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子供が作る社会は・・・

旧正月の新月。
なんだか旧正月の方が新年という実感がするので、毎年ここで意識が切り替わる。一人アトリエでセージを炊いて久々に瞑想をして、このメルマガを書き始めた。私は他者と何かを共有したり交換したり調和することが、とても苦手だった。子供らの気配で満ちている場所が、自分の心身の居場所になるとは思わなかった。

窓辺に光るサンキャッチャーのクリスタルが、小さな虹をいくつもリズミカルに私に投げかける。アトリエを見渡すと、子供らが作ったものたちが並んでいたり、ビー玉が転がっていたり、作りかけのものがその子がそこに居るかのように置いてあったりする。その間を小さな虹が子供らの気配と交ざりながら、コロコロとアトリエで戯れている。

私は子供好きではないし、一人でいることが好きだ。他人がどう生きようが、共生や共存にも大して興味も関心もない。そんな私が他者とは最も相入れたくない創造性を、子供らと共有している。自分の行動がとても不可解だ。けれどもその不可解さに最も興味がある。

制作時、私は自分の画材や道具は彼らには貸さないし、制作中の作品に触ることも許さない。子供らが互いにどう関わろうがもちろん自由だが、私との関係性や距離感についてはかなり明確に私から一線を引いている。なので、それをひどく冷たく感じている子もいるかもなあと思っていた。

そんな折、子供らが互いのイメージを動物に当てはめて話していた。
「○ちゃんはライオンだよね、肉食系だよ」とか
「○くんは細かい動きをしているからハムスターだね」とか話している。
その中で私が動物だったら何かという話になり、
「あゆきさんは牛とか羊って感じ」
「タコだよ、あゆきさんは!手がいっぱいある感じするもん」
「馬とかかなー」

意外だったのは、子供らの中で私は温厚な印象があるらしいことだった。そりゃ声を荒げるなどはないにしても、私の物言いは厳しい。他の作家などに様子を話すと、「子供相手に随分と容赦ないね」と言われるくらいだ。逃げ道は与えるが追い詰めるし、寄り添わない。それには反感や寂しさや不安や怒りを感じ、泣いたり、怒ったり、拗ねたり、その場から逃げ出したりしたりと、ほぼ全員の子供がそれを経験している。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              私もその度に「もう来ないかもなー」と思うが、実際はそうでもない。

3年間子供らといて感じるのは、彼らは人間関係を大人以上に冷静に捉えているのだということだ。「この人はこういう人だから、こういう付き合い方がいいんだ」と認識するのが早い。皆一度は私との関係性に大きくストレスを感じるが、その時に本人の中で納得できると、以後は特にそういうことはなくなる。まあ要するに、私に対して親や親しい人のような触れ合いや、自分を受容してくれるという期待を全くしなくなる。「この人は美術のこと以外は、全く無意味な人」という感じだろう。そういう冷徹さを普通に共有できるのが、子供はいい。

子供は端的な厳しさを「否定された」と捉えることはないようだし、恐怖にもなっていないようだ。彼らは「否定」と「批判」の違いをちゃんとわかっている。それは本当は当たり前のことなのだけれども、実際の大人社会では同じに受け取る人が少なくない。他者に肯定されたい人の多さにはびっくりする。なんでそんなに他者を信頼できるのかよくわからないが、まあ私が鈍感なんだろう。

子供らも私のそういう懐の浅さを知っているので、必要以上に頼ってくることはない。「自分を全面的には受け入れてくれない人」と明確に認定してもらうことは、重要だ。ここはアトリエなので創造という局面でのみ、繋がる場所だ。

私の定位置。最初は別の位置だったが、子供らはどうやら私の席がよく見えるようで、どんどん席を奪われていった。アトリエでは基本的に小学生は席は決まっていない。中高生は自分で決めている。静かに制作したい時は静かな高校生の近くに行ったりしている。私も何となくその日の子供の雰囲気で、席を変える。


現在は人数が多いため小学生の受け入れはストップしていて、今いる子供らはみな互いに長期的に親しい子が多い。新しい子供が入ってくると当然だが子供らの関係性や場の雰囲気も大きく変わる。最近は新しい人が入ってこないので、子供らは漫然さを感じているのか、そこに新たな流れを作ろうとし始めた。つまり新しい社会形成。

見ていると子供も大人も同じだなーと思う。まず、言語力がある子が場をコントロールしようとする。それにすぐに反発する子、違和感を持ちながらも心に収める子、反発できないため陰で愚痴る子、中和しようとする子、雰囲気に流される子、孤立を選ぶ子。ヒエラルキー化しようとしている感じ。強者と弱者、多勢と無勢、優劣。

善意であるにせよ支配しようとするから、こんなことになるんだなあと見ていて思った。自分の自由と他者の自由は同等だと、いつ気づくのだろう。あるいは、気づかないまま大人と同じような息苦しいヒエラルキーを作ってしまうのか。

私の発言力が一番あるに決まっているので、決して子供らの関係性の中に入らない。個別に私に相談してくる子供には、説教のようなことはせずに「へー」とか「そうなんだ」とか話を聞くことだけをする。意見を求められれば応えるけれども、まあそういうことも殆どない。大人もそうだが、だいたい人は自分の話を聞いて欲しいものだ。

これから子供らがどういう社会を作るか、見ものだ。不思議なのは苦手だろう相手とも、割と自分から関わっているように見えることだ。もしかしたら許容できるんじゃないかと探っているのか、単に苦手だということを忘れているのか、どうなんだろう。

さて、今日は珍しくおすすめなどをしてみようと思う。

<おすすめ本(高学年〜大人向け)>
ストーリーテーリングとして子供に”学び”を伝える、ネイティブインディアンの物語。彼らはどうやって子供に”学び”を伝えたのか。学ぶということの本質を知りたい方はぜひ。図書館で借りられます。これは私も制作中に子供に読もうと思っているところ。今は子供の希望により、ガネーシャの「夢を叶えるゾウ」を読み聞かせ中。

<子供におすすめなワークショップ(大分)>
大分美術館(OPAM)教育普及プログラム
土曜アトリエ(2月)みる、つくる、かんじる「みんなの土曜アトリエ・体験から鑑賞まで」
全て無料で参加できるプログラム。美術館が本格的に数年前から子供の教育に関する美術企画を始めたもの。実力ある作家が参加していることが多い。

<親子におすすめな本屋(大分)>
絵本やかのこ
大分市の街にある小さな子供サイズの絵本屋さん。店主が各地でお話会も。店主のこだわりチョイス。古本と新書あり。

<おすすめギャラリーカフェ>
Hi!yoriyo cafe(竹田)
竹田市城原の古民家をアーティスト達がリノベーション。cafeメニューは身体に優しい素材を使用。隣には本格的なギャラリーあり。Japan Gallery主宰。11:00〜18:00※不定休(営業日投稿要確認)

加藤理容所(カフェ)
大分県由布市挾間町来鉢235 235番地
木曜定休 12~21時
マニアックで個性的な店と作品と音楽。店主が作る木工作品が面白い。

一見、理髪店。

今日は高校生の男の子と「趣味と仕事の違い」について話し合う。「これ以上はないという完成の境地に辿り着いたとしても、自分はその後もやめないと思う」とはっきり言っていて、素晴らしいなあと思った。

というわけで、次回は2月24日満月🌕です!久々に子供のインタビュー記事にしたいと思っているところ。ではみなさま、よき切り替えになりますように〜。

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