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『学生を自己調整学習者に育てる』

L.B.ニルソン (著, 編集), 美馬 のゆり (監修, 翻訳), 伊藤 崇達 (監修, 翻訳), 深谷 達史 (翻訳), 岡田 涼 (翻訳), 梅本 貴豊 (翻訳), 渡辺 雄貴 (翻訳), 市川 尚 (翻訳), 畑野 快 (翻訳), 学生を自己調整学習者に育てる:アクティブラー二ングのその先へ, 北大路書房, 2017.

この本について:
近年注目されてきている自己調整学習に関する本である。自己調整学習について注目され始めたのは1984年にビル・ローワーが『Educational Psychologist』に書いてからである。(子どもの自己統制(self-control)が同発達するのかを研究した社会認知心理学者は、そのさらに昔、1960年代はじめに自己調整に関する初期の研究を行っている。)

読んだきっかけ:
私が開発した「学びの経験マップ(Experience Map of Learning)」はまさに学習者自身が教員や学習内容にアプローチすることを可能にするツールである。ユーザーセンタードデザインならぬ、学習者センタードデザインと呼び、これはいいぞ!と思っていたらすでにここに着目している人たちがいて、自己調整学習と呼ぶらしいと知った。それで調べなければと思った。
この本は、自己調整学習を知るために何度か読んだけれど、読んでいくうちに私が大学で担当している科目を、ここをこう直したほうがいい、学生にこう語りかける仕組みにする必要がある、など気を取られてしまう。なので読むのにとても時間がかかってしまった。(およそ半年…;;)

自己調整学習とはなにか:
自己調整学習(self-regulation learning)。学ぶために必要となるスキルをもって自ら学習に挑むことである。学ぶためには、「学習方法」「課題や指示をちゃんと認識すること」「自分自身について知っておくこと、それをうまく扱うこと(努力の仕方)」が大事である。

自己調整学習とはなにか2:
別の言葉で表現すると、自己調整学習とは、脳の複数の領域がかかわる総合的な活動である。十分な注意と集中、自己意識と内省、率直な自己評価、変化への開放性、真の自己規律、自己の学習への責任を受け入れること、すべてが含まれる。知能に関係なく、誰でも取得可能なスキルである。(p.4)
そのほか、学業達成に重要なものとして、満足を遅延する力があげられる。自己効力信念と自信、内発的動機づけ、課題価値、(遂行目標でなく)習熟ないし学習目標志向性、援助要請、認知的な学習方略(リハーサル、精緻化、体制化、メタ認知)の使用、学習関連行動と環境の調整など、多くの要因と密接に関連する。

自己調整学習の必要性:
社会で経済的に生き残るためには自己調整学習が必要である。ひとつの仕事がなくなっても新しい職業に適応していくためには生涯学習者(life long learners)の育成が必要である。そこで永続的に学び続けるためには自己調整学習が欠かせない。

自己調整学習発展の歴史:
アルバート・バンデューラの自己効力感の理論(self-efficacy)
 ↓統合
ジューマンの社会的認知理論(social cognition theory)
・スクロー
・ブランスフォードら
・ジマーマン…
 ↓
グロスマン:初心者と熟達者

アルバート・バンデューラの自己効力感の理論:
自己調整力をもつ子
 ↓
多くを学習できる
 ↓
自己効力感の向上
:①自分を知る、②目標を自己評価する、③自分で評価にリアクションする

自己調整学習の利点:
訓練をすれば、次の3つが驚くべき成長を遂げる。
・教科内容
・問題解決
・ライティングスキル
内省は経験したことの学習価値や感情への影響について考えさせ、確か肉奥に止めさせる効果がある。

この本の後半:
どのように実際の科目に自己調整学習の仕組みを組み込むのかの、具体的な方法が書かれている。


2019/03/11

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