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移民に優しくないイギリス、優しいドイツ。複雑な日本

夫は5年間イギリスの会社で無期限契約で働き、ヨーロッパ人の同僚に教える立場にいたのに、イギリスの滞在許可を5年までしか延長できず、2019年6月末に滞在許可が切れた。(違うタイプのビザを初めから取得できていたら永住権を申請できたのだけれど、そのタイプのビザの取得は難しく、やや取得しやすいビザで入国してしまったのが間違い)

私は、2017年9月にイギリスに移ったのだけれど、2018年9月にイギリスのトップ大学で修士号を取得して、それ以降4ヶ月しか滞在する許可を得られなかった。(アメリカやカナダ、オランダでも、高等教育機関終了後、1年以上は滞在し就労できる権利を得られる、イギリスでも近々卒業後は1年ほど滞在できるように制度改革があるらしい) そもそも初めから配偶者ビザを取得すれば良かったのだけれど、夫のビザは延長できないというのが分かっていたので、わざわざ高価な配偶者ビザを取得するのが馬鹿らしく、比較的安価な学生ビザを取得した。だから、滞在許可が夫より短かった。

そんな訳で、2019年6月末に夫のビザが切れた後は、どこかに移らなくてはいけないと初めから分かっていた。だから、イギリスに移ってからも、私たちは次の行き先をずっと探していた。

英国前首相のテレサ・メイが内務省のトップにいた2012年にNon-EUからの外国人の滞在許可に関する大改革が行われ、外国人の長期滞在が難しくなっていた。テレサ・メイは知的労働者はイギリスに歓迎すると言っていたけれど、移民嫌いで有名だった。

イギリスはビザの取得が難しく、ビザ取得費用も高い。要は、高いお金を払ってでもイギリスに滞在し、高額な収入を得てたくさん税金を納める、もしくは投資をして経済を活性化してくれるような外国人を優先的に受け入れるように出来ている。外国人に社会保障費用を使いたくないという姿勢がよく表れている。 イギリスの空港で、日本人でも不法就労を疑われて日本に強制送還されたと言う話は枚挙にいとまがなく、そんな例は周囲からも聞こえて来た。結果的に知的労働者さえも追い出す仕組みになっているイギリスのビザの仕組み。外国人である私たちは絶対的な法の前になすすべもなかった。

とはいえ、今年初めのバタバタを経て、うちの夫が今の会社にサポートしてもらえることとなったので、結局我が家はなんとか欧州に残ることにした。ただ、会社を通じて移民法弁護士に相談しても、最低1年他の国に滞在しなければ、イギリスでの滞在許可は降りないとのことで、急きょ転籍が比較的容易だったドイツのオフィスに移ることとなった。

Brexitで先行き不透明なイギリスから、移民に寛容なドイツに移ることができ、私たちは非常に幸運だったと思う。2015年に難民を積極的に受け入れる政策を取ったドイツは民主主義を大事にしている成熟した国だと認識していたし、そんなドイツに住むことができると言うのには期待が大きかった。

そして、実際私が現在ドイツで通っている、ドイツ語のコースには難民もいる。トルコから来たと言う1人のクラスメイトから話を聞くと、彼は元々大学で教えていたのだけれど、強権的なエルドアン政権により、大学教員と言うだけで1年間収監されたそうだ。家族も迫害され、1年前に家族みんなでドイツに逃げて来たらしい。その話を聞いて、そんな行き場のない人たちに行き場が提供されていることに安堵の気持ちを覚えた。(イギリスも難民を受け入れてはいるものの、それほど積極的ではない)

一方、私のクラスメートの中には、ドイツの失業手当を受け取っている人も少なくない。2−3年ドイツで働いて、今は失業手当をもらいドイツ語を学んでいると言うクラスメイトもいる。ドイツの社会保障の仕組みはまだ理解できていないのだけれど、最近来たばかりでそれを受給している人もいて、相当寛容な制度であることが想像できる。外国人に支払っている社会保障の金額が莫大なものであると言うことは想像に難くない。(実際私もドイツ語を学ぶ分の一部金額を払ってもらっている)

