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サービスデザインの本質

[1] 石田 亨 (編集), デザイン学概論 (京都大学デザインスクールテキストシリーズ), PART3-CHAPTER7 サービスデザイン, 共立出版, 2016.
[2] 山内 裕 (著),「闘争」としてのサービス -顧客インタラクションの研究, 中央経済社, 2015.

この記事は私がサービスデザインについて考えたことの覚え書きです。
ちなみに、[2]の参考図書は超エキサイティングな本なのでオススメです。

サービスデザインとは:
サービスをデザインする手法や考え方。

サービスデザインの本質:
●サービスデザインとは共創である。
D.A.ノーマンの提唱した人間中心設計だけでは解決できない。複数のユーザが関わった人間中心設計においては、複数の人間の主観が関わってくる。つまり相互主観性を考慮しなければならない。であるから、人間中心設計でうまくいくパターン「利用者にとってのわかりやすさ」「ストレスのなさ」「利用者が主役となっていること」/「失敗を防ぐこと」「人々が使いこなせること」がに当てはまらない場合がある。

共創なサービスデザインの例:
●高級なレストランでは笑顔もなく、分かりにくいメニュー(理解不能なフランス語が説明もなく載せられている)しかなく、「おいしい」など月並みな言葉で賞味するだけでは済まされない:つまり顧客の実力が試されている、サービスにふさわしい客であるかが試されている
●高級な鮨屋ではメニューがなく、丁寧な説明もない、親方の前で緊張しながら食べなければならない(人間中心設計とは正反対である…!):メニュー表がなくても、客はその季節の旬の魚を正しく伝えられるべきと主張している。顧客はそのように演じなければならない。そして背伸びをした自分を楽しんだりする。
●高級なフランス料理店では、よくわからないワインリストを渡され、不安げにワインを選ばなければならない。料理の食べ方や作法を知らない不安もある。
●カジュアルなイタリア料理店で、「ピッツァ・メランザーネ」とかいう殆どの客が理解できないような名前をつける。:提供者は自らのサービスを客が知っている日常を越えたものとして定義している。客はそのような非日常の世界を多少の違和感を感じながら、そこで背伸びをして適切に振る舞おうとする。
●スターバックスコーヒーで、コーヒーのサイズを「トール」「グランデ」「ヴェンティ」という英語ですらないような名前がつけられており、戸惑う。(ある意味 客の否定)
●この本には書かれていなかったが、ラーメン二郎のエクスペリエンスも共創的サービスになるのだと思う。

一方、客にとって全く理解できない、ストレスだけのサービスは意味がない。当たり前だけど。

サービスデザインのツールの例:
●カスタマージャーニーマップ(説明略)
●デザイン会社IDEOのThe Ritz Carltonホテルでのサービスデザイン。従業員に実現させたいサービスのシーンをScenographyという本にまとめて共有した。チェックリスト形式のものにすると、画一的な業務になってしまい、無味乾燥なサービスになってしまいがちであるため。

メモ:
サービスデザインにおいては世界観の設計をするのが上手くいくコツなのではないか。


一方、このような本もある。
[3] 山岡 俊樹 (著), サービスデザイン: フレームワークと事例で学ぶサービス構築, 共立出版, 2016.

この本は人間工学の視点から書かれており、サービスデザインも人間工学の視点から評価したものになっている。例えば、簡易評価項目として以下のような5段階評価チェックリストが載せられていたが、これではすべてのサービスを評価できない。(これでは高級鮨屋のサービスは最悪なものになってしまいそうだ。質的な要素の分析にはなるかもしれないが。)p.127より
・ 顧客が不安を抱かないよう、配慮されていたか
・サービス提供者にスキルや知識はあったか
・提供者の態度はよかったか
・メインサービスはよかったか
・サービスは効率良く行われたか
・環境は良かったか
・機械(設備)は良かったか
5段階評価:[良い、やや良い、どちらでもない、やや悪い、悪い]

以上。

2019-02-28


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