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入口を確保したその先が大切


最近は、先天性あるいは言語獲得前にある重度難聴のお子さんに対して1歳時点で両耳人工内耳を選択することが多くなってきているような感じを受けます。

それだけ聴覚障害の発見時期が早くなり、発見された後のフォロー体制も整ってきた証拠なのかな?と捉えることもあったり。
音声言語の発達にとっては音情報のインプットがとても大切な基盤となりますし、多くのリサーチでも早期に人工内耳や補聴器などの補聴機器を装用することである程度の音の入口を確保することが、有意な差をうむことが指摘されています。

人工内耳というのは、その「入口」を確保する手段としてスタンダードな選択肢になってきていますが、ではでは、いったい

✔人工内耳とは?

人工内耳は、書いて字のごとく、

人の手によってつくられた、内耳の機能を代替をする機器のことです。
内耳については、☟の記事で確認してみてください!
http://blog.livedoor.jp/ayast/archives/9692749.html

この人工内耳は、補聴器のように耳にかけたり、耳の穴に入れて使用するのとは少し違います。
大きな違いは、手術が必要ということです。

□インプラント(埋め込み部)

□プロセッサ(体外部)

に分かれています。これまでプロセッサは耳にかけるものが主流だったのですが、ボタン電池のようなコイルとプロセッサが一体になって頭にペタッとつけるだけでかまわないものなど、
形としても色々登場してきています。
音情報を活用していこう→補聴機器の選択→さらに器種選択…と
一つ一つ決定しいくことってこう考えると多いですね。
そのたびごとに丁寧に、「どうしてこの選択をするのか」をご家族と一緒にしっかり考えていくことが大事だなあと感じます。

そんな人工内耳は、
マイクから音を拾い、
プロセッサ内で分析処理し、
埋め込み部に送り、
埋め込み部から電気信号を直接内耳に届ける。

電磁誘導の仕組みを応用しているそうです・・・。
文系の私はこれを勉強するのに相当時間がかかりましたし、今も勉強中です。

技術は本当に日進月歩ですね。

正直、人間が追い付いていない部分も多々あると思います。

詳しい仕組みについては、日本耳鼻咽喉科学会のHPで人工内耳について説明されています。
□人工内耳について(日本耳鼻咽喉科学会)
http://www.jibika.or.jp/citizens/hochouki/naiji.html

人工内耳は、現時点では聴覚障害がある方の誰もができるというわけではありません。
「適応基準」というものが耳鼻咽喉科学会で定められています。
これは2014年に改訂されました。
大学の講義でも取り上げ、内容について議論したことを思い出します。
私にとって特にインパクトが大きかったのは、子どもへの人工内耳埋め込みが1歳に引き下げられたことでした。

□人工内耳適応基準(日本耳鼻咽喉科学会)
小児:http://www.jibika.or.jp/members/iinkaikara/pdf/artificial_inner_ear-child.pdf
成人:http://www.jibika.or.jp/members/iinkaikara/pdf/artificial_inner_ear-adult.pdf


人工内耳は世界で最も成功している人工臓器といわれています。
人生の途上で聴覚障害となった方や聴覚障害で生まれてきた子どもなど、多くの方に「音の世界」をもたらす方法の一つとしてメジャーになってきています。

ただ、人工内耳は万能ではないとも思います。
魔法の機械ではありません。

あくまで人工内耳も補聴器も音情報の入口を「ある程度」確保する手段です。これをしたから自然に言語習得できていくのか、というと、そうではありません。
入ってきた音情報を意味のあるものとして認識し、自分たちの生きる世界の中に位置づけていくのは、その先の「脳」の役割です。
中枢性の聴覚障害に対しては人工内耳もあまり太刀打ちできないという現状がそれを物語っているようにも感じます。

人工内耳を装用すること自体は、手術という一つのハードルをこえれば可能かもしれません。
ですが、本当に大切な、その先の「脳のお仕事」にまで目を向けて長期的な視点をもって、色々な専門職が(と)連携して、一つひとつを選択していければなあ…って考えています。

自分(あるいは自分の子ども)は何のために人工内耳を選ぶのか?
人工内耳のメリット・考えられるデメリット、いろいろな視点をもって自分にとっての音の世界や聞こえというものと向き合いながら、じっくりと納得して決定することを大切にしていただきたいです。

だから私も、相談者の方が、不安なことや疑問、望むことを正直にお話ししてくださるような関係を築けるよう精進します!

読んでいただきありがとうございます!頂いたご支援は、言語指導に使用する教材開発や勉強会への参加費用に充てさせていただきます!