プレゼント

身だしなみという魔法

身だしなみに気を使うと、なんだか心がウキウキしてくる。

久しぶりに、買い物をした。というのも、冬服をほとんど持っていなかった。去年、世界一周中はうまいこと夏の国ばかりを渡り歩いていた。だからほとんど夏服しか必要ないうえに、貧乏バックパッカーにおしゃれは必要なかった。

「どうせ使わないだろう」そう思って、世界一周に旅立つ前に、服はほとんど処分した。バックパッカーらしい装備と、どうしても処分できない、売れないお気に入りの服だけを残していた。そうすると、なぜか冬服はほとんど残らなかった。

そうやって旅を終えたけれど、帰国したのは去年の4月。ちょうど暖かくなりはじめる頃だった。長袖1枚で十分、そんなポカポカ陽気の時期に帰ってきて、アウターは必要なかった。そうして、気がついたら日本は暑くなっていた。

そしてさらに、去年は10月後半からフィリピン・セブ島に1ヶ月留学していた。そのあと1ヶ月日本に帰ってきたけれど、また1ヶ月タイに行っていた。異国の季節は夏、コートなんて邪魔だった。

けれど、日本に帰ってきた。そしたら雪なんかがちらついていて、大寒波がやってきていた。持っているのはデニムジャケットと、ショート丈のニットカーディガン。無理だ、冬を乗り切れないと思った。

そうして、冬を乗り切るために買い物に出かけたけれど、思いがけずたくさん買った。にも関わらず、気分はほくほくしていた。おしゃれできることが嬉しかった。

もともと、服が大好きだった。アパレル販売員もしていたので、見るのも売るのも大好きで、ほとんどを服に囲まれて生活していた。

けれど、とあるきっかけで去年あたりから、服装が変わった。もう25歳ということもあって、それまでの古着系の服装から、シンプル一直線に変わった。そういう年齢なのだろうか。けれど、いまの服装の方が好きだった。服装というか、このシンプルOL風装備をしている自分が好きだった。

いままで好きになれなかった自分が、すこしだけ好きになった。明るかった髪色も、自信が出てきたとともに落ち着いた。

服を買いに行く前、ネイルも変えていた。男の人は、カラフルなネイルの指よりもきちんと手入れの行き届いた色のついていない指の方が好き、だなんて噂を聞くけれど、ネイルはきっと、自分のためにするものだ。だって、きれいな指先が目に入るたびに、ウキウキしていた。何回も、眺めていた。いままでとちがう、落ち着いた色味なのに。

見た目がきれいになって、なんだか心まできれいになったみたいだった。それまで、自分の好きな服装を貫く方がいいと思っていたけれど、そうじゃなくてもいい、と思えた。シンプルな服装のいまの方が、人とのコミュニケーションもスムーズだ。

身だしなみは、魔法みたいだった。ネイルや服という呪文が、心持ちをあっさりと変えて、自信をくれた。

しばらくは、この魔法が解けないでほしい。


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