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コロナと欧州の夏

現在、欧州には一週間ほど熱波がやってきて、30度超えの日々が続いている。湿度が低いので東京の夏ほど息苦しくもなく、木陰に入れば涼しいし、朝晩も涼しいのに救われているが、35度を超えると流石にエアコンのない状態で乗り切るのはなかなか苦しい。

元々欧州の夏は比較的涼しく、南欧を除いて30度を超えることは珍しく、みんなが短い夏を心待ちにしているものだった。建物も寒い冬用に建てられているので、それほど風通しも良くなく、冷房が整備されている施設はあまりない。しかしながら、ここ3年くらいで急に気候が変わり、熱波が来るとすぐに35度に達するようになった。熱波が来るとエアコンという逃げ場がないのでただ苦しい。暑い日の夕方には、夏の東京のような夕立が来ることもある。


そんな欧州の夏では、バカンスが一大イベントになっていて、多くの人が2~3週間くらいの長い休みを取って、あちこちに人々が出かける。(休暇取得はほぼ義務になっており、持ち越しもあまりできないことが多い) 今年はコロナウィルスの影響で、長い休みを取っても家に留まったり、それほど遠くない地域に短期間行くという人が少なくなかったようだ。自然の綺麗な山や川沿いなどのバケーションハウスは、今年は早い段階で予約が殺到していたらしい。うちの州の空港の利用者が昨年比で9割くらい減少したというニュースも目にした。EU外からの観光客はいないし、ビジネス出張もないし、ドイツから飛行機に乗って海外に渡航する人も激減したということだろう。車で旅行している人も多いだろうし、キャンピングカー、自転車の旅に出る人が急増したという話もよく聞く。

日本ではGo toキャンペーンが大批判に晒され、特に医療体制が脆弱な地方は大変な状況そうだけど、観光依存が大きい欧州では人の動きを止めることはなく、感染予防をしながら夏を楽しもうというところだ。スペイン等の一部地域を除き、特にセーブがかかることはない。 相変わらず店舗や病院等屋内ではマスク着用、他者との距離を1.5m以上空けること、飲食店では殆どの客が屋外に座り連絡先を全て残すことが義務付けられている。これらは当然のように守られていて、違反している人は見たことがないが。


一方、人があちこちを旅し、コロナの新規患者数は増加の一途をたどり、すでに1週間ほど以上新規感染者が1000人を超えている。今月から高リスク地域からの帰国者に対するコロナウィルスへの感染を確認する検査は必須になり、私の住む人口最大のノルドラインウェストファーレン州は500人近く毎日感染者が見つかっていることからか、公共交通機関におけるマスク着用義務に違反すると、150ユーロの罰金支払いが法制化された。また、屋外のマスク着用は求められていないが、他者との距離が十分開けられない場合はマスクをつけることが推奨されている。

感染者が大幅に増えているのは欧州全体に見られることで、各地で警戒が高まっている。人が動けば感染は広まるだろうけれど、これ以上人の生活や経済活動に制限をかけることもできないというジレンマ。 そもそも政府が一方的に市民の動きを止めることは許されるのか、という議論が大きくなっているように思う。

我が家は元々8月末以降(他の旅行者が減った頃)にドイツ国内を電車で旅する予定であるが、この感染者増加を受け、2週間後に無事に旅行に出られるのかは確信がなく、ただ状況が落ち着くことを願うばかりである。

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先日、暑い週末に途中の川沿いに街に行ったのだが、川沿いのキャンプ場を通りかかったら、多くのキャンピングカーが止まっていて、キャンプをしている家族がたくさんおり、川で泳ぐ人々もちらほら見えた。それが昔ながらの夏休みの過ごし方なのだろうと思った。

格安フライトが広まってから、多くの人が海外旅行をするようになり、観光地に人が溢れ、オーバーツーリズムが問題になっていた。昔は自然の中でリラックスというのが、長い欧州の夏のバカンスで、コロナの影響で昔ながらの過ごし方が復活してきているのだろう。


なお、今週からうちの州では学校の新学期がスタートしたが、(元々は夏が短かったので、夏休みは6月末から6週間ほど)最近の感染者増加を受け、今月末まで中高生、教員は全員授業中もマスクをつける…というルールが作られ、最近は大論争になっていた。(守らないと厳しい罰則あり)  マスクをしながら授業というのは、生徒の集中力等を削ぎ、不適切だという反論が多かったものの、例外のケースがたくさん設けられただけで、決行されたようだ。(当然体育の授業は免除、教室の温度が27度の場合はマスクをしなくていいなど)

今住んでいる部屋の家主が高校教師をしているので「マスク着用で熱中症に気をつけて!」と伝えたところ、学校の建物が非常に古い歴史的な建築で、石の壁が厚いので中は涼しいから大丈夫だという返事が返ってきた。…やはり湿度が低い欧州の夏は、暑くてもなんだかんだ助かる。

日本の皆さんも酷暑の中、マスクをしなくてはいけなくて非常に苦しくて大変だろうが、熱中症に気をつけて健康に過ごしてほしい。

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