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杉材で器を作ること。

私の器は杉の正方形の角材を年輪を上にして寄木にしたものを
削って、漆を塗って仕上げています。

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杉材は柔らかく、傷つきやすいため、通常器にはあまりしない材料である。

なぜ杉材を選んだか。
結論から言うと単なる私の願いである。
私は木が好きで、森が好きである。好きなものは元気であってほしい。
今日本の森があまり元気でないのは一般的にも知られてきた。
戦後に植えた杉や檜が鉄鋼建築が増えて、使われなくなり、
それでも木はどんどん大きくなって空を葉が多い、暗い森が増え、
下草が生えなくなり、土に力はなくなる。
そのほか多面的理由から木に元気がなくなっている。
これらの材料を使うことが課題になっている。東京オリンピック会場の木材建築もこれになぞらえるものだろう。
杉材は建築材として使うのが一番多く使用できて手っ取り早い。
木造住宅がもっと増えることも望んでいる。
けれど木肌が内側から見えない住宅になってしまうと内装に隠れてしまって普段の生活の中で木の大切さを感じることはあまりないだろう。
「食べる」という1日に必ず行うこと、命のやり取りであること、
私は杉を器に用いることで日本の森をより身近に、毎日感じられるのではないかと思った。もちろん食べるたびに森を感じるわけじゃない、ただ暮らしの中に
毎日の習慣の中に溶け込むことで、ふとした時に何か思うこともあるかもしれない。

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※写真:屋久島

杉をわざわざ寄木にしているのは日本の森林を表現したかったから。
日本の森のほとんどはもう人工林になってしまった。
戦後の人たちは私たちの資源になるようにと一生懸命植えてくれた。
ただ自然のルールを無視して杉や檜ばかり植えてしまったから
多様性のバランスが崩れてしまった、しかしそれでも森林組合をはじめとする
林業に関わる多くの人たちが森を整備して美しい森と共にこれからも
生きていく選択をしている。


杉の特徴は強い年輪
角材の年輪をバラバラに組み合わせることで天然の年輪にない文様が出来上がる。
椀などの円弧では予想できない模様が浮き上がる、私はそれを杉の美しい特徴として取り入れた器を作ろうと思った。

私の作る杉材の器は杉を消費するものではなく、感じてもらうふとした瞬間のための器、森を感じられるような器を目指して今日も器を作り続けます。

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