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お茶が豊かにするものは

過ぎ去りし昨年のはじめ頃にラプサン・スーチョンというはじめましてな紅茶に出逢いました。

調べれば、イギリス王室にも献上されている、世界で初めて作られた紅茶なのだそうです。普洱茶にも似た、松の葉で燻製されたという独特なスモーキーな風味がなんとも魅力的でした。

知っている人はどれくらいいるでしょう。
ひとりの時間だったので、そんな小さな話題をシェアする人もその場にはいなくて、noteの下書きにメモしたまま長い間眠らせてしまっていました。

お茶については以前から書きたいなぁと思うことがあったりして。

まだまだ知らないお茶がこの世の中にはたくさんあるのだと思うと、ちょっとわくわくした出来事でした。
それでも一生のうちには出逢えないお茶もきっとたくさんあるのでしょうけれど。
だからといって血眼になって世界中のいろんなお茶を調べて買い漁ったり取り寄せたり、流行りのお茶を片っ端から網羅したいとは思いません。
あくまで自然に出逢うことが楽しみで、いつどんなタイミングで何に出逢うのか、何歳になってもお茶との出逢いやまたそのお店との出逢いを楽しみにしていたいなと考えています。


カフェを訪れた時にはできるだけメニューを隈なく丁寧に見るようにしていて、はじめて見る名前や知らない種類のお茶に出逢えるとちょっと嬉しくなり、実際に頼んでみたりもします。
お茶を2つも3つも頼むことも。

そこから広がる世界の広いこと。
知識も味も歴史も。その時間は無論毎回豊かなものになります。


少し前に話題になった松葉茶も、先日思わぬタイミングで飲む機会に恵まれました。
良くも悪くも賛否両論、世の中でいろいろ言われているものを実際に自分の舌で味わうことには意味があると思い注文してみました。
そしてその後の身体の反応や体調の変化は体験となって感想と評価と記憶に繋がっていきます。
自らの身をもってお茶の効能ごと体感し“身体で味わう”というのが私のひとつのお茶への敬意と楽しみ方だと思っています。続けることで効能や効果を発揮するお茶の種もあるからです。

古くから必要な栄養や足りない栄養をお茶で補っていたというお話もよく耳にします。
物にあふれる今の時代、お茶自体に栄養を求めると言うよりは、“お茶の時間”そのものが心の栄養と癒しになっているようにも思います。


下北沢ではラクサパンナというあまり聞き馴染みのない紅茶や、ずっと飲んでみたかったカキドオシのお茶にもばったり出逢いました。

左下「ラクサパンナ」
花を思わせる香りとほのかな甘み
“シモキタ園藝部  ちゃや”さんの
秘密基地のような2階でいただいた、
「カキドオシ」の入ったお茶(写真左)


ラクサパンナはディンブラにある有名な茶園の名前なんだとか。ハイグロウンティーだということも知りました。紅茶は好きですがそこまで詳しくなく、調べ始めると次から次へと飛び出してくる知らないワード。いつどこのどんな場所で採れた茶葉かを追究し始めてしまったら沼りそうです。
まだそれをどこかでセーブしている自分もいます。
多少の知識は必要だとは思いますが、精通しすぎることは時に良いことではないなぁとも思う近頃。
純粋に感じるままを楽しんで味わって憩う時間の過ごし方くらいがちょうどいいように感じます。


昨年京都でお初にお目にかかったモルゲンタオ。
経堂のCafeで気になったヤラナイト。

出逢いはいつだって思わぬところで突然やってきます。


下北沢はとくにお茶に富んでいるようで、他にも本格的なマテ茶や、食べるお茶にも出逢いました。

中に茶漉しの付いた
シルバーのストローで飲む「マテ茶」


なつめやクコなどの入った食べるお茶(Hot)

