夢を見た。

赤い車に乗って、どこかに向かっている。
助手席には若い女性がいて、道案内をしてくれるのだが、どうにも案内が下手と言うか、タイミングが悪く、交差点ギリギリで、

「あ、この信号右です」

などと言われて、慌てて進路を変えなければならず、運転しながらヒヤヒヤする。

「あの、もう少し早めに案内してもらえませんか」

と言うと、見知らぬ女性は明るい笑顔で、

「そうですよねー、危ないですよねー」

と言うが、全く改まることはない。

交差点が迫ってきて、ここは確か右折じゃなかったか、と思って、

「あの、ここ、右折じゃありませんか」

と、尋ねると、

「あー、そうです、そうです。すみません」

なんの悪びれもなく笑顔で言われて、慌ててハンドルを右に切ると、車は脇道に逸れてしまった。
進んだ先は、雪が積もっていて、この車、タイヤはスタッドレスだったかなあ、とぼんやり考えながら運転していると、ハンドルをとられて、あっという間に車は崖に転落してしまった。

「わー、どうしましょう。ちょっと妹に電話してみますね」

助手席の女性は、こんな状況でも笑顔を絶やさず、携帯を取り出すと電話を始めた。

「もしもし?実は今事故っちゃって、え?ちょうどニュースで見たって?え?なに?どう言うこと?私たち、死んじゃってるの?」

女性は電話を切ると、困ったような、それでも笑顔のまま、こちらを振り返り、

「どうしましょう。私たち事故で死んじゃったみたいです」

どうしましょうって…どうにもならないじゃないか。

壊れた車と、降りしきる雪をぼんやりと眺めながら途方に暮れていた。

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