見出し画像

木のあれこれ。no.4 ピアノを知る、スタンウェイ&サンズ。

ピアノのほとんんどは木材でできている。
世界3大ピアノと呼ばれる、
「スタンウェイ」「ベーゼンドルファー」「ベヒシュタイン」
のピアノたちはどれも何人もの職人の手で1台を数年かけて作るような傑作である。木と音楽は切り離せない。
音でも木は昔から人々を楽しませてくれた。

ピアノの良し悪しを決めるのは
①設計
②素材
③製造方法
だそうだ、ものづくりはやはりこの3次元に集約される。

ピアノの木についての記事をまとめる前にまずは
ピアノのことを記事にしたいと思う。

Steinway & Sons スタンウェイ&サンズ

画像1

スタインウェイの歴史
スタインウェイ&サンズは、1853年にドイツ人移民のヘンリー・エンゲルハート・スタインウェイにより、マンハッタンのヴァリックストリートに設立されました。その後30年間以上にわたり、ヘンリーと息子たちはモダンなピアノを開発。以来、彼らは、熟練の職人から弟子へ、世代から世代へと受け継がれる技術を駆使して、1台ずつ製作してきたのです。スタインウェイは、プロのアーティストの98%によって選ばれるピアノとなりました。アーティストは報酬を受けることなく、スタインウェイを推奨しています。次世代へその伝統が受け継がれるスタインウェイは、投資対象としても評価されてきました。(スタンウェイhpより

ピアノの品質の基本となる設計。
18世紀初頭のイタリアでピアノが発明され、その後、伝統的な手法や知識を受け継ぎながらドイツやイギリス、フランスなどで発展し、アメリカに渡って工業化が進むとともに新たな知恵と発想が加わり現在のスタイルへ変遷してきた。

グローバル化時代に突入した現代では、ピアノの設計、素材、製造方法等はほぼ明らかになっているため、スタインウェイ以外のメーカーでもスタインウェイピアノの設計値や素材、製造方法を模倣すれば同等のピアノを作れるはずだが、未だそのようなピアノは生み出されていない。


先駆者。

ピアノ製造史上、どのメーカーよりも貢献度が高いのがスタインウェイである。まず、現代のグランドピアノの形状で常識となっている高音側の側板(リム)が湾曲したあのスタイルは、スタインウェイが作ったものだ。

画像2

他にも弦を支えるパーツ(フレーム)の総鉄骨化や、鋼鉄弦と銅巻き線が二重に交差する弦の方式(オーバーストリングス)、弦のうち打弦されない部分を共鳴させるしくみ(デュープレックス・スケール)、ソステヌートペダル(グランドピアノの3本のうち中央のペダル)の採用、アクション(打弦機構)のレペティションダブルスプリングの採用など、現在では他のピアノメーカーが採用している数多くの技術を開発し、最初にピアノ製造へ実用化したメーカーである。(詳細はこちら

スタインウェイの開発技術は国際的にほとんどのピアノメーカーに応用されている。またスタインウェイが取得した特許はこれまで120以上もあり、これほど多くピアノに関する特許を取得しているのは、スタインウェイの他にはない。

スタインウェイの開発技術や特許はその特許期限が切れるたびに他メーカーのピアノに採用されてきた。そのため、現在の数多くのグランドピアノは一見するとスタインウェイピアノとそっくりの形で作られていますが、設計技術や素材、製造技術の違いからタッチ感(弾き心地)や音響は全く異なるのである。


数多くの特許技術を開発した二人の天才。

スタインウェイが取得してきた120以上の特許の陰には、大変重要な人物が存在している。1850年にスタインウェイ一家がドイツからアメリカに移住した際に一人ドイツに残った一家の長男セオドア(独名テオドール)である。

セオドアは優れたピアノ技術者だった。ドイツに残った後もそれまでのスタインウェイピアノの改善に取り組み、その過程で協力者となった人物がいた。ドイツの物理学・生理学者のヘルマン・フォン・ヘルムホルツである。

セオドアとヘルムホルツは互いに技術と知識、知恵をつき合わせて、それまで伝統的手法に頼っていたピアノの設計、素材、製造方法を見直し、科学的に研究した。

その結果、次々とピアノの特許を取得していくが、スタインウェイ社が取得した120以上の特許の約50%以上はセオドアによるものである。そして、そのセオドアによる特許の陰には、ヘルムホルツの多くの助言と協力があったのだ。

スタンウェイの材料

スタインウェイピアノには、最良の原木が選定され、大きく裁断した木材を積み重ねて約2年間天然乾燥された後、その間に割れたり曲がる木材、ヤニの出る木材を取り除く(それらはチップにして従業員の暖房材として使用される)。その後、温湿度をコントロールした人工乾燥に切り替え、さらにピアノに最適な木材を厳選していく。

