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コーヒーも建物も、そしてマスターも

6年越し。

一体これは何かというと、
以前よりずっと行ってみたかったカフェへ、ついに6年越しに訪れたカフェの話。

それは、中心市街地にあって、電車のアクセスがいいとは言えない私の家からは少し行きにくい(と思っていた)ところにあり、車で行こうにも駐車場が無い…

そんなこんなで、行けない理由をつけては私の中では何年も、憧れのカフェになっていた。

ふとある時、なぜだかどうしてもそのカフェへ行っておかなければならない気がした。
それは突然。
営業時間を調べると、水曜と日曜のみ営業。その日はすでに日曜の14時をまわっていた。車で行けば、おそらく30~40分。まだ十分間に合う。

そう思い、すぐさまその足でそのカフェへと車を走らせた。

国道。いつもなら、この途中から奥は未知の世界すぎて行ったことがなくて、少し緊張しながら。でも、ナビのおかげで迷わずに着くことができた。

偶然にも、お店のすぐ横のコインパーキングに停めていたので、お店もすぐに見つけることが出来た。

中に入るや否や、穏やかな空気感に包まれた店内。そして、スマートな店主さん。笑顔が素敵なスタッフの女性。
お客さんで満席なのに、なぜかバタバタした感じがしなくて、席が空くまでベンチに座って待っていた。

その間、お店の雰囲気や、店主さんの方をぼんやりと眺めていた。

オレンジ色のライトが、店内をあたたかく包み込む。

蒸し暑さが漂う外の空気をも、そのやさしいふんわりとした表情で、ゆっくりと私と店内の空気を一つにしてくれるかのような。そんな感覚に。

店主さんは、カウンターが空くと、壁側でお茶をしてる方々にその穏やかな口調で声をかけていく。「カウンターが空きましたけど、いかがですか?」

アイランドキッチンのような、そのカウンターは、このお店に来たならば是が非でも座りたいところ。各々が、カウンターへと流れてゆく。

そのメガネの奥に光る瞳で、お客さんの流れをみつつ、新たに店内に入ってくる方々への声かけ、常連さんと思しき方への接し方、そして肝心のコーヒーも淹れながら。

全てが美しく、無駄がないようでそれでいて余白もどこかきちんとあるような。

そんな感覚がして、しばらく胸が高鳴り、目を閉じながらそこに流れる全ての音に耳を澄ませてみた。なんとも穏やかで、ゆるやかな心地良い響き。

そうこうしているうちに、私も席に通してもらう順番が来た。

初めは、通路の壁側の方へ案内されて、時期にカウンターが空いたということでそちらの方へ移動してゆく。

コーヒーを淹れる店主さんの動き、スタッフの方のニコニコとした可愛らしい笑顔、湯気沸くやかん、そしてそれらを照らすオレンジ色の電球の明かり。

ゆったりゆったり。人々の話し声さえも耳心地がいいのは、なぜなのだろう。そんなことを思いながら、のんびりと、湯気舞い上がるやかんを眺めながらコーヒーを待っていた。

注文したのは、深煎りのコーヒー(名前は忘れてしまった)と、クレームブリュレ。普段、浅煎りコーヒーを飲むと胃が痛くなるので、断然深煎りオンリー。


コーヒーを一口飲んだ瞬間、「あ〜これは私が大好きな味だ」と即感じた。
雑味のない、そして濃くて深みはあるけれども後味はスッキリと。
(コーヒーに関しての知識があるわけではない汗 ただ、自分が好みの味かどうかだけはしっかり分かる。)


この辺りで飲んできたコーヒーの中で一番美味しい。
(コーヒーは好みがはっきり分かれる気がする。人それぞれ口に合うコーヒーは違うので、私個人的にはここが一番好きな味だと感じた。)

そして、コーヒーの味に負けず劣らず、このクレームブリュレがなんとも絶品だった。口に入れた瞬間、「なんだこの美味さは!!!!!」と驚愕。

頭を撃ち抜かれたかのような、衝撃のおいしさに、食べ途中にも関わらず思わず写真を撮ってしまうほど。洋酒が程よく効いた、絶妙なバランスの味。

甘すぎるスイーツは苦手で、コンビニのスイーツは一口で充分と思う私。
でもそのクレームブリュレは、甘いことは甘いのだが、一口そしてまた一口と、噛み締めながら口に運んでいた。

なんとも至福の時間。本を読みながら、ゆっくりもしたかったのだが、まだ待っていらっしゃるお客さんも。
しばらくぼんやりしたのち、その日はお店を後にした。

後日、再びそのお店のHPを覗いた時、
なんとその建物は、1960年に、アントニン・レーモンド建築設計事務所によって建てられたものだと!!?
(え!!!建築家Antonin Raymond!!!なんて光栄な!)

もうこれは、私一推しのカフェになること間違いない。

コーヒーも建物も、そしてマスターもお客さんも。
すべてがひとつとなった、とても緩やかな穏やかなあの時の情景を再び思い出していた。
またきっと近いうちに。


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