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木のあれこれ。no.7 楽器の木 part-5.ピアノ

楽器には昔から古今東西、様々な木材が用いられてきた。
各木材にはそれぞれ特徴があり、奏でる音も異なる。
ここではどの楽器にどんな木材が使われているのか、なぜその木材が使われるようになったのか、そしてその木材の特徴をまとめる。

これまでpart-1から4までは打楽器を扱ってきた。
part-5からは弦楽器をまとめていく、弦楽器の初手はピアノだ。

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ピアノとは

「ピアノフォルテ」の略。弱音(ピアノ)と強音(フォルテ)とが自在に出せるところから》鍵盤 (けんばん) 楽器の一。鍵盤を指先でたたくと、その運動がハンマーに伝えられ、大きな共鳴箱内に張られた金属弦を打って発音する。18世紀初めイタリア人B=クリストフォリが考案。以後、独奏・合奏に広く用いられるようになった。平型(グランド)と竪型(アップライト)とがある。洋琴。(Goo国語辞書

ピアノの成り立ち

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ピアノの先祖といわれる楽器には、クラヴィコード 、チェンバロ 、ダルシマーなどがあるが、さらにその祖先をたどると、すべて1本弦の弦楽器に突き当たる。

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ヤマハHPより

音を出す仕組みは打楽器の要素もあるピアノ
ピアノは、弦を響かせて音を出す楽器という意味では弦楽器的であるし、ハンマーが弦を叩いて鳴らすという面では打楽器的要素も備えている。そうした面からピアノの直接の祖先ではないかと見られているのがダルシマーである。
ダルシマーは11世紀に中近東からヨーロッパに伝えられた楽器で台形の共鳴箱の上に弦を張っただけのシンプルなもので、その弦を小さい槌で打って音を出す。

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最も原型に近づいたクラヴィコード
ピアノは、音が出るしくみとは別の分類で、鍵盤の操作によって演奏する鍵盤楽器の仲間に分類される。鍵盤のついた楽器自体は古くからあり、音管に空気を送り込むことで音を出すオルガンが独自の発展を遂げていた。そのかたわら、ピアノに一歩近づいたかたちのクラヴィコードが誕生する。
クラヴィコードは14世紀に生まれ、ルネサンス期に最もポピュラーな楽器となった。 鍵盤を押すと、タンジェントと呼ばれる真ちゅうの棒が弦を打ち、振動を起こさせて音を出す仕組みを備えていて、音域は4~5オクターブだった。

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もう一つの原型、チェンバロ
1500年頃にイタリアで生まれ、その後フランス、ドイツ、フランドル、イギリスに広まったチェンバロは、鍵盤を押すと、細長い棒状のジャックにとりつけられた爪が弦をはじいて音を出す仕組みである。
弦や響板などの機構や、全体のかたちは非常にピアノに近くなっている。

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ピアノの生みの親、イタリア人のクリストフォリ

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現在のピアノの原型をつくったのは、イタリアのクリストフォリ(1655~1731)だった。
クリストフォリは、チェンバロの音が強弱の変化に乏しいことを不満に思い、1700年頃、爪で弦をはじいて鳴らす代わりにハンマー仕掛けで弦を打って鳴らすという、現在のピアノにつながるメカニズムを発明した。
彼はこのメカニズムを備えた楽器を「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」(弱音も強音も出せるチェンバロ)と名付けた。 この名前を短くつめて、現在は「ピアノ」と呼ばれている。

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ピアノの木材

ピアノはその用途によってさまざまな種類の木材が使われている。

ボディ(一番外側の材料)
・マホガニー:ヤマハ
・スプルース(ドイツトウヒ):ベーゼンドルファー
・ローズウッド:スタンウェイ(すごい古い時代)

その他ボディ
・ブナ:ベーゼンドルファー
・カエデ:ベーゼンドルファー

響板
・エゾマツ:ヤマハ
・スプルース(ドイツトウヒ):ベーゼンドルファー
・シトカ・スプルース:スタンウェイ、ベヒシュタイン

響棒
・マウンテン・スプルース:ベヒシュタイン


・カエデ:ベヒシュタイン
・ブナ:ベヒシュタイン(アップライトピアノ)

響板リム(響板枠組)
・ブナ:ベヒシュタイン
・マホガニー:ベヒシュタイン

側板
・ブナ:ベヒシュタイン
・スプルース:ベヒシュタイン

その他メーカーページによるものではなく、wikipediaにものすごく詳しい材料の説明が乗っていて参考になったのでリンクだけ載せておく。
wikipedia グランドピアノ


スプルース

ヒノキと訳されるが、日本の檜とは種類が異なる(日本の檜はヒノキ科ヒノキ属)
スプルースと言われているのはマツ科トウヒ属で日本ではエゾマツやアカエゾマツが該当する。

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シトカスプルース(和名:アラスカヒノキ)(別名:マウンテンスプルース)
学名:Picea sitchensis マツ科トウヒ属
Pecea(樹脂)sitchensis(シトカの)

シトカスプルースの名前は、アラスカのシトカ市から由来しており、北米西海岸アラスカからカナダ西海岸、南はカリフォルニア州北部に自生する樹種。随芯材と辺材の境界が殆ど無く、白から淡い黄褐色。オールドグロース(old growth:原生林)と言われる樹齢200~400年の大木になると、30-40m以下には枝はなく、樹高が90mを超えるものもある。
楽器、特にギターの本体パネルに使用されることが多いが、木肌が滑らかで、年輪が細く、木肌が白いこともありくっきりと見える為、柾目の内装仕上げ材や、化粧用木箱や高級木工品などにも利用される。