スタインウェイピアノでは、原木よりピアノに使用される木材は約40%、取り除かれる木材は約60%であり、最終的にピアノみ組み込まれて完成するのは更にその一年後だ。

1853年の創業以来、スタインウェイピアノの木材は音響に関わる部材の殆どが無垢材で作られ、現在の多くのメーカーでコストダウンや効率化の目的で使用されるような合板や硬質圧縮紙等は、決して使用されない。

優れたピアノを作るためには、優れた職人による手造りが必要となる。なぜなら当たり前であるが自然の木材は、一つ一つ木目が違う。一つ一つが全て別の素材だからである、人間の手の微細で精緻な感触で加工し組み上げてこそ、その生きた木材の木目や繊維を活かすことが出来るのである。

大量生産(ベルトコンベヤ生産方式など)とは異なり、手造りの工法は効率が良くないというリスクがあるが、それは楽器にとっては不可欠なリスクなのだ」。

反対に、一台のピアノ製作に関わる時間で、そのメーカーのピアノづくりの姿勢が分かる。一台のピアノを完成するのにどれだけの時間をかけているか、そのメーカーの一年間に製作されているピアノの台数から割り出すこともできる。

現在もこの手造りの業(わざ)にこだわり続けているスタインウェイピアノでは、全工程の約80%が手造りだ。そして、優れた手造りにこだわるためには、優れた技術者、つまりマイスターを育てる必要がある。その期間は少なくとも数十年が必要であり、他のピアノメーカーが単純に手造りを真似ることが出来ない理由の一つである。

スタインウェイ社は設計、素材、製造の3つの優越性に加えて、人材教育に膨大な時間をかけているのです。製造設備や機械は投資により導入することができますが、人の業は才能と努力、そして時間をかけ、投資することが必要です。

また、手造りピアノのリスクとして効率が良くないと前述しましたが、スタインウェイ社が1853年の創業より製造したピアノの総台数と、スタインウェイ社より後に創業した大量生産メーカーなどの総台数を比較すると、既にスタインウェイ社の10倍以上のピアノを生産している大量生産メーカーもある。

スタインウェイ社では1台のピアノを製造するのに約3年(36ヶ月)の期間を必要とするが、大手大量生産メーカーの製造期間はその1/10ほどで、1台につき約3.6ヶ月となる。

スタンウェイのピアノが高額なのもうなづけるだろう。

参考:https://1853.jp/pianos/steinwaybrand/


低価格の第二・第三ブランドを「ボストン」および「エセックス」というブランド名の下で市場に出している。(wikipedia


パリで発掘された1906年製ハンブルグ・スタインウェイD-274

スタンウェイを調べている中で興味深い記事も見つけたので貼り付けておく。

スクリーンショット 2021-05-03 8.00.48

パリで発掘された1906年製のハンブルグ・スタインウェイD-274コンサートグランドピアノ。

国内で注目されるヴィンテージ・スタインウェイのコンサートモデルD-274は主にニューヨーク製ですが、このピアノはハンブルグ製である。

戦火の影響が比較的少なかったニューヨーク製に対し、ドイツが2度の世界大戦の敗戦国となったため、ハンブルグ製は甚大な被害を受け、非常に希少なものとなった。

中でも20世紀初頭に当たる1906年に製造されたフルコンサートピアノで、ローズウッド材の外装を持つものは極めて少なく、今回このピアノが、パリにてほぼオリジナルの状態で見つかったことは奇跡的といえる。

多くの伝説的巨匠達が活躍した19世紀末から20世紀初頭は、一般に黄金時代と呼ばれ、最高の材料を豊富に使用できた環境のもとで、数多くの名器が生み出された。ピアノの音色には時代によって趣向があると言われている。

数千人規模のホールで演奏される機会が多い現代では、ホールの隅々に行き渡る輝かしいサウンドが要求されるが、1900年代当時のピアノは千変万化する多彩なニュアンスと深い響きを備えており、1世紀以上の年月を経て、さらに熟成された魅力的な音色奏でる。

外装に贅沢に用いられた最上級のローズウッド材は、現在は枯渇や環境変化等で極めて調達困難な素材だ。

その落ち着いた色合いと美しい木目は、脚やペダル部分や譜面台に施された繊細かつ華麗な装飾とともに、まるで芸術的なアンティーク家具のような佇まいを演出している。

参考:https://www.bunkakagaku.org/文化事業/ピアノ紹介/

このピアノの修復についても紹介されているのでご興味のある方は上記リンクよりご覧になってみてください。


日本の直営店

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?