どれもたまたま訪れた場所や通りかかったところで出逢いました。


私は八宝茶が大好きで、よくお家でも素材を仕入れたり集めたりして八宝茶を作る時があるのですが、それが自分にとってのプチ贅沢な時間でもあります。その時々で入れる八宝の内容や分量を変えたりします。

龍眼、銀耳、ナツメ、クコ、蓮の実、菊花、山査子、玫瑰、松の実などなど体調に合わせて八種を選抜します。
ほんのり甘くするのが好きです。
身体の内側から整えていくお茶は、自然と心も整ってゆきます。

こちらは薬膳スープ用の食材ですが、
八宝茶と似通ったものも
こちらは三宝茶



お茶を傍らにひとりで過ごす時間もすきですし、誰かと一緒にどっちにしようかと悩んだり選んだりして、話に花を咲かせながら空間ごと味わうお茶の時間もすきです。
「はぁ〜♪」と一緒にほっとひと息つく瞬間もたまりません。


母娘でのお茶の時間も、私達母娘には普通の母娘以上に意味を持つ特別な時間となります。

近所の小さな喫茶店にはあわてんぼう過ぎる(?)サンタさんがいました。笑

最近ではケアラーズカフェやオレンジカフェの存在にとても救われている人も多いかと思います。

南林間にある“マチツナガル”カフェ「あかり食堂」との出逢いも、“ヴィーガン”がきっかけでしたが、それ以外にもたくさんのことに理解や協力を示していただけたりと、ありがたい繋がりに行く度に感謝が溢れます。
大切にしているカフェは本厚木にも。
“お茶”が“これからも大事にしたい縁”を繋いでくれる場所となることも多いです。


趣味仲間との近況報告と情報交換の大事なひとときにもお茶は欠かせません。

『羽二重団子』
シネマネコ🐾

「ここ、美味しいよ!」と、どちらかのおすすめのお店を訪れたり、
「このカフェに入りたい!」とピンときたお店に入ったり。
その時々でのお店との出逢いや選択もまた楽しいです。


赤福本店

普段は現場で会うだけの方とも、遠征先で美味しいお茶の時間を共にすると、知らなかった相手のこともみえてきたりして、仲も絆も深まります。
たとえ誤解や偏見や先入観、蟠りなどが自分の知らないところで起きていたり存在していたなら、その原因を一緒に知って解いていく大切な時間にもなります。
殊に大道芸の場所はいつでもみんなにとって心地よい場所であってほしいと切に願っています。そのためなら真剣に問題と向き合い行動します。
誰もやらなくても地道に。私はそういう見えない部分も大切にしています。


何気ない季節の話題から深い話まで。
お茶は素直な自分の気持ちと相手の心を導き出してくれるので、相手の本音や考えを伺えた時には、本当にいい時間を過ごせたなと、じんじんぽかぽか。


雰囲気のある喫茶店では、その時々でお客様それぞれに選んで出していただけるカップとソーサーがとても楽しみだったりもします。
お茶に添えられて出てくるひと口大のクッキーやチョコレートにも嬉しくなったりしますよね。



“お茶”には昔から特別な意味と効能があるように感じます。

ちょっと作業が捗らなくなった時やお勉強に集中できなくなった時にはリフレッシュに、
誰かをお招きする時には良いお茶で歡迎とおもてなしの心を表し、
家族でテーブルを囲う時、友人とのひとときなどは団欒と憩いに。

お茶はいろんな顔と意味を持ちます。

ルーマニアでは投降したロシア兵にあたたかいお茶が真っ先に振舞われたという記事を見かけました。

「一緒にお茶を味わう」ことに、国も人種もなく。湯気の立つあたたかく差し出された心がそこにみえてだたただ感動しました。投降した兵士たちも迎え入れた人達もみな安堵の表情と笑顔を浮かべて飲み物を共に口にしていたのが忘れられません。

