栗井

くちなし

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マガジン

  • ひとりごと

    日記、遺書。私のひろいあつめ。

  • いいたいこと

    世界に思うこと、丁寧に書くやつ。

  • ふぃくしょん

    読んだ本や観た映画から、浮かんだこと。

最近の記事

3月季。

あったはずの巣を目指して戻ってきたツバメが、行き先を見失って飛んできていた。そこに巣はなくてツバメは行ったり来たりを繰り返している。 凍えそうな寒さもなくなり花粉の飛散量だけが気になる頃。 朝、洗顔のためにお湯を触り、初めて自分の手が冷たいことにきづく。 身体が、置いてきぼりになっている。 今までは自分の心にしか意識が向いていないあまり自分の体が蔑ろになっていた。 最近は自分の内側に意識を向けている時間なんてなかったはず、 心が外に向きすぎて意識を体に向ける余裕がなかった

    • 2月季。

      朝、静電気をくらいながら車を降りる。 あられが降った。 雪のように白く積もってはいないように見えるのに、歩くと地面からしゃりしゃりと音がする。 あられはすごく跳ねるので、掴むのが難しくキャッチする遊びをしていたら会社についていた。 というのは嘘。冷たく寒くてすぐに飽きてしまった。 ひとり遊びが得意な人はかわいいなと思うので、ひとり遊びが得意になりたい。 軽い気持ちでいった病院で、手術が必要な症状が見つかった。 病院で治療を受けるなんて小学生の頃の水いぼ以来だったけれど、

      • 1月季。

        新年会に行った。ジョージアのワインを飲んだ。初詣に行った。山の上は雪と霙と雨だった。ターナーをみた。たくさんの感性と表現が集まる場所に行った。人知を超えた美味しさに触れた。 体調を崩した。心がひっくり返ってしまった。 最近は幸せすぎて、心がかけていく感覚をずっと忘れていた。 見えないふりと、なかったことにされていく心を留めておく方法を私はもうあまり思い出せなかった。社会人ってすごいね。 でもこんなこと誰も知らない方がいいよと思う。 冬は寒くて非常階段にも引きこもれないや。

        • いばしょのおまもり

          どうしようもなくだめになったとき 私の人に頼れない性格を加味してもそれでも助けてほしいと、 手を伸ばせるような人が東京にしかいない。 だから私は早く東京に出なければいけない、私に息をさせるために。 そんな思いで生きていた。 今月頭、東京に遊びに行った。 半年前に行ったバーで会った人たちに、また会うためだ。 そこではたくさんの懐かしい顔に再会した、 今回私を誘ってくれた人だけじゃなく、半年前にあった人みんなが私のこと覚えていてくれていた。 おかえりと言ってくれた、また会う

        3月季。

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        記事

          肉まんと、

          冬の寒い夜、1つのコンビニの肉まんを2人(多くの場合それはカップル)で分け合うという幻想が冬、もしくは肉まんの風物詩として世の中に擦り込まれたきっかけはなんだったのだろう。 残念ながら、私の肉まんは孤独の象徴である。 夜に予定もなく、中途半端な時間に寒さの中1人で家路についているとき、遅い時間であればあるほど、寒ければ寒いほど、私はコンビニで肉まんを買って、家までの道で歩きながら頬張ってしまう。 さして体を温めてくれるわけでもないし、分け合う相手なんていないのに。 手軽

          肉まんと、

          未必のいのり

          (写真すべて:@manimanium) 今年の初めに、ある写真家の方と女の子が話しているのを聞いた。 「カメラの前にいる貴方の輝きが、光が、貴方に届きますようにと願いながら撮っています」 そういったことを話されていた気がする。 「今はわからなくても、受け取れなくても、それでも写真は残り続けるから。受け取れる状態になったときに見返して、その光を、写真に込めたものを受け取ってもらえたらいい、その瞬間が来るまではお互いつらいけれど。」 私はそれを他人事のように、ぼーっと、けれ

          未必のいのり

          花向け

          「魔法を持っていて、たしかにそれはとても苦しかったです。 でも捨てたくはありませんでした。 私は必ず、それを好きになれると信じていました」 -- 奇麗な声で生まれたかった、私があの絵を描きたかった。 うまく笑える人間でいたかった。 なんでもいいから、わたしを外に出す手段が欲しかった。 憧れにはいつも届かなくて、 自力で作らなければあるはずのない特別を、わたしだけのとくべつを、 ずっと探している。 どこで間違えたのだろう。 突然息ができなくなってしまった。 本

          偶々の運命

          「こんなに可愛いのに、こんな思いをしてるなんてかわいそう」 母に連れられ会わされた、母の同僚らしい人間はそう言った。 私に同情したような目を向けて、心からそう言っているようだった。 ここには、多感で人生経験の少ないまだ若い女の子が、とか、そんなような意味も込められていたのだと思うけれど、 とにかく気持ちが悪かった。 どうして、生身の人間を目の前に、その人生を美化して悦んで、挙句かわいそうなんて言葉が吐けるのだろう。 私の外面が他人の目にどう見えているかということと、 私

