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我、夢の先で何を想う


1.夢

「モデルになる!!」
そう意気込んで会社を辞めた。

当時付き合っていた彼女も、愛車も、家族も親友も、全て地元に置いて、
単身上京。
週に10もあるバイトを半年継続して、
お金を貯めて、海外に挑戦した。
それは、日本に帰ってきてからも、継続している。

夢ってすごい力を持っているなぁ、と思う。
どれだけ体力的に、精神的にしんどくても、
まぁ、折れない。
全ての行動に一本芯が通ってるみたいで、力強い。
サラリーマンを辞めて夢を追うことを尊いと思う人もいる。
だからありがたいことに応援してくれる人達がいる。

私も好きなことを仕事にしたかったから行動した。
でも、それが成し得た時、どんな感覚なのか分からなかった。
世の中には、サラリーマンが好きで、公務員が好きで、やっている人もいるのだろうが、
私はそうではなかったから。
だから、好きなことをして働くというのは、
どんな感覚なんだろう。
漠然とキラキラしていて、楽しそうだと妄想していた。

そもそも私は、なんでモデルを選んだのか。

モデルになりたいから、会社を辞めたわけでは無い。
どちらかというと、何か悶々としていて、
サラリーマンを辞めたい、違うことに挑戦したい。
辞めるなら何をするか。
それで行き着いた先がモデルだった。

他にもやりたい事はたくさんあって、
その中で、年齢的に、そして私が今、1番やりたい事!それでモデルを選んだ。

夢を作らなければならない、義務教育の風潮で半ば消去法で決めた、青年期の夢たちの中には、無い選択肢だったね。

その夢たちも、これから全部やろうと思っている。

「お父さんの小さい頃の夢って何〜?」
と、子供に聞かれたとする。
「んぁ〜。料理人とか大工さんとか、
 あとモデルだったなぁ」

そう言ったのに、
でも、私の今の職業は、会社員です。
これが嫌だったの、私。
私が消去法で夢を決めていたから、
自分の子供には、ちゃんと、夢見て欲しかった。

夢を追うことを説明できる人になりたかった。

今、夢を追う過程にいる。
「モデルになる!」だけなら、正直もう叶っている。
ファッションショーを歩いたし、海外の仕事も経験できたし。

じゃあなんで、まだ目指し続けているのか。

モデルをしようと目指した時、
必ず終わりのことを考えなきゃいけない。
私の設定は、
「私が満足するまで!!」

今の私、驚くほどに満足していない。
毎日悔しい。

気がつけば、目指していた時と、
今の夢は、モデルという共通点すらあるものの、
形も心構えも、気概も、全然違っている。

目指している中で、夢は、形を変える。


2.好きを仕事に出来る?

具体的にどんな感じに変わったの?
って言われれば、一言こう言う。

「現実を見ました、笑」

漠然とした夢を見ていて、
それが近づいてくると、現実を知る。

その夢は、妄想であり、夢であるのだが、
理想であった場合。
そもそも漠然としているから、
近づいた時、実は違う、なんてのはザラにあると思う。

良くも悪くも。

私はモデルに対しての理想や期待は、
微塵も、と言ったら嘘になるが、
他の人に比べたら、無い方であった。
だから、別に嫌になったり、夢を追うことを止めたりしない。

きっと理想や期待が高い人ほど、落差に落ち込むと思う。
これはモデルという業界に関わらず、全てにおいていえると思っていて、
というのも、夢や理想は、大抵2倍も3倍も良く描かれがち、ということ。

そして私は現実を見た。
だから、今楽しい。
予想の5000倍は難しい業界で、
ほんの一縷の手応えや実感を味わい、
トライエラーを繰り返し、たまに成功を味わう。
それが、楽しい。