お茶には言葉も国も戦争も超える、みんなが笑顔になるものすごい力が潜んでいるということに、改めて気づかされました。


そしてお茶の時間は、次への集中ややる気スイッチの切り替え、激励にもなります。


お茶が大好きな私。
退職時の餞別にもたくさんのお茶をいただいきました。
私が誰かへ“お茶を贈る”場面でも、とりわけ心を込め、贈る相手を思い浮かべて選びます。

そんな生活や人生の様々なシーンで欠かせないお茶。

どこか少し遠くへお出掛けした際には、その土地のお茶を味わったり購入するのも楽しみです。
香川へ行った時にはオリーブ茶、伊勢へ行った時は伊勢茶、城崎や静岡でもそこでしか買えないお茶と一緒に帰ってきました。


島根にある紅茶専門店Pungencyというお店のお茶を、友人のお姉様がおみやげに買ってきてくれたのですが、感激するくらい香りが良くて美味しくて、そもそもそれを知ったのは友人宅でご馳走になったのがきっかけなのですが。

T4Uで、Tea for you。

それぞれのお茶のネーミングにもセンスとおしゃれさを感じ、どれにしようか迷い、どれにも惹かれます。
こういうの大好きです。

個包装のパッケージを開封した瞬間から漂う質の良い芳香。ティーバッグをポットに移したあともパッケージをゴミ箱に捨てられずにしばらくクンクンしてしまうくらいいい香りです。笑

そんなちょっと大声では言えないお話を漏らしたら、その友人も「分かる!私もする!」って言っていて、みんなおんなじことを思いおんなじことをするんだなって思ってちょっとクスッと、そしてどこかほっとしました。
いつか自分の脚で直接島根のお店に買いに行くのが楽しみです。

そんな類のおすすめの紅茶がもう一つ。
こちらはかなり有名なので、すでにご存知の方もたくさんいらっしゃると思いますが、TWGのフレンチアールグレイです。販売の店舗もあちらこちらにあります◎


こちらを知ったのは以前勤めていた大学病院で、その日の受け持ちの診察室の担当女医から分けていただいたことがきっかけでした。名前は知ってはいたものの、気になりつつも自分で買うことはなくて。その目の覚めるような美味しさに感激を覚えました。
美味しさにも感激でしたが、私がいちばん感動したのはそのしっかりとしたティーバッグの縫製。すべて手縫いで100%コットンというところに、もうズキュン💘でした。こんな素敵なお茶が世の中にあるのだと知って衝撃を受けた一品でした。

こだわり抜いたもの、想いのこもったもの、手作りのものにはいつだって心を動かされます。
開けた瞬間、手に取った瞬間に違いが分かります。
恐ろしいことに、このTWGの紅茶を飲んでしまうと、美味しすぎてもう他のものが飲めなくなってしまうほどの本格的な香りと味わいです。

良いものは特別な時やがんばった時などに、適宜に大切に飲むようにしようと、この時から心に決めました。

お茶が大好きすぎて、数年前からとうとう自分でも作るようになりました。
季節の野草や葉を摘んで作る簡易的なものなのですが。

びわの葉茶、柿の葉茶、よもぎ茶、スギナ茶、どくだみ茶、イチョウ茶、無花果の葉茶etc…

洗ってから軽く天日干しをして蒸すのですが、その蒸している間もお部屋中にいい香りが漂って満ちて、なんとも言えない幸せな気持ちになります。
そこからさらに仕上げの天日干しを行って完成。

葉っぱを採らせていただいた方にもお礼に、出来上がったお茶をお菓子と一緒にお届けします。

今まで捨てていたパッションフルーツの皮でもお茶ができると知ったので、次回パッションフルーツを食べた際は絶対に皮を捨てずにお茶を作ろうと思います!