メディアを見ていると、ドイツのドイツはここ数年で難民を積極的に受け入れたけれど、(将来不足する労働力不足を補うことを期待していた、と言われていたけれど、その中の知的労働者はごく一部で)かなりの割合が失業手当、生活保護の受給者になっているらしい。失業保険の全体受給者の10%以上がシリア出身者であるとか。本来認められないはずの経済難民も特に退去させられたりはしておらず、EU圏内からも次々と移民が集まってくる。急速に非ドイツ語話者が増えた結果、各地の学校や病院などが対応が出来なくなってきている(元々多かったトルコ系はドイツ語を話すことに問題はなかった)さらにかつてケルンで女性が難民によって暴行されたというのが大きく報道されていたけれど、一部地域では難民受け入れ以降治安が悪くなったという情報も伝わってくる。

2015年にドイツが難民を大量に受け入れたのは、キリスト教的な倫理観、ナチズムの絶対的な否定から来る人権観からあるだと思うけれど(メルケル率いるCDUはキリスト教政党として、入ろうとする難民を止めることはできなかった、というコメントを読んだ)、それ以降ドイツの政治は不安定化してきている。 (何か論拠をもっているわけではないけれど)当然ポジティブな面もたくさんあったのだろうけれど、いくら大国ドイツでも、この社会保障費が突然各地で増大した状態が拡大していったら流石に持たないのではないか、と直感的に感じる。私の周囲には難民受け入れをするドイツという国を誇りに感じているドイツ人もいるし、評価すべきところはたくさんあるのだろうけれど、いくら前向きに取り組んでも、非常に多数の移民を受け入れていることで、財政も社会の負担も増加していく。(そして現状の移民受け入れ政策が、現状に対して充分に練られたものではないと思われる)

ドイツでは極右政党のAfDが特に旧東独地域で躍進していて、最近の東部2州の州選挙でも大躍進して第2党となった。増え続ける外国人が脅威になって来ているという一面は否定できないのだろう。

こういうドイツの状況を覗いていると、外国人への脅威、生活への不満が政治家に利用されてBrexit賛成への道につながってしまったイギリスの状況が少しずつ想像できてくる。(ドイツもイギリスもEU内の経済大国で、南欧や東欧からどんどん人が働きにやって来る移民受け入れ大国である) イギリスにいた時は、外国人に冷たいイギリスは冷酷な国だと感じていたし、EUから脱退したいなんて愚かだと思っていた。でも、それまでの社会にはいなかった外国人が急速に増えたことで社会が変容していたこと、それに伴って特に公的サービスなど社会のあちこちでひずみが起きていったこと(それを補う仕組みがあればまだ何とかなる)、それによって自らの生活が脅かされる、国が倒れるという強い恐怖感を覚えたというのは理解できる。もしくは自分の生活がうまくいかないことに対して、その責任を誰かになすりつけたくなるというのも理解できる。 EU脱退はイギリスの問題の解決にならないと思うけれど、そういう恐怖感を抱えた人は、その責任をどこかになすりつけたかったのだと思う。それが移民のせいになってしまった。(ドイツの難民の大量受け入れがBrexitをバックアップしたという見方もある)

ドイツでも移民受け入れによる社会の不安が増大していっている今、今後ますます不安定になるのではないかと想像する日々である。私たちの暮らしも先はどうなるのか。

難民を受け入れない日本政府はダメだ、移民政策に慎重で移民の統合に全く対応できていない日本政府はダメだ、とか、いくらでも言いようはあるし、今まで実際私も色々言いたいことを言ってきた。 でも、イギリスとドイツの状況を傍目から見ていて、そんなに簡単に言えることではないのだと最近よく思う。(でも日本の入国管理局による、収容者に対する非人道的な扱いは絶対に許せない)

世界と協調しながらうまくやる方法は一体どこにあるのだろうか。少しずつ作っていくしかないのだろうと思う。

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A

2017年9月から1年半ほどイギリスに在住、2019年7月からドイツの人口15万人の小都市に住んでいます。 これまで長期滞在した国はミャンマー、ベトナム、オランダ、アメリカ。(母国日本を入れて)ドイツは7ケ国目。 開発援助の仕事や教育企業、コンサルティング会社などで働きました
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