熱中症自殺

こちらは2012年に執筆した百合小説となります。

キーワードは

・高校生 

・夏

・俺様口調

・手当


引用は

★Dominic Cheetham 「Bites of Britain,Tastes of Japan」NHK出版 2007年 

では下線より始まります。

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★”mad dogs and Englishmen go out in the midday sun."

英訳すると

★「いかれた犬とイギリス人は昼間の太陽の下に出かけていく」

………だそうだ。

そしたら俺も同類か?

本屋で見つけた薄っぺらい本を読んだ俺の感想。

夏の蝉がうるさいこの昼時、俺はだらだらと道を歩いてる。

この本のいっているとおりなら、俺もイかれたイギリス人きどりということになんのか?

いや、あいつ等は分厚いジャケット着込んでるからきちがいで、俺は薄着だからきちがいじゃない…のか?

………まあいい。とにかく今は暑い。


言っておくが俺はいかれてなんかいない。

今日はマンガの新刊が出る日だったことを昼間に思いだしたはいいが、日付を間違えて覚えていて、むしゃくしゃしたからこの本を買った。それだけ。

じゃなきゃこんなくそ暑い真っ昼間に誰が出歩くかっての。

しかし、隣に日本語があるが全く分からん。

一応中学生でも読めるって帯に書いてあったから買ったが、高2の俺でも全く読めねえ・・・どうなってんだ。

あーちくしょう。俺の頭が回ってないのはこのバカみたいに輝いてやがる太陽のせいだ。

こんなぎらぎらやりやがって。熱中症になったらどうしてくれんだ。

そんなことを考えながら、だらだらと家までの道を歩いていた。

途中で我慢できなくなって、コンビニでソーダ味のアイスキャンディーを買ってまたダラダラと歩き始めた。

アイスキャンディーを袋から出した時、ちょっと手についてべたべたになった。

ほんとうざい。

それでもダラダラと食べあるき

最後の一口にと、ンガーっと大口を開けたところで。

本物のいかれイギリス人を発見した。


まあほんとにイギリス人という訳ではないんだが。

そいつは、このくそ暑い日に、長袖のカッパみたいなのを着こんでいた。

なんというか、ボクサーが着込んでそうなあれだ。顔はフードをかぶっていたから分からなかった。

そんなもんを見たせいで、俺の口ン中に入るはずだった最後の一口をアスファルトに食わせる羽目になった。

イラっとした。

とにかく、最高の一口をこいつに邪魔されたことに腹が立った。

このいかれイギリス人が。

アイス弁償しやがれってんだ。

ソーダのついでにコーラと梨もつけやがれ。

「おいてめえ!」

ずかずかとそいつに近づき俺はここぞとばかりに脅してやった。

こうしてやれば大抵の人間はひどく驚いた不格好な顔をする。

その顔を見るのが楽しくて仕方なかった。

いっそ振り向きざまに殴ってやろうか

こぶしを振り上げた

だけどそいつは

「………かよちゃん?」

俺の名前をよんで、俺の胸に倒れ込んできた。

「!?」

思わず振り上げたこぶしをほどき腕を腰にまわして抱きとめる。

そいつは、160程度しかない俺の体に収まるくらい小さかった。

訳が分からなかった。

誰だこいつは。

腰回りからして男ではなさそうだ。

急いでフードをあげてみる。

「あー…。」

なんてやつに関わっちまったんだ俺は。

見慣れた顔だった。

むしろうざったくて一学期中の鬱のもと

椎名楓がそこにいた。

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