おすすめのお茶はまだまだあります。

目白に住んでいた時に出逢ったのは寛永堂の黒豆茶です。黒豆そのものを煮出して淹れるお茶です。店頭でお味見を出していただけるのですが、それがなんとも香ばしくてまろやかで美味しい黒豆茶で。
実は味見をさせていただくお茶は、商品に記載されている淹れ方とちょっと異なる工程と工夫をして淹れているのだとその奥義を伺ってから、私もお家でずっとその淹れ方をしています。渋味やエグ味、雑味が無くなります。取り出した黒豆も別の一品にしたり、お茶請けにしたり、お茶を飲む際に数粒戻してお茶に浮かべたりして使用。

通常はお水が使用されるところ、黒豆茶を使って練られた特製の黒豆羊羹も大好きです。

黒豆茶




「これまで出逢ったお茶の中で一番おいしかったお茶は?」と聞かれたなら即答する、忘れられないお茶があります。

20代の頃、お仕事で台湾へ2〜3ヶ月に1回の頻度で行っていた時、とあるお寺で出していただいた花茶。
お寺の方がお庭からパパッと摘んできてサッと洗った真っ白なお花を烏龍茶の茶葉と一緒にポットに入れて作った即席の花茶。
お寺の広いお庭の東屋でご馳走になったのもあって、もうこれは天界で出されるお茶なのではないかと思うほどの芳醇で清らかな香りと華やかさ。爽やかなのに深いお茶でした。
例えるなら、不老長寿や若返りどころの話ではないくらいの美味しさです。

作ってくださった方に、すぐにこのお花はなにかと尋ねたところ「金銀花」とメモに書いてくれました。調べると別名をスイカズラと言い、日本でも春には至る場所で見ることができるお花でしたが、お茶に入れていただいた現地のお花と日本のものとでは、見た目も大きさも色も異なるようです。

そして美味しい淹れたての烏龍茶というのは、ペットボトルに入って売られているあの黒褐色のものではなく、透き通る黄金色をしていて、舌ではなく喉で味わいます。苦くなく、むしろ喉越しが甘いのです。
はじめて本場で“本物の烏龍茶”を淹れていただいた時はあまりの違いに衝撃を受け、またその香りと美味しさにとても感動しました。

緑茶も紅茶も烏龍茶も、それぞれ同じチャノキの葉から作られますが、萎凋による発酵度が違います。烏龍茶は半発酵のお茶。

微生物の働きによって発酵を進める後発酵のお茶もあります。普洱茶や碁石茶(高知)、阿波晩茶(徳島)などが代表的です。

そしてよく耳にする「黒烏龍茶」。こちらはそもそも存在しません。これはサントリーが独自に開発した商品名で、普通に淹れた烏龍茶を使ってさらにもう一杯烏龍茶を入れたもの。2度揚げならぬ、2度淹れと言ったら分かりやすいでしょうか。
ポリフェノールを多く配合させた烏龍茶の商品名ということになります。


こちらは薔薇茶


人生のどんなシーンの傍らにもあるお茶。お茶には今も昔も秘められた特別な力と繫がりを感じます。

お寺に勤めていたときにも、毎日欠かさず奉茶を行っていました。御心からの一杯を淹れて神佛に奉ずることは毎日の大切なお務め。もはや「仕事」という概念すら超えて行っていました。
暴風雨の日も大雪の降る日も日照りの日にも。堅く変わらない真心を込めて向かい、誠心誠意を尽くして同じ時間に奉上するお茶は、何にも代えがたい清らかで尊いものです。


お茶の魅力は底しれず。
これからどんなお茶に出会えるのか、未だ見ぬ旅とお茶とその出逢いと時間に、胸を躍らせています。



手づくり金木犀茶(桂花茶)

お茶を作ること、味わうことは季節ごとの楽しみでもあります。


お茶が豊かにするものはまだまだ測り知れません。


私にとって「お茶」との出逢いとその時間は確実に心と人生の豊かさとなり、これからもずっと特別なものになっていきそうです。


職場で記録に時間を費やしていた時、「誰よりも頑張っているから」と、看護師さんが桜の塩漬けの浮くお茶を特別に淹れてくださり。
それが本当に嬉しくて美味しくて、よし頑張ろうと思えた最近のできごと。

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