心のカタチ。
大切なものほど目には見えないことが多いんだよ、と、あの人は言った。
例えば心、とかね、目には見えないけれどとても大切だよね?、そう言うとあの人はポケットから小さな瓶を取り出した。
瓶の中には、無色透明な液体が入っていて、光を反射してキラキラと揺らめいていた。
これはね、心の形が見えるようになる魔法のクスリなんだ、と言いながらあの人は私の目の前で瓶を揺らす。
中の液体は無色透明だと思ったが、良く見ると、虹のようにいろいろな色が混ざりあっていた。
飲んでみるかい?
そう言いながら、あの人は私に瓶を差し出す。
恐る恐る受け取ると、瓶はキラキラと光って、とても美しかった。
気付くと、私は瓶の蓋を開け、ひと思いに中の液体を飲み干した。
甘いようなそれでいて苦味のある液体は、懐かしいような香りがして、喉を通り過ぎると熱く火のついたようになり、思わず喉を抑えると、指の間から光が溢れ出た。
びっくりして手を離し、胸元に目をやると、キラキラと鮮やかな赤い色に染まっていた。
とてもつらかったんだね、そんなに傷だらけで、とあの人は言い、私の胸から溢れる赤い光を見つめた。
そして次の瞬間、両腕で私を抱き締めると、
もう大丈夫、苦しまなくていいんだよ、と、優しくささやいて私の髪をそっと撫でた。
私の胸からあふれる赤い光は、だんだんと薄くなり、いつの間にか桜の花びらのような薄いピンクに変わっていった。
もう大丈夫だよ、大丈夫だからね、とあの人が言うたび、光はキラキラと私たちを包み、私は幸せな気持ちに包まれていった。
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