なぜ話を覚えているのか。

 自分でも不思議に思ったので、少しばかり考えてみた。すると共通点が発覚した。

 私は記憶しているのは、全て女の子であった。しかも、可愛いか綺麗な子に限られているのだ。

 話の内容は断片的にしか覚えていないくせに、彼女の外人のように白い肌やあまり感情のこもらない薄い瞳の色、あるいは折れそうに細いウェストなどは今でもはっきりと覚えている。

老若を問わず、男たちが可愛い女の子をえこひいきすると、目を吊り上げるご婦人がいらっしゃるけれど、私などもその批判を甘んじて受けなければならない一人であろう。

 先日も用事があった、区役所にいったのだが、そこでとんでもなく美しい人と遭遇してしまった。

 その人の周りだけ、特別に清らかな空気で覆われているのではないかと思われるほどであった。実際、偶然私の隣に座った時など、彼女の方から、涼しい風が吹いてきたのである。私は何とも言えない幸福な気持ちになった。あの時ほど、渋谷区民であることを誇りに思ったことはない。

 区役所を出た後も一日中幸せな気持ちは続いた。私は今でも名前も知らない彼女の横顔をはっきり思い出すことができる。きっと5年経っても思い出せるだろう。

 でも、それって、相手にしてみたら、結構気持ち悪いことかもしれない。


-----------------------------------------------------------------------<2023年メモ>
あの頃、5年経っても思い出せるだろうと書いた渋谷区役所で出会った絶世の美女のことを、2023年の今、全く思い出せない。20年以上の月日が流れたとはいえ、涼風を発生させるほどの美女を全く思い出せないのは、残念でならない。思い出せないとは、記憶自体がないのではないのなく、記録への回路が断たれているのだそう。なんとか、回路を復活させることはできないのであろうか。幸せな記憶への回路を確保できる発明ができれば、世界は平和に、人類は幸せになることだろう。超高齢化先進国の日本での発見を強く期待する。

余談ですが、今まで見た中での一番の美男子は今でもはっきりと思い出せます。人はあり得ないものを見た時には後ずさるということを知った瞬間でした。

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