昔は、期待や妄想がてんこ盛りで楽しかった。
今は、現実を知り、トライアンドエラーが楽しくなってきた。

夢の形は、
理想や妄想から、目標やスモールゴールになる。

現実を知り、仕事になる。
そう、仕事なんだよ。
ファッション業界という巨大なビジネスの歯車の一つになったわけ。

結局仕事の本質は変わらなくて、
何かの歯車になってしまう。
サラリーマンをやっていて良かったと思うことは今でもたくさんある。
私の人生、無駄なことなかったなぁ。

昔は、
「好きなことを仕事にしたい!」
と思っていた。
今は、
「仕事として、モデルというものに
 興味がある!だから、もっと知りたい!」
に変わった。

あくまで私の考え。
「好きを仕事に出来ることは無い。
 仕事は仕事、趣味とは違う。
 仕事になった時、あまり好きじゃなくなる。」


3.仕事として

最近、少しずつ仕事をして、想うことがある。

夢にレイプするな。

夢の対象になりがちな業界。
だからこそ、仕事として捉えられる人は少ない気がする。
仕事を知らなそうな若い者が、
趣味の延長のようにこの仕事に携わっているのが
なんだかモヤモヤする。

夢見るのは勝手だ。
でも、あなたの理想をそのままこの業界に落とし込まないで欲しい。
あなたは趣味感覚かもしれない。
でも相手はビジネスなんだよ。

東京コレクションにそれなりに出るようになり、
海外でも仕事をしたての私は、
以前よりも、「モデルを目指したい!」
と私に相談してくる人や、話を聞くことが増えた。

ファッションの仕事をやりたい!
そう言う癖に、コレクションの発表形式は
ショーとプレゼンテーションがあることを知らない、
ブランドを知らない、
モデルを知らない。

ある程度仕事をしているモデルも、そう。
気配りが足りない、心配りも足りない。

そんなものばかりを目にしてきた。
そしてそれは、気になってしまったからこそ、
よく目に留まる。

そして、モデル業界に携わってない人たちの、
モデルって、こうだよね。という妄想と、
現実の世界はかなり乖離している。

大前提として、私はこのクリエイティブな仕事が好きだ。
何かの作品の一部になれる。
表現をする。
そんな仕事が好きだ。
そして目に見えて、実力や技術がわかる。
だから、楽しい、好きと言える。

でも、全てを好きになれない。

本当に、心の底から、好きを仕事にしている人っているのだろうか。

私は難しく考えすぎなのだろうか。


4.それでも

それでも私は挑戦を続ける。
まだまだ自分が満足するには、小さじ1程も満足していない。
塩少々くらいは満足している。

ホリエモン、こんなこと言ってました。

「トライアンドエラーが楽しくなるのは
 ある程度仕事を知ってから」

今の私は、トライアンドエラーが楽しくて仕方がない。
負けず嫌いな私は、勝手にライバル意識を持って、
負けたり勝ったりするのが、楽しいし、悔しい。

仕事の結果が満足できなかった時、
それはショーや撮影の途中である程度わかる。
「あぁ、多分この仕事の上がりは、
 最高到達地点では無いな、、、。」

常に最高到達地点の仕事をするように心がけていた私。

ルフィが死線を潜るたびに、進化するように。

でも、成し得なかった時が本当に悔しい。

真剣に、この仕事に向き合っている気がする。

でも私も何を隠そう、
みんなと同じ、理想や妄想の塊でいた。
でもその過程で現実を知り、受け入れてきた。
私という人格を変えずに、モデル業界の中のピースの一つになれるように。

でも、上で挙げた、まだ夢の中の夢を見ている、若者たちも間違いなく、ピースである。
そしてそれがハマる場所も、もちろんある。

だから、悪いとは言っていないし、
消えちまえ、なんてことは思わない。

ただ、仕事のスタンスとして、私と違うというだけ。

夢は形を変えて、現実に落とし込まれ、
夢のような夢から、現実の中の夢に変わっていったのが私。

その中で、まだまだ夢を見て、追いかけたい。
現実の中にも、夢は点在していて、
分からないことばかりだ。

また、あるかどうかも分からない、
あるかもしれない、到達した人にしか分からない景色を観に行きたい、と思う。

まるでラフテルみたいだ。


夢を愛せたら良いのに。

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