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『盤上に君はもういない』のプルーフを読んで下さる書店員さんを募集しています。

9月30日に新刊『盤上に君はもういない』が、KADOKAWAより発売されます。単行本です。

カドブンノベルで連載していたので、そちらで読んで下さった方もいるかもしれません。もともと7月刊行を予定していたのですが、コロナ禍で発売が延び9月刊となりました。

下記のプルーフ募集のツイートに絡めて、本作に対する想いを書いてみたいと思います。


この本は37冊目の新刊になります。

定期的に、作家として自己ベストと呼べる本を書けたなと思うことがあって。これまでは3年目に書いた『命の後で咲いた花』であったり、7年目に書いた『君を描けば嘘になる』であったりしたんですが、10年目にして再び、その思いを更新することが出来ました。

ミステリーが好きで。

でも、得意なのは多分、恋愛小説を書くことで。

自分のことを作家として、そんな風に捉えながら、様々なジャンルの小説を書いてきました。

【とにかく面白い小説】を書きたいなと、いつも思っていて。でも、その正解がどういうものなのか、よく分かっていなくて。今も言語化は出来ていないんですが、子どもの頃から漠然と夢想していた【とにかく面白い小説】というものが、今回、初めて書けた気がしています。

抽象的なことばかり言っていますけど、あ、自分は、ずっと、こういう小説を書ける小説家になりたかったんだなって。『盤上に君はもういない』が完成した後で、そう思ったんです。


将棋の世界には「棋士」と「女流棋士」、2つの制度があり、「棋士」には女性が一人もいません。同じ条件でなれるのに、歴史上、一人も誕生していません。

もちろん、女性でも棋士を目指している人はいて。統計だけ見たら「女性は棋士になれない」と答えが出ているのに、叶いそうもない世界に挑み続けている人たちがいて、そんな姿を本当に格好良いなと常々思っていて。だからこそ、<史上初の女性棋士>を目指す彼女たちの物語を書くことしました。

これは<女性の闘いの物語>です。将棋に心を奪われた彼女たちが、ただ、ひたすらに闘い、立ち向かう物語です。

そういう物語を書いたつもりでいたので、完成してから、僕も、担当編集者さんたち(何と4人います)も、驚くことになりました。

カドブンで連載中に、雑誌の校閲さんが、単行本の準備中に、別の校閲さんが、デザイナーさんが、作品を読んだ営業さんが、皆さん、次々と感想を下さったからです。(普段、感想を頂くことは、ほとんどありません)

しかも、皆さん「泣いた!」と言っていたらしく。僕も、担当編集さんたちも、泣ける話を作ったつもりがなかったので、最初は戸惑って。もちろん、嬉しいんだけど、これは闘いの物語なので「そうか、人によっては泣けることもあるのか」と思ったんですけど、皆さんがそう感想を下さるので、だんだん、あれ、これって、そうなの? もしかして、自分たちが考えていた以上の力がある物語なの? と、思い始めて。

特別な物語が書けたと思っていたけど、予想していた以上に刺さる物語なのかもしれなくて。<10周年記念作品>とか、単に、そういう数字の話ではなく、10年やってきて、37冊の本を書いてきて、だから、ここまで来れたんだよ! ついに、こんな小説を書けるようになったんだよ! という物語なのかもしれなくて。

だから、この物語を、一人でも多くの方に届けたいと、とりわけ強く思っていました。

ここ数年は特に「また、自分のことを知ってくれている人にしか届かなかったなぁ」と思うことが多くて。書店が減ってしまって、はじめましての方と出会う機会が少なくなったとか、どうしようもない要因もあるとは思うんですが、でも、せっかく特別な本が書けたんだから、最大級に届けたいなと願っていて。

最後に頼れるのは、やっぱり書店員さんなので。プルーフを一人でも多くの書店員さんに読んでもらって、『盤上に君はもういない』を知って頂けたらと思っているんです。

現在、KADOKAWA文芸編集部のツイッターアカウントにて、読んで下さる書店員さんを募集しています。


2年前に本作の準備を始めました。

今、当時は予想もしていなかったことが起きています。

男女の区別なく、30名ほどの人数で戦う奨励会の三段リーグで、上位2名に入れば棋士になれます。そして、3月に終わった前回の三段リーグで、女性で二人目の三段である西山朋佳さんが、3位になりました。勝敗的には棋士になっていてもおかしくない成績で(例年なら9割の方が昇段出来る14勝4敗でした。話題の藤井棋聖は13勝5敗で棋士になっています)、本当に惜しかったんです。

そして、今期も今期で凄いことになっています。もう毎週、西山さんの結果を知るのが楽しみで楽しみでという感じなんですが、3敗目を喫してからの5連勝で、最上位にほぼ追い付いたけど、リーグ自体が超混戦になっているので、残りの一ヶ月半で、どういう結果になっても不思議ではないという……。

『盤上に君はもういない』が発売される4日前に、今期の三段リーグの決着がつきます。まだ未来は分かりませんが、将棋界の歴史が変わるかもしれない、今年はそんな9月なのです。

図らずも時代ともリンクした、そんな小説になるかもしれません。

書店員の皆様に、

そして、一人でも多くの読者さんに、

どうか、この物語が届きますように。






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