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戯曲『プライベート』(冒頭)

『プライベート』

◎密着

(劇作家は、演出家の稽古場に密着する。そこで行われる稽古は架空の作品であっても、実際に上演される作品の稽古であっても良い。劇作家の稽古場での発言権は、演出家及び俳優との話し合いによって決定される。架空の作品である場合は、どのようなシーンを稽古するかの提案も劇作家はしても良いが、その提案の採用不採用についても、演出家に委ねられる。劇作家はそこで行われることを記述する。記述の内容については劇作家に委ねられる。)

◎プライベートの濃淡

(この作品に出演する俳優の数ぶん、カードを準備する。たとえば8名であれば、1から8まで。数字が少ないほどプライベートを秘匿し、数字が多いほどプライベートを暴露する。数字の数の大きさは、語りの積極性/消極性や感情の起伏、発言の数などに影響する。カードの数字は、観客にみせて上演を行っても、みせずに上演を行って観客に想像させても良い。それぞれの持つカードは、合議によってあらかじめ決定されていても、観客の目の前でシャッフルされて配られても良い。ただし、必ず上演中に一度以上、持っているカードの入れ替えを行うこと。あくまでも設定であり、言いたくないことを無理に上演中に言う必要はない。)

◎記録

(劇作家、演出家、俳優、そのほか稽古場にいる人ならば、撮影者は誰でも構わない。稽古の日の各々の姿を写真で、録音で、映像で、なるべく記録する。)

◎失われた稽古の再現

(演出家は、記録された写真、録音、映像の中から一点を選び、俳優にそれを一部でも全部でも良いので上演中にみせる、あるいは聞かせる。俳優はそれを舞台上で再現する。ただし、複数回の上演がある場合、一度使った記録は、他の回の上演で使うことを固く禁じる。)

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※戯曲『プライベート』は『これは演劇ではない DOCUMENT BOOK』に収録されています。こちらから購入することが出来ます。

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