ノルウェイスプルース(ドイツトウヒ(ヨーロッパトウヒ))
学名:Picea abies マツ科トウヒ属
Picea(樹脂)abies(ヨーロッパモミのラテン名前、ラテン語abeo(上昇す る)から(木の生長の仕方から))

ヨーロッパトウヒはヨーロッパからシベリアにかけて広く分布する常緑針葉樹。有用樹であるので広く植栽されており、多くの品種があるとのこと。日本にも導入されており、クリスマツツリーとして利用されているのを見ることも多い。(モミとエゾマツの違い)英名はNorway Spruceであり、直訳するとノールウエートウヒとなる。日本に導入された時点では、ドイツトウヒと呼ばれ、今でもこの名前は広く使われている。ドイツの「黒い森」(シュヴァルツヴァルト)の主要樹種としても有名。
 樹高は50m、直径2mにも達する。葉は長さ2cmで断面はひし形、当年生枝は無毛で褐色。葉は長寿命で簡単には落ちない。下枝もなかなか枯れないので、雪崩の防止能力は高く、防風林としても利用される。弱い光でも光合成する能力があると見える。葉量が多いので、この樹木の森林は暗い。雌雄同株 円柱形の球果が下向きに付き、大きいものは長さ15cmになる。


エゾマツ

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学名:Picea jezoensis マツ科トウヒ属
Pecea(樹脂) jezoensis(北海道の)

乾燥は容易で特に注意する必要もなく乾燥させる事ができ、乾燥後も狂いの少ない安定した木材。
強度についてはヒノキと同等とも言われていますが、硬さのない木材の為、磨耗が生じるような箇所での使用は避けたほうが良いでしょう。しかし、曲げに対する適正が高いので、曲げ加工などに向いている木材。
切削加工は容易に行う事ができますが、カンナはややかけづらい。
耐久性に関してはやや腐蝕しやすい傾向がある為、湿気の多い場所や直射日光を受けやすい場所での使用は控えるべき。

また、ロシアのシベリア東部、カムチャツカ半島などの地域からエゾマツと同種の木が輸入されているが、こちらも極寒のロシアで生育した事で年輪が狭く、品質の良い木材だと言われている。

エゾマツは別名、「北洋檜」とも呼ばれ、ヒノキと同じように建築材や内装材として用いられ、触った時の感触が良い為、お椀やお皿などの材料としても人気がある。また、バイオリンの甲板やオルガンの音響盤、ギターなどの楽器の材料としも優秀な木材だとされている。


ブナ(カスタネット紹介に飛びます)


カエデ

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別名:イタヤカエデ
学名:Acer pictum カエデ科カエデ属
Acer(「裂ける」という意味のラテン名で葉の形から)pictum(色彩のある)

イタヤカエデは樹高が20m、胸高直径が1mほどになる木で、葉の形がカエルの手のような形をしている事からその名がついた。
200種以上ある楓の木の中で木材として有用なのは2種だけでイタヤカエデはそのうちのひとつ。
同じくカエデ科のモミジは観賞用の樹木の為、木材としては殆ど使用される事はない。イタヤカエデは非常に硬く、導管が詰まっているので強度があるが、乾燥を充分おこなっていないと反りやカビの発生を招く為、充分な乾燥が必要。
イタヤカエデは楽器の材料として有用で、ハーモニカやピアノのアクション材、ギターの材料などとして利用される。
また、材質が硬く、見た目も美しいので家具材としても利用され、質の良い家具を作る事ができる。


マホガニー(アフリカンマホガニー)

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アフリカンマホガニーはKhaya種の全ての樹種に用いられる総称で、大きいものでは樹高60m、胸高直径が1.8mにもなる巨木である」。
世界的な銘木で中米のホンジュラスに生育しているホンジュラスマホガニーと同じ種の木でこちらは名前のとおり、アフリカ大陸の熱帯雨林地域に生育している。
ホンジュラスマホガニーが希少種になってしまった為、現在ではこのアフリカンマホガニーを単にマホガニーと表記している事も多く、加工品の場合、詳しい表記がない時はどちらか判別が難しい場合もある。
木肌はややホンジュラス産のものに劣っており、虫害を若干受けやすい為、キクイムシなどによる被害には注意が必要ですが、乾燥は容易で乾燥後は安定した材になり、加工も比較的おこないやすく、色調が美しくて摩耗にも強いなどの良い特徴を持っているので本家同様、良材だとされている。

マホガニーは世界的に需要が高い種なので現地では殆ど消費されず、アフリカの輸出品のひとつとなっているが、現在では国際自然保護連盟に危急種に指定されている為、今後も広く入手可能な木材であり続けるかは不明。

参考:https://lifemusic.jp/lesson/ピアノ・正式名称/
https://wp1.fuchu.jp/~kagu/mokuzai/119.htm
https://axisplan.com/lumber/sitka-spruce/
https://wood-museum.net/ezomatsu.php
https://wood-museum.net/itayakaede.php
https://wood-museum.net/african_mahogany.php


あとがき
ピアノをググったときwikipedia(グランドピアノ)が出てきたので見てみたら、すごい詳しく書いてあって驚いた。wikipediaを見て参考にするときは他の企業サイトなどと見比べているのだが、ピアノは間違った情報が私には発見できず、さらにとても詳しい情報が1ページで確認できるので、とても重宝した。
ピアノのメジャーさがわかった一件であった。
小さなチェンバロを自作している木工作家もいるらしい。私もやってみようかな。。

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