          偶々の運命

          みつきぶりの月報

          赦されたくて生きている、 罰かのような気持ちで生かされているとでも言いたげな 生きているというにもおこがましいほど、ただ意識だけがここに置かれている。 今までの私を作ってきたもの、そんなものになんでもなかったような顔をして笑って幸せに生きることが世界への復讐だなんて、ぎらついていたこともあったのだけど ここに存在する肉体と魂はとにかくとくとくとすべてが希薄である。 言葉が頭と思考を覆いつくすような感覚がほとんどなくなってしまった。 というより、イヤーワームのように頭に言葉

          みつきぶりの月報

          月報、というには余りあるもの

          久しぶりに文章を書きました、 ずっと書いていなかった 外の世界に目を向ける以上に、自分の内側に触れることをずっとずっと拒絶していたから どんな自分もどんな感情も取りこぼさないようにと今まで必死に大切に紡いでいたものを、自分で指の隙間からぼろぼろと零してぐちゃぐちゃにしたくせに、今更またかき集めてくっつけようとするなんて、とても滑稽だったから でもまた最近心が文章として浮かんでくるようになって、なんだかまた文字に起こしたいのかもしれないなとおもって、少し委ねてみることにしま

          月報、というには余りあるもの

          芸術の深淵

          また、表現が糾弾される現場を見た。 芸術や創作物を構成する表現というものに、不適切という概念をあてはめてもいいものか。  「芸術」と「広告」は全く別物なのだということ。 本人のエゴによって表現者の内側から絞り出して生み出される「芸術」と、世の中の人々を啓蒙するため、明確な意識の変化を目的として作られる「広告」とでは、性質が全く違っていることをわかっていてほしい。  広告には適切さが求められている。誇大広告ではないか、差別の意図が含まれていないか、世間の意識を惹き付け、時に

          芸術の深淵

          幸せなことが かなしかった

          「毎日楽しいけど、でもたまに辛くなる。夜、眠るときなんかに。 その一日が楽しかったら、楽しいだけ、辛くなる」 そう彼は言った。 この言葉にかつてないほど心を触れられた。 たくさん優しさを向けられた日、愛を向けられた日、笑顔で溢れた日、私という人間を生きられた日。決まって夜、間接照明のオレンジの光に照らされながら、ベッドの上で悲しくなった。寂しさとは少し違う、申し訳なさと喪失感を混ぜたような、確実に自分の中の何か大切なものが抜け落ちたような感覚、もしくは毒に蝕まれているよう

          幸せなことが かなしかった

          死生活

          或る賞レースから1週間、私は穏やかな興奮状態にあった。変わり映えのない日々も家に引きこもる生活もずっとそれは1年前から変わりないのだけど、気持ちは前を向いていた。 何かしたい気持ちに溢れていた。あぁこれはいい。鬱はもう治るんだろう、連れ添ってきた鬱もミスiDも、この1年は通過儀礼だったのだ。むくむくと湧く元気とともにそう感じていた。だけどやっぱり長くは続かなかった。木曜日、金曜日、と日が進むごと、確実に何かが薄まっていくのを感じていた。代わりにやはり黒い影が、肺の辺りを侵食

          死生活

          みえるものしかほめられない

          りすとかっと、 その言葉をツイッターの検索タブに入力した日があった その先には私の英知を越えたせかいが、という話はあまりしたくない 世の中では目に見えるものしか判断されない. こんなだったけどここまでかわいくなったよ、太ってたけど私こんなに痩せたよ、虐められてたけど 今こうして輝いてます、 好きでしょそういうの、目に見えるから. 努力した人も努力本体も否定するつもりはないけれど、目に見えてすごいものって当たり前にすごいじゃん、そんなすごいものをすごいって言うことなんかす

          みえるものしかほめられない

          好きとは愛とは恋愛とは、について

          恋愛感情を持って好きになる相手の特徴ってなんですか 恋愛感情を抱く相手に求めるものってなんですか 一緒にいて楽しい、困ったときにそばにいてくれる 頼れる分類の相手なら恋人でなくてもいいはずだし ではそれは私にとって恋人に求めることではないんだと思う ならばどんな人が好きかと考える 私は弱さと強さを表裏一体で持ち合わせているような 人間味のある人が好きだ その人なりの苦しみや葛藤があって、そんな自分の弱さを受け入れる強さがある人、そんな自分を一生抱えて生きいてく覚悟のある人

          好きとは愛とは恋愛とは、について

          消化と昇華、埋葬。

          序抽象的な質問が嫌いだ。 これについてどう思いますか、この間のイベントはどうでしたか、最近どう、という質問の意図が読み取れない質問。 私の個人的な感想が求められているのか、説明的解説を求められているのか、そもそも大して興味がないのか、 質問の背景を明確にしてくれないと、さ。 きっと人の求めることがわからないのが私にとって人間関係も今の活動も問題なんだろうけど。 みすiDここまできてどう、2020どうだった、という会話だって 言いたいこと?誰に言いたいこと?環境の変化のこと?

          消化と昇華、